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清原和博への告白 甲子園13本塁打の真実 (文春e-book)

鈴木忠平/文藝春秋

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覚せい剤使用で、自らの栄光の日々に泥を塗ってしまったのが清原和博氏。彼が一番輝いていたのは、高校時代の甲子園。こちらももはや昔日の輝きを失った(輝きも何も、野球部そのものがなくなっちゃいましたね…)高校野球の名門PL学園で1年生から4番に据わり快打を連発していた頃です。

彼が在学中の甲子園は5度。そのすべてに出場し、うち二回は全国優勝を遂げました。彼個人としては13本のホームラン(これは現在に至るまで高校球児が甲子園ではなったホームランの最多記録であり続けています)を放ち、「天才」、「怪物」の名をほしいままにしていましたね。

標題の書は、清原氏にホームランを打たれた人の投手たちの「それまで」と「それから」を描いたルポルタージュ集です。これに記事が掲載されたらまずメシの食いっぱぐれは無いといわれている一流スポーツ雑誌「Number」に連載されたものを集めて編んだ一冊です。

清原選手に本塁打を打たれた投手は9人。9人の高校球児がいれば9通りの野球人生があります。彼らがどんな思いで日々を過ごし、甲子園を勝ち取ったのか?そして彼らの球をスタンドに放り込んだ清原選手はどんな存在だったのか?これを、清原氏の視点を一切交えることなく、すべて彼と相対した人物の視点で描き、清原氏の怪物ぶりを際立たせています。見事な構成です。のちにプロで対決することとなる投手もいれば、彼に打たれたホームランによって、その後の人生ががらりと変わってしまった投手たちの姿も描かれます。あの時の清原氏は一人の選手というよりも、高校野球界をゆるがした一つのムーブメントそのものであったと言えますね。実に大きな存在でした。

時たま間に挟まれていた高校時代の清原氏の初々しいこと。金髪にピアス、刺青に過剰なほどのマッチョ体型(その後ブックブクのおデブちゃんに変わっちゃいましたが…)という後年の姿からは想像もつかないような、ひたむきな野球少年の姿がそこにはありました。こんな野球少年がどうして薬物に手を出すような不良中年になってしまったのか…?やっぱりそこには桑田単独指名という驚愕の結果となった、ドラフト会議の影響を挙げざるを得ません。あそこで本人の希望通りに巨人に入っていたら…というifをどうしても考えてしまいます。後年、功なり名を遂げてFAで巨人入りしますが、チャンスに打てないでブーイングを浴びていたというイメージしかありません。巨人での最晩年は「番長」などと呼ばれて一部のマスコミに祭り上げられていましたが、トラブルメーカーでしかなかったような気がします。そこでのストレスが彼に覚せい剤という魔のクスリを選ばせてしまったのでしょう。過去が輝かしければ輝かしいほど、自分の現状が惨めに思えたのではないでしょうか。

今の清原氏は落ちるところまで落ちたという感があります。しっかりと更生して何らかの形で野球に携われる日がくるといいですね。





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by lemgmnsc-bara | 2017-08-06 19:00 | 読んだ本 | Comments(0)

暗黒の巨人軍論 (角川新書)

野村 克也/KADOKAWA / 角川書店

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巨人を倒すことに生涯をささげてきたといってよい野村克也氏による現在の巨人軍の問題点を指摘した書。

野球というスポーツは、1球1球プレーが切れ、インターバルがあるという珍しいスポーツです。野村氏によれば、この「間」の活用方法こそが勝負を分ける重要なポイントであるとのこと。点差、イニング、アウトカウント、相手投手との相性、走者の有無などの属性により、その場面場面での最良の結果を見極め、その結果をもたらすよう努力するのと同時に、最悪の結果も考えて、そこから少しでも遠ざかるようなプレーをしようと試みる。たとえば、無死一塁二塁で点差が1点ビハインド自分が右打者で相手投手も右、なんてな場面を想像してみてください。最良の結果はホームランで3点取ることではありますが、ホームランが出る確率は非常に低いし、下手に打って出たら内野ゴロでダブルプレーを取られて一気に二死(すなわち最悪の結果)なんて事態にもなりかねない。そこで、チャンスを広げるために送りバントを選択するが、その際には、二塁ランナーが三塁で封殺されないよう、捕球から送球までに時間がかかる三塁側にボールを転がすことを心がける、などというのが「考えた」プレーです。こうした場面場面での最良選択プレーは長い歴史を経るうちに「セオリー」として定着しています。またこのセオリーがあるからこそ、その裏をかく策だって出てくるわけです。そこで、いろんな選択肢を考え、実行するために練習を重ねる、というのが強化における「セオリー」となります。

俗に「アンチは裏返ったファン心理だ」などという言葉がありますが、野村氏は実はかなりの巨人ファンです。有力な選手が続々と集まる巨人には鼻も引っ掛けられなかったという悔しさが打倒巨人への強いモチベーションとなったのですが、野村氏が打倒したかったのはV9を達成した当時の巨人であり、現在の巨人はまったく怖くないとも述べています。V9時代の巨人はONという打線の軸と強力な投手陣を擁した上に、なおかつ各人が自分の果たすべき役割を熟知し、その役割を果たすための練習をきちんとしていたそうです。中心選手であるONも圧倒的な練習量でチーム全体を引っ張った。試合でのプレーだけでなく、日常生活においても他の選手の手本となるよう心がけていたというわけです。こうしたチームが空前絶後のV9を達成したのは至極当然で、現在のチームもこの時代のチームを手本とすべきだとも説いています。

なぜ、こんなことを野村氏が一冊の本にして上梓したのか?それは現在の巨人軍に考えるということがまったく根付いていないからです。冒頭にいくつかのミスが挙げられていますが、なるほどプロとしては恥ずかしいレベルのプレーばかりです。野球というスポーツへの理解も足りないし、理解するための研鑽も積んでいない。反射神経と筋肉だけでただ目の前の事象にのみ対応しているだけ。だから体力が衰えると高いパフォーマンスがみせられなくなる。仕方がないから他球団で実績を挙げた選手をFAで引っこ抜く。かくして素質のある選手が育たずに、功成り名を遂げた選手ばかりを巨人が引っかき集める、という今の図式が出来上がり、しらけたファンがどんどん離れていくという事態を招いたというわけです。

まったくもってその通り。自前の選手を育てて優勝した広島や日ハムに倣うかと思いきや、またぞろ欲しい欲しい病発動で有力な選手を3人FAでかき集めるわ、未完の大器大田を放出するわ、外国人も欲しいだけ取るわで、まったく反省がありません。盟主がこれでは、日本野球はアメリカに追いつくどころか完全ファーム化への道一直線です。なんとかして欲しいもんですが、今の最高権力者がどうにかならない限りはどうしようもないんでしょうね。テレビのゴールデンタイムにプロ野球中継が復活する日は来るんでしょうか?望み薄ですね…。

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by lemgmnsc-bara | 2017-02-23 05:56 | 読んだ本 | Comments(0)

阪神タイガース「黒歴史」 (講談社+α新書)

平井 隆司/講談社

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ベテランの虎番記者平井隆司氏による題名通りの黒歴史書。阪神タイガースに起こった、様々なトラブルを紹介しその背景にアプローチすることで、この球団が持つ不思議な「人気」に迫っています。

ライバル巨人には戦績で大きく水をあけられていながら、何故タイガースは愛されるのか?ごく荒っぽく一言で言ってしまえばタイガースは「関西人のおもちゃ」なんです。

日本の中心を東京なんていう「辺境の地」に持っていかれてしまった、かつての都の所在地、京阪神に住まう人々にとっては、タイガースは東京偏重に対するアンチテーゼの象徴的存在です。特に「東京」の名を冠した巨人をタイガースがやっつけることで溜飲を下げている関西人は多いはずです。(ヤクルトだって東京ってついてるぞ、というツッコミもあろうと思いますが、ヤクルトが東京をその名に戴いたのはつい最近のこと。プロ野球の草創期からあり続ける巨人こそが「東京の象徴」なのだ、と返しておきたいと思います 笑)そしてこのことこそがタイガースのアイデンティティーであるはずです。

しかし、このアイデンティティーを自ら否定してしまうのもまたタイガース。「最後の最後まで競って、負けるのが一番。客は入るし、選手の給料は上げずに済む」という主旨の発言をしたフロントのお偉いさんがいたそうです。「アホか?何いうとんねん!!」と関西人が総突っ込みを入れたであろうことは容易に想像がつきます。そしてこの「経営方針」はやがて、さまざまな事件を生み出す元凶となるのです。

強化にカネを使いたい指揮官と、カネを出したくない経営者。この対立構造に様々な人間関係が絡み合って、お家騒動が年中行事。野次馬根性が旺盛な関西人の皆様を刺激する機能をとことんまで突き詰めて持っているのがタイガースなのです。

ファンは勝てば喝采、負けても酒のサカナとして十分楽しめるという訳です。川藤幸三選手などはまさにこの体質を体現した選手であり、実績は大したことなくても愛される原因はここにあります。実に合理的な娯楽ですね。

巨人ファンの私としては、文字通り対岸の火事で、無責任に眺めているだけです。しかしタイガースが強い時はセリーグ全体が盛り上がり、関西の経済までが活性化するというのは事実です。ゴタゴタは起こさずに強力なライバルとして純粋に野球で競って欲しいですね。



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by lemgmnsc-bara | 2016-03-13 06:54 | 読んだ本 | Comments(0)

間違いだらけのセ・リーグ野球 (廣済堂新書)

小関 順二/廣済堂出版

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ドラフト会議に造詣の深い小関順二氏による、プロ野球解説本。題名の通り、日本シリーズ、交流戦ともにパ・リーグに圧倒され続けているセ・リーグの問題点を鋭くえぐっています。

昨年のセ・リーグには一時期、首位なのに勝率5割、それ以外のチームはすべて「借金生活」という珍しい事態が出来しました。セ各球団がパとの交流戦で大きく負け越したのが原因です。

更に言えばDeNAの中軸を打っていた内川選手などは「パ・リーグの野球に憧れて」ソフトバンク入りを決めたそうです。「人気のセ、実力のパ\とはむかしから言われてきた言葉ですが、つい10年くらい前まではパの主力選手が次々とセに移籍してしまい、セが圧倒的に強かった時代だってありました。

なぜ、現在セは弱くてパは強いのでしょう。原因はいくつかありますが、小関氏は氏の「専門分野」であるドラフト会議を筆頭に掲げています。セはアマ球界でそれなりに実績のある社会人や大学生を即戦力として上位指名することが多いのに対し、パは将来性重視で高校生を獲ることが多い傾向にあるそうです。メディアへの露出量などで端的に示される「人気」の差で有力な選手がパに来てくれなかった時代も長かったですね。逆指名や希望枠などが「制度化」されていた時代は、その年の目玉とされる選手の指名権はセ・リーグの人気球団に偏っていました。

しかしながら、即戦力しか求めない組織はやがて衰弱していくそうです。昨今の巨人がいい例ですね。

対してパ・リーグは人気がないが故に逆指名制度があった時代は逆指名権のない高校生を上位指名するしかなかったし、地道なスカウト活動で「原石」を見つけてそれを磨き上げるしかなかった。しかしそれが今奏功しているという訳です。

次に小関氏が掲げるのは「勝負の質」。セは弱点を消して集団で勝とうとするチームスポーツとしての色合いが濃いのですが、パはまず投手と打者の一騎打ちが原則。端的な例が「好球必打」。セはその時々の状況で見送りのサインが出たり、初球からは簡単に打って出ないという慎重派が多いそうですが、パはカウントや状況に関係なく、好い球なら打ちにいくことが尊ばれるそうです。しかもフルスイングで打ちにいく。国際的にはパの野球スタイルの方が主流です。それ故国際大会にはパの選手の方が多数選ばれる、という氏の指摘は鋭いですね。

それではセの立つ瀬はないのでしょうか?ここでも興味深いデータが示されます。だいたい10年周期でセ・パの強弱は入れ替わるそうなのです。あと数年後にはセの野球が確実性重視の緻密な野球としてもてはやされ、パの野球が荒っぽいとしてけなされる時代が来るかも知れません。

切り口の一つ一つが面白かったし、持論展開の基調となったデータも明快で興味深いものばかりでした。ヒロイモノの一冊でしたね。



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by lemgmnsc-bara | 2016-03-12 08:27 | 読んだ本 | Comments(0)

打撃の神髄 榎本喜八伝 (講談社+α文庫)

松井浩/講談社

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今年の一月に野球殿堂入りした榎本喜八氏の伝記。榎本氏の生前に上梓されていたものの文庫化です。本屋の店頭で見かけて衝動買い。

榎本氏と言えば私にとってはまさに伝説の人物。氏が現役を終えた年にはまだ私は野球にほとんど興味のない年齢でしたし、仮に活躍していたとしても群馬の片田舎では巨人戦しか放送されていませんでした。ただ、やはり小学生時代に愛読していた王貞治氏の伝記(マンガ)にその名前がちらっと出て来たということは覚えています。確か早実に入った王氏が打撃練習でもの凄い飛距離の打球を連発した際に「あそこまで飛ばしたことがあるのはOBの榎本さんだけだ」ってセリフを練習を観ていた近所の人が吐いていたんですよ。榎本さん、って誰?でも世界のホームラン王、王貞治と同じような打球を打球をかっ飛ばしたからにはさぞかし凄い人だったんだろうということは頭の片隅にひっかかっていました。

で、後にプロ野球の歴史を知る中で、やはりその榎本さんはすごい打者だったってことを認識しました。「安打製造機」というニックネームを始めて贈られたのが榎本氏。1000本安打、2000本安打の最速達成記録の保持者でもあります。

ただ、この方いわゆる職人気質で、しかもそれがいささか度を超すものだったようです。現役時代の途中から合気道にハマりこんでその原理を打撃に取り込んで大いに成績を伸ばしはしたのですが、反面試合前のベンチで一切口をきかずに冥想に耽ったり、奇声をあげたりといったことが度々あったそうです。また、天才という存在は、往々にして自分の技術なり、極意なりを他者に伝える言葉を持ちませんが、榎本氏もこのクチで、若手を指導する際に、言っていることがあまりにも抽象的すぎて伝わらなかったそうです。このことに絶望した榎本氏は現役引退後は指導者への道を進むこともありませんでしたし、有資格者だった名球会の活動にも一切関わりませんでした。

一方で現役引退後も、「打撃の極意をつかむ」ためにバッティングセンターに通い続けたりもしたそうです。いい意味でも悪い意味でも打撃の神髄を追求する求道者だったのですね。

生まれた時代が悪かったのか、それとも野球という「道」を見つけられただけでも幸せだったと考えるべきなのか。本人が鬼籍に入られてしまった今となってはその真情は計りかねるのですが、たとえば戦国時代であれば、宮本武蔵に匹敵するような剣豪となったかもしれません。



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by lemgmnsc-bara | 2016-03-06 18:05 | 読んだ本 | Comments(0)

近鉄バファローズの時代 (知的発見! BOOKS)

大阪バファローズ研究会(編集)/イースト・プレス

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何度か書いている通り、私は基本的には巨人ファンなのですが、パリーグでは近鉄バファローズを応援していました。その近鉄バファローズが「消滅」してはや12年。改めて時の経つのは早いですねぇ。

このチームの「DNA」はオリックス、楽天両チームに少しずつ受け継がれているはずではありますが、すでに消滅当時を知る現役選手はいませんねぇ…。嫡流がとだえて、傍流の方が栄えてしまった名家みたいなもんでしょうか。

さて、標題の書は近鉄球団の誕生から「逝去」までを描いています。元々のチームニックネームは「パールズ」。伊勢志摩方面に路線を持っていた近鉄が地元の名産品である真珠をその名に採用したという訳です。残念ながらパールズ時代の近鉄は輝きを放つ球団ではなかったようで「パリーグのお荷物」とか「ちかてつ」とか揶揄されていたようです。当然のことながらよほどの変わり者か、近鉄に縁のある人物でない限りファンも存在せず、観客動員数もひどいものでした。150人という今でも残る最低観客者数の記録もあるそうです。

当然のことながら、球団はテコ入れに動きます。その最初の一手として監督に招かれたのが巨人軍の名二塁手だった千葉茂氏。これを機に彼のニックネームだった「猛牛」をニックネームに採用しバファローズとなります。個人のあだ名がチーム名になったのは空前絶後のことらしいですね。

期待を一身に集めた千葉氏でしたが、「巨人のやり方」ばかりを振り回す同氏に選手が反発。人脈を活かして巨人から引っ張って来た選手達までが「巨人では、巨人では」と繰り返す有様で、チームはさっぱり強くなりませんでした。後に3連勝後4連敗という不名誉な日本シリーズ対戦成績を記録しますが、「巨人コンプレックス」もここに極まれり、ってところでしょうか。

このチームが強くなるのは、監督に西本幸雄氏を起用してから。大映、阪急を優勝させた手腕はここでも遺憾なく発揮されます。猛練習と鉄拳制裁で這い上がったチームは1979年、80年と連続してリーグ優勝。79年の日本シリーズでは世に名高い「江夏の21球」が展開されました、80年も後一歩で日本一には届かず。西本氏の枕詞には「悲運の」が定着してしまいます。

それから史上最高の熱戦としてあげることの多い1988年の10/19対ロッテダブルヘッダー。2連勝すればリーグ優勝。激戦の末に第1戦を制するものの、第2戦は引き分けで優勝を逃した無念。この結果と「ルールに負けた」選手達の無念さに胸熱くした人々は少なくなかったはずです。私はこの日、確か飲みに行っていて試合を見逃しました。一生の後悔です…。

結局この球団は一度も日本一になることなく姿を消すことになりましたが、日本一になれなかったからこそ、多くのプロ野球ファンには愛される球団となったのだと思います。記録には残らないが記憶に残る球団でしたね。



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by lemgmnsc-bara | 2016-02-07 07:02 | 読んだ本 | Comments(0)

日本人メジャーリーガーの軌跡 (文春文庫 編 2-54)

スポーツ・グラフィック ナンバー/文藝春秋

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昨日、マエケンこと前田健太投手がロサンゼルス・ドジャースとの8年契約を結んだことが大きな話題となりましたが、標題の書は「パイオニア」野茂英雄投手から「ムネリン」川崎宗則選手にいたるまで、メジャーリーガーとして活躍した日本人選手を描いたルポルタージュ集。スポーツ誌としては恐らく日本で一番メジャーな雑誌であろうと思われる『Number』に掲載されたもののより抜き集とでもいうべき一冊です。

いまや、日本で活躍して中心選手となったら米メジャーリーグに「昇格する」というのが一つのコースになっちゃいました。制度に風穴を空けたのは野茂投手ですが、日本球界<米メジャーリーグという数式を決定づけたのは松井秀喜選手の移籍でしょう。名実共に日本プロ野球の「顔」であった選手、しかも先代の「顔」であった長嶋茂雄氏からの朝日新聞紙上に掲載された残留要請をも振り切ってのアメリカ球界入りは、娯楽の王様の座からプロ野球を陥落させた一大事件です。その時はあまり大した衝撃を感じませんでしたが、地上波でのプロ野球中継がほぼ全滅した現状を鑑みるに、あれはトドメの一撃だったのではないかと思われます。

近い将来、トリプルスリーの山田、柳田、両刀の大谷に虎のエース藤浪あたりにお呼びがかかるんじゃないでしょうかね。そうなった時に引き止めるだけの魅力がないのが日本球界の辛いところ。

さて、標題の書の中で気になったのはイチロー。マリナーズ時代のイチローの軌跡にかんしてはそれだけで一冊本が出ているそうです。したがってこの本ではヤンキース移籍以降のイチローにアプローチしています。米球界にセンセーションを巻き起こした安打製造機もよる年波には勝てず、先発で常時出場というのが難しい状況に追い込まれています。そんな環境でも、40歳を越えてもなお現役を続けるイチロー。まだまだ自分に絶望せず、最大限に自己表現出来る場は「現役」であることだと自覚して精進を続けている姿は神々しくすらあります。彼の淡々とした表情と行動は、彼が抱えているであろう苦悩や肉体の衰えを感じさせませんね。そこにも「達人」としての魅力を感じます。悲壮感をまとわずにひょうひょうと、軽く修羅場を乗り越える今までの日本人には考えられなかったヒーロー像がそこにはあります。難しい状況をいとも簡単にのりこえてしまう努力と精神力。努力してるには違いないのに、それをまったく感じさせないところがイチローのイチローたるゆえんですね。自分自身で納得するまで、現役を続けて欲しいと思います。

あとはムネリンですかね。数字的にはたいしたことありませんが、彼がムードメーカー役を務めることで、チームの士気にあたえている好影響はかなり大きいと思います。言葉の壁をものともしない度胸と、逆境にめげない根性はやはり勤勉刻苦を旨として来た古い日本人には想像し得ない人物像です。

ラグビーではサンウルブズというチームが誕生しましたが、野球の世界でも日本選抜軍みたいなものを結成してメジャーに殴り込みをかけるくらいのコトがあっても良いと思います。美味しいところだけメジャーにさらわれて行くのは少々癪ですからね。







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by lemgmnsc-bara | 2016-01-09 19:48 | 読んだ本 | Comments(2)

プロ野球「スキャンダル事件史」大全

別冊宝島編集部(編集)/宝島社

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三省堂爆買い本の一冊。ちなみにこの本は定価で買いました。少し待てばバーゲン本だったかもなぁ…。

この本の発行は本年の9月ですが、出版後に大スキャンダルが発覚しましたね。巨人軍の3人の投手が野球賭博に関わったとして無期限の資格停止処分(事実上の永久追放)になりました。もう少し待てば、この一件の詳細も語られたかもなぁ…。つくづく買うのが早すぎましたかね(笑)。

さて、上述の一件により野球賭博の方法についてはTVのワイドショーを始めとするマスコミが実に詳細にかつわかりやすく伝えてくれていましたが、この本にも当然その方法やオッズ、果ては関西の反社会勢力は博徒つまり博打打ちから発祥したものが多いため、関西で多く発生する旨説明してありました。なお、野球賭博に関わると野球の「観戦技術」は格段に上がるのだそうです。ただ単に勝った負けたを賭けの対象にするのではなく、点数差が最も重要な要素となるため、先発投手の読みから主力打者の調子、様々なシュチュエーションにおける戦術の予測までそれこそ微に入り細にわたり分析することが必要とされるからだそうです。賭けで勝ち続けている人物には一度監督を務めてもらいたいもんです(苦笑)。

さて、巨人の3投手の中には笠原将生という人物がいましたが、この男の父親もプロ野球選手。渡辺久信(現西武ライオンズシニアディレクター)が西武から一位指名を受けた翌年のドラフトでロッテから一位指名された笠原栄一氏です。渡辺投手に素質では引けを取らないとされた右本格派でしたが、プロ通算7年で勝利なし(8敗)と全くふるいませんでした。彼の出身は群馬の佐波農業でしたが、同じドラフトでロッテに二位指名されたO投手も群馬県出身。彼は奪三振王のタイトルが設けられる前年に最多奪三振を記録した「幻の奪三振王」でしたが、後に殺人事件を起こし今は高い塀の中にいます。彼のこともちょこっとは触れてありました。群馬県出身の身としては外せないスキャンダルです。

その他はやはり巨人がらみのドラフトの話題が多かったですね。「江川事件」と「桑田密約説」はスキャンダルのランキングをつけたらおそらく1位と2位でしょうね。

もう一つ印象に残ったのは「暗黙の了解」。例えば大差で勝っている試合で勝っている方のピッチャーが打席に入った場合は基本的に打たないし、かりにバットに当たってしまっても全速力では走らないなんてのが暗黙の了解となっているそうです。ヤクルト在籍中の藤井投手(現巨人打撃投手)が勝っている試合で内野ゴロを打ち、全速力で走ったら相手の巨人ベンチから強烈に野次られ涙目になったことがありますね。プロ野球の例ではありませんが、高校野球で最後のバッターは必ず一塁にヘッドスライディングするというのもお約束。とある名門高校では「1点差なら走り抜けろ。2点差ならヘッドスライディングしろ」と「指導」しているそうです。いやはや。



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by lemgmnsc-bara | 2015-12-07 20:56 | 読んだ本 | Comments(0)

プロ野球 無頼派 選手読本 (宝島SUGOI文庫)

別冊宝島編集部(編集)/宝島社

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先日、神田の三省堂でバーゲンブックコーナーにあったものを衝動買いした一冊。いかにも別冊宝島が特集しそうな企画です。

まだまだ終身雇用信仰が強い日本においては、球団から球団を渡り歩く選手はそれだけで異端視されますね。また、組織の中でその組織の色に染まらず我が道を行く選手も同様に異端視されます。実績を残さなければ干されて終わりですが、いろんな逆境に負けずいい成績を残す選手が少なくないのも事実。

典型的なのは落合博満氏でしょう。打撃職人にして教え魔の山内和弘氏が監督のロッテにあってその監督の指導をきっぱりと断り「オレ流」を貫いた結果、3回も三冠王を獲りました。しかし、高い年俸と組織の和を乱すとの理由から中日にトレードされてしまうのです。中日でもそれなりの成績を残しますが、FA制度が出来るとすぐに巨人に移籍。大体の選手は巨人に在籍したことを花道に引退しますが、最後の最後まで現役にこだわり、日本ハムに自ら移籍します。晩年はさすがに力が衰えましたが、所属した球団すべてで中心選手としての活躍をみせたのはさすがの一言。権利を行使するからにはきちんと実績を残してこそプロ。本来ならこういう選手こそが「正統派」のはずなんですけどねぇ…。日本の社会では「無頼派」としてマイナスイメージまでもまとわされてしまいますね。

工藤公康氏もしかり。遊びすぎて身を持ち崩しそうになりながら、そこでズルズルと行かずにもう一度カラダを鍛え直して真のエースに脱皮。行く先々の球団で優勝の原動力になり「優勝請け負い人」とも呼ばれ、30年もの間現役を続けました。この本ではダイエー時代に城島、巨人時代に阿部という捕手を育て上げたことに着目しています。打たれることがわかっていながら捕手のサイン通りの球を投げて、考え方の誤りを身を以て知らしめる。なかなか出来ないことですよ。打たれてしまえば投手の責任になるし、成績も落ちる訳ですから。こうした身を削った指導はまた指導者としての工藤氏の財産ともなっています。今シーズンのホークスは圧倒的な強さでしたね。シーズン、プレーオフともに「弱い」と思わせる時期が全くと言ってよいほどありませんでした。中堅から若手といわれる年代の選手達が文字通り伸び伸びとプレーしていたという印象があります。勝つことによってまとまった集団は、日本シリーズで主軸の内川選手が直前の怪我により抜けても、みじんも揺るぎがありませんでした。

そして極め付きは川藤幸三氏。実績的にはまったく見るべきものはないと言ってよいのですが、彼ほど阪神ファンに愛された選手はいません。代打に出て来て三振してもファンを納得させてしまう「男・川藤」。球史には残らないけれど記憶には確実に残った選手でした。



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by lemgmnsc-bara | 2015-11-25 06:27 | 読んだ本 | Comments(2)

期待はするものの…

巨人、高橋由伸監督が誕生 現役は引退

まずは現役引退お疲れ様でした。度重なる怪我さえなければもっともっと頑張れたはずだし、タイトルの二つや三つ獲れただろうとは思うのですが、無念さは本人が一番感じていることでしょうから、由伸選手への繰り言を述べるのは止めにしておきます。

しかし、巨人という球団に対しての繰り言は言い続けたい。また、人気で監督選びやがって…。現役時代の実績と指導者としての資質が別物だということがまだわかっていない。現役引退後、即采配を振るった長嶋茂雄氏の監督就任一年目は一体どんな成績だったか、覚えてないのでしょうか?参考までに言っておけば最下位ですよ、最下位。

まあ、高橋新監督の指導者としての力量は未知数ですから、いまからつべこべ言うのは愚かなことだとはわかっているのですが、言わずにはおられません。

しかも、長嶋氏が最初に監督に就任した当時と現在の巨人の状況はみごとにカブってます。いわゆるV9戦士達が衰えを見せ、大多数が引退した後を任されたのが長嶋氏でした。阿部、村田が衰え、長野、内海、坂本が伸び悩み、杉内は故障中…、要するに主力が「主力」足り得ていないのが現状の巨人。高橋新監督がいかに頭脳明晰であっても、結局スポーツは選手の質に左右されるんです。今の巨人は誰が率いてもCS進出を確保するのが精一杯の状況であると思います。

ましてや高橋新監督は指導者としての経験がないんです。今年はコーチ兼任でしたが、そんな中途半端な経験でどうにかなるほどプロ野球球団の監督は甘くないはずです。

球団の編成担当部署が、今私が書いたようなことを十二分に想定して、きちんと手を打っていることを期待しておきましょう。

素人考えで言えば、コーチ陣に熟練者を置くこと。特にヘッドコーチは重要です。原政権を支えた尾花氏、または伊原氏当たりを据えるべきでしょうね。各部門のコーチもベテランを起用すべきだと思います。高橋新監督は「船頭多くして…」という事態にならないように調整する役割だけを担うくらいの状態にすべきです。

それから選手の補強。ドラフトは昨日終わっちゃいましたが、トレードはこれからが本番。なりふり構わず、他球団の主力を獲りにいくべきです。ソフトバンクの松田選手なんかはそれこそ「必須」。外国人もどんどん獲得すべきですね。こういう時こそ「カネ」にモノを言わすべきです。伝家の宝刀なんですから。

そうでなくても野球賭博問題で、思いっきりミソつけちゃってますからね…。西鉄の「黒い霧事件」と違って対象選手が二軍で腐っているような選手ばかりだったのが不幸中の幸い。

ファンが期待するのは、プロ野球が地上波のゴールデンタイムに戻って来ること。それには球界の盟主が名実共に復活するのが必要条件です。問題山積ですが、それをモノともしない快進撃を期待します。



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by lemgmnsc-bara | 2015-10-23 19:39 | 時事ネタ | Comments(2)

なんだかんだで読んだ本のことばっかり書いてます。たまに映画、時々食い物とドライブとラグビー観戦。
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