タグ:家族喰い-尼崎連続変死事件の真相 ( 1 ) タグの人気記事

『家族喰い-尼崎連続変死事件の真相』を読んだ

家族喰い――尼崎連続変死事件の真相

小野一光/太田出版

undefined

戦地から風俗嬢まで幅広い分野のルポルタージュを上梓しているルポライター、小野一光氏による尼崎で起こった不可解な事件に関する渾身のルポルタージュ。

このテの事件の先例としては、北九州の一家監禁殺人事件が挙げられますが、小野氏はこの事件の主犯とされる人物にも直接逢って話を聞いています。今回のこの事件に関しては、主犯とされる角田美代子の行きつけの店などを粘り強く探し出して、「角田ファミリー」をよく知る人々を追い求め、時には事件の当事者から、時には近所の人々からじっくりとファミリーの姿を聞き出し、日々流される、新鮮ではあっても底の浅い情報とは一線を画した、深く濃い実像を描き出しています。

この手法は遠い大学時代に聞きかじったニュージャーナリズムの手法そのもの。書き手は即時性には目をつぶり、じっくりと時間をかけて事件の真相を深い部分まで探り出していきます。そして角田美代子とそのファミリーとされる人物たちの実像をリアルに描き出すことに成功しています。

それにしても何故角田美代子のような人物に魅入られ、いいようにクイモノにされる人物が存在するのでしょうか?小野氏は、角田の洞察力の鋭さとマインドコントロールの方法、警察への対処の仕方などを次々と暴いていきます。

彼女はまず、自分がクイモノにできそうな弱い一家を見つけることが天才的に上手い。そして目をつけられたが最後、その家族は住居に居座られるわ、家族同士が互いに暴行虐待をさせられるわ、ろくに睡眠も取らせずに延々と家族会議をさせられて、何を答えても編成と称して虐待されるわで、どんどん弱っていきます。そして、その家の資産という資産をすべて食いつぶすと、今度はその成員たちを次々と殺してしまうのです。そして新たな寄生先を探すという訳です。聞いているだけで身の毛もよだつような恐怖ですね。

身も心もズダボロにされてから殺される訳ですから、それこそ「死んだ方がマシ」という気分のママで死んでいくことになるのです。哀れという以外に言葉が浮かばない死に様ですね。

自分自身が手を下さずに、周りの人間を「実行犯」に仕立て上げることの上手い人物というのは確かに存在します。私の場合は小学生時代にそういう人物にぶち当たってしまいました。そいつは、成績が良かったために、教師を味方に付けることにいち早く成功しました。ケンカにでもなれば、どちらが発端なのかはまず問題にされず、教師はほぼすべてそいつの肩を持つ方に回りました。そしてそうした教師の姿勢はいつの間にか、そいつに逆らってはいけない、という空気を醸成してしまったのです。で、仮に逆らってしまえば、集団すべての人間からいじめの対象にされる。しかし当の本人は全く自分では手を下さないので、仮にいじめの現場を教師に見つかっても、怒られるのは実行犯だけ。そいつはいつも教師の後ろでニヤケヅラしてました。

角田の場合は、背後に反社会的勢力の皆様がいることをにおわせた上で、最初の方では子飼のガタイのいい男に暴力をふるわせ、獲物の心に恐怖と絶望感を植え付けます。そして絶望感の中で、今度は家族同士が角田に命じられるままお互いに暴力をふるいあうのです。この世の地獄とはこのことではないでしょうか。

こういう人物は本当にどこにでも存在します。魅入られないようにするためには人を見る目というものを培っていくしかありません。魅入られたが最後、行きつくところまで行きついてしまうでしょうから。


[PR]
by lemgmnsc-bara | 2017-01-28 19:05 | 読んだ本 | Comments(0)

なんだかんだで読んだ本のことばっかり書いてます。たまに映画、時々食い物とドライブとラグビー観戦。


by 黄昏ラガーマン
プロフィールを見る
画像一覧