【カラー版】ヤマザキマリの偏愛ルネサンス美術論 (集英社新書)

ヤマザキマリ/集英社

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『テルマエ・ロマエ』の大ヒットで、一気に人気マンガ家にのぼりつめたヤマザキマリ氏によるルネサンス美術の解説書。題名通り、取り上げられる人物にはやや偏りがありますが、有名どころはほぼ皆紹介されています。

ヤマザキ氏は17歳の時に高校を中退して、絵の勉強をするためにイタリアに渡ります。残念ながら志望していた画家になることは出来ませんでしたが、描画の技術とイタリアの文化・歴史への知識が彼女の中で上手くミックスされて『テルマエ・ロマエ』という快作が生まれたという訳です。

『テルマエ〜』の主人公である技師ルシウスは架空の人物ですが、実在した人物を描いた『プリニウス』(とり・みき氏との共作)という作品も上梓されているようです。プリニウスは本書にも登場します。

さて、ルネサンスとは文芸復興という訳語が当てられる文化的ムーヴメントです。それまで神の教義を伝えるための手段であった芸術が、人間らしさを写実的に表したものに変わっていったことなどが代表的な「動き」となります。

そのムーヴメントの中の三大芸術家といえば、ラファエロ、ダ・ヴィンチ、ミケランジェロであり、文学の分野では『新曲』を書いたダンテがその代表格です。ヤマザキ氏はこうした人物達の一風変わった人物像を紹介し、その変人ぶりへの愛を語るのです。

芸術家に変人が多いであろうことは、例えば岡本太郎氏の言動や行状をみていれば想像に難くありません。ルネサンス期以前はイエス・キリストや聖母マリアなどは文字通り神々しく、魅力的な人物として「エラそうに」描かれることが一般的でした。神とそれに関係する人々は、聖書などに描かれたイメージからある種のステレオタイプな表現を「強制」されていたのです。しかしながらルネサンス期に活躍した芸術家たちはこうした描き方に異を唱え、実在の人物をモデルに、より写実的に人間の像を描き出すことを始めたのでした。俗に「世の中を変えるのは若者とヨソ者とバカモノだ」等と言われますが、彼らはまさに、芸術のあり方を変えたバカモノだったのです。

彼らによる変革がなければ、芸術は主にキリスト教の伝播道具にしか過ぎなかったかもしれません。そういう意味ではこのバカモノたちには大いに感謝すべきなのかもしれません。

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# by lemgmnsc-bara | 2017-01-21 07:14 | 読んだ本 | Comments(0)

プロ野球 もうひとつの攻防 「選手vsフロント」の現場 角川SSC新書

井箟重慶/角川マガジンズ

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2016年のシーズンにおいて、ペナントレース、交流戦、ウエスタンリーグとすべて最下位で、「完全最下位」という史上初の不名誉な記録を達成してしまったのがオリックスバファローズ。1988年に阪急ブレーブスから経営権を継承し、途中でブルーウエーブと名を変え、さらには近鉄バファローズとの「合流」を経て現在の球団名、経営体瀬となるのですが、「オリックス球団」の創成期に球団代表として経営に携わったのが著者井箟重慶氏。当時の球団経営の裏側を、題名どおり、特に選手との契約を中心に詳しく語った一冊です。

新球団になった当時のオリックスブレーブスは、選手層もちょうど世代交代の時期にさしかかっていました。1970年代後半に阪急ブレーブスの黄金期を築いたベテラン陣は衰えを隠せず、レギュラーラインナップが磐石であったが故の弊害である若手の成長遅れが顕著でした。おまけに当時のパリーグはまだまだマイナーな存在で、いくら勝っても観客は大して増えないが、負けが込めばそれこそ「無観客試合」に近いような状態になることも珍しくありませんでした。親会社だった阪急が悲鳴をあげて投げ出した球団を買い取ったのが当時のオリエントリース。球団買収とともにオリックスと名を変えた同社は、関西発祥の総合リース業者として日の出の勢いでした。井箟氏は丸善石油野球部のマネージメントにかかわったという職歴を買われて球団に入社。以後10年に渡り、球団代表を務めました。

この方の在職時、この球団には実にいろいろなことが起こりました。新生球団であることを差し引いても、並みの球団の3倍くらいの濃い時間を過ごしたのではないでしょうか?

阪急色を「脱色」するためにV9巨人の戦法や選手育成方法を知悉した土井正三氏を監督に迎え、3年間選手の育成に重点を置いた指導体制を敷きます。イチロー選手を見出せなかったとして、指導者としての評価は高くない土井氏ですが、全体の戦力の底上げにはつながったとして井箟氏は「世間」よりは高く評価しています。

そしてその後には、勝つための監督として勝負師仰木彬氏を招聘。仰木監督の誕生とともに彗星のごとく出現したのがイチロー選手。日本球界初のシーズン200本安打を達成するなどして、一気にスターダムに駆け上がった彼は、打線全体を活気付けました。そこに、星野、長谷川、酒井、佐藤、平井といった充実した投手陣が加わったのですから強いのも当たり前。1995年、96年とリーグ連覇を達成し、96年にはチームとしては阪急時代から、仰木監督個人としては3連勝後4連敗を喫した大逆転敗戦の宿敵巨人を倒して日本一にまで昇り詰めました。

この時代のドラフト戦略、外国人獲得、各選手との年俸交渉など面白いオハナシガずらり。なかでもやはり一番興味深かったのは、イチロー選手のドラフト指名をめぐるオハナシでした。イチロー選手は愛知県出身ということもあり、本人も中日ファンでしたし、中日球団もマークしていたそうです。1位指名にかけるほどの目玉ではないにせよ、まるっきりの下位で指名することもないだろう。いったいどの順位で指名してくるのか?この辺のフロント、スカウト同士の原の探りあい、手の読みあいが実にリアルに描かれています。井箟氏も3位指名にするか、4位指名にするか、それこそ3位指名の選手を決める寸前まで迷ったそうです。結局は4位指名で交渉権を獲得し、入団にこぎつけることとなるのですが、ここに人事の妙ってなこともかかわってくるような気がしますね。オリックスで、仰木監督と出会ってこその開花だったかもしれないですから。

イチロー選手といえば、彼は日本球界初のポスティングシステムによるMLB球団遺跡選手でもあります。このポスティングというシステムができるまでのオハナシも非常に興味深い。アメリカに駐在した経験のある井箟氏は制度の整備のためにさまざまな交渉を行い、選手にとっても球団にとってもメリットのあるシステムを作り上げます。スター選手であるがゆえに引き止めたい球団(および日本球界)と、高いレベルで自分を試したいと考える選手とのハザマで奔走したであろう井箟氏の苦労がしのばれるオハナシです。この制度は、選手の価値に見合ったトレードマネーが球団に入ることで、選手が球団やファンに対して、後腐れなくMLBに移籍できるようになったという意味で評価できると思います。日本球界がMLBのマイナーリーグ化してしまったという負の側面も無視できないほどに大きなものではありますがね…。

金だけを使うのではなく、知恵を絞ることでチームを強化し、かつ利益構造も改善する。どこかの金満球団に突きつけてやりたいようなオハナシばかりでした。金だけに頼った即戦力補強は長い目で見た場合に球界全体のメリットを減じる行為であることがはっきりした今だからこそ、井箟氏のような方に球団の経営を任せたいものですね。







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# by lemgmnsc-bara | 2017-01-19 18:29 | 読んだ本 | Comments(0)

日本ラグビー心に残る名勝負―歴史に残る日本ラグビー激闘史

ベースボールマガジン社/ベースボールマガジン社

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1970年〜2015年の日本ラグビーの「名勝負」と言われた試合を紹介したのが標題の書。

日本ラグビー史上における最大の名勝負は、なんといっても2015年第8回ワールドカップ予選プールでの南アフリカ戦でしょう。連続出場こそ途切れてはいないものの、勝利が1回だけという「最弱チーム」ジャパンと、対戦成績で負け越しているのはオールブラックスだけ、過去二回の優勝を誇り、この大会でも優勝候補の一角と目されていたスプリングボクス。番狂わせの最も起こりにくいと言われているラグビーと言う競技において、この下馬評の差は圧倒的で、戦前は「いかに食い下がれるか」が焦点となっていたほどでしたが、結果はエディー氏が帰国後の会見の第一声で発した言葉に集約されていると思います。「新しい歴史、作りました」。

2015年はラグビーフィーバーに沸き、マスコミへの選手、チーム、ラグビーそのものの露出が桁違いに増えました。スポーツジャーナリズムはもとより、一般のメディアでも五郎丸選手のメンタルトレーニング方法やらエディー氏の組織管理方法とかが盛んに取り上げられました。これだけ、ラグビーが日本社会の耳目を集めたのは恐らく初めてでしょう。勢いに乗って乗込んだスーパーラグビーという場ではジャパンに準ずる存在のサンウルブズは苦戦続き、また、ジャパンもスコットランド、ウエールズといったチームには善戦どまりだったため、2015年当時の熱狂的なブームはやや沈静化していますが、まだまだ追い風が吹いているのは事実。2017-18シーズンに期待しましょう。

さて、私自身が思う名勝負は二つあります。奇しくもこの本には両方とも取り上げられていませんでした。

一つは1987年12月6日の関東大学ラグビー対抗戦の早稲田vs明治。世に言う「雪の早明戦」というやつです。堀越、藤掛、今泉といったスーパー一年生を擁してこのシーズン現時点では大学チームとして最後の日本選手権制覇チームとなった早稲田に対し、やはりスーパールーキーと言われたWTB吉田を切り札に、伝統の重戦車FWがその破壊力を存分に見せつけていた明治が真っ正面からぶつかりあった一戦。前日に降った雪を溶かすような熱戦でした。特に終盤、ペナルティーで同点のチャンスを得た明治があくまでも勝利を得るためにゴールキックを狙わずに攻めに攻めた場面で早稲田がみせた執念のディフェンス。この攻防は見応えがありましたね。早稲田のFBの選手は脳しんとうで交代しましたし、私と同じポジションであった屯所選手のジャージがびりびりに引き裂かれていたシーンも印象的でした。

もう一つは1990年1月2日の大学選手権準決勝の早稲田vs大体大。この試合、大体大は徹底的にFW戦にこだわってきました。なかでも特にスクラム。何度も何度も組み直し。ついには認定トライまで取ったと記憶しています。当時の大体大は実は明治キラーと呼ばれていました。同じようにFWにこだわるチームながら、大体大は体育大らしく、当時としては最先端の筋肉強化トレーニングを用いて、より効果的に鍛えていました。確か、筋トレに専念する練習日を週の内に何日か必ず設けていたという記事を読んだ記憶があります。で、大体大のFWは明治の重戦車軍団に対しヘラクレス軍団と呼ばれていました。真っ正面から押しまくる重戦車に対し、力では負けない上に、筋肉に柔軟性を持たせた大体大FWの方が一枚上手だという論調でした。実際に1987-88シーズンの大学選手権でも、この大会でも明治には勝っていたはずです。この試合も終盤までは大体大がリードしていました。先にも述べた通り、スクラムを中心に自分たちの強みを最大限に活かしきった試合でしたが、最後の最後で早稲田が2トライを挙げてうっちゃります。どこか晴れ晴れとした大体大フィフティーンに対し、スクラムで散々にやられた早稲田の3番プロップの選手は号泣してました。同じポジションだけにキモチは非常によくわかります。試合に勝ってもスクラムで負けていたらプロップとしては負けなんです。

さて、この文章を書いている時点で、高校ラグビーは東福岡が優勝。大学は帝京と東海で決勝戦を控え、トップリーグの優勝争いからも目がはなせない状態です。2019年の日本でのワールドカップ開催に向け、この本に収録された試合をしのぐような名勝負がもう一冊本に出来るくらいの充実したシーズンを続けて欲しいものです。



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# by lemgmnsc-bara | 2017-01-09 07:57 | 読んだ本 | Comments(0)

アタック・ナンバーハーフ〈デラックス版〉 [DVD]

チャイチャーン・ニムブーンサワット/クロックワークス

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タイに実在したオネエたちのバレーボールチームを描いたタイ映画。公開当初、ちょっと気にはなっていたのですが、そのうちビデオ(2000年の制作ですので当時はまだDVDは普及していませんでした)化されるだろうと、思っているうちにいつの間にか、記憶の彼方に消え去ってしまっていた作品です。先日近所のレンタルDVD屋に行ったらたまたまピックアップコーナーにあったので即借り。原題『サトリー・レック』はこの実在のチーム名でタイ語で「鋼鉄の淑女」という意味になるそうです。邦題はあきらかに、女子版のスポ根マンガの草分け『アタックナンバーワン』のもじりです。当時こうした人々のことはニューハーフとかMr.レディーなんて言い方をしていましたから、タイトルはタイムリーなものではあったようですね。

私の大学の卒業旅行はタイでした。バンコクのとある日系デパートに土産物を買いに行き、そこでトイレに入ったらオネーサンが二人、かなり念入りに化粧していました。あれ、男女を間違えたかな?と慌てて外に出て改めて確認したら私はきちんと男性用の方に入っていたのでした。つまり彼女?らはオネエ(最近はこういう言い方をしますね)だったのです。まぎらわしいわ!!まったく。

タイという国は、歴史的にLGBTの方々には比較的寛容な国のようです。国教である仏教は同性愛を罪悪視していませんし、国民の敬愛を一身に浴びていた前国王もゲイだったのではないか、などとも言われています。公立の学校には男女のトイレの他に同性愛者専用のトイレがあるそうですし、性転換手術の最先端の地は彼の国です。日本の有名なオネエさんがたもずいぶんお世話になっていると聞きますね。

こうした文化的背景を持つ国ではありますが、やはりLGBTの人々というのはマイノリティーです。作品中でも、観客からブーイングを受けたり、対戦予定のチームに試合を拒否されたりするというエピソードが描かれます。チームのメンバーの一人は母親から同性愛者であることを手ひどく非難され、親子の縁を切られてしまいます。全体的にコミカルな描き方をされてはいますが、描かれている差別に関してはかなり生々しいです。自分の性に関して違和感を感じているというだけの理由で社会から拒絶されてしまうという悲しみは、差別されたことのない者にとっては想像しがたいことです。ステレオタイプな表現方法ながら、その悲しみと、それにめげないでバレーボールに打ち込む彼(女?)たちの姿は上手く表現されていたように思います。まあ、ストーリー的には「勝利がすべてを癒す」というスポ根モノの王道なのですがね。

ちなみに、このチームの監督は女性で、かつレズビアンです。こういうところにも細かなくすぐりは入っています。

ちょっとググって調べてみたのですが、演じた役者たちの素のセクシュアリティーに関して詳しく解説したモノはありませんでした。もし、素のセクシュアリティーがヘテロであるなら、なかなか真に迫った演技であったとは思います。

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# by lemgmnsc-bara | 2017-01-08 06:35 | エンターテインメント | Comments(0)

『13の幻視鏡』を読んだ

13の幻視鏡 (角川ホラー文庫)

吉村 達也/角川書店(角川グループパブリッシング)

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本屋の角川ホラー文庫コーナーにその著作が山積になることが多いな、と感じていた吉村達也氏の短編集。名前を良く見かけていたわりには死の作品を読むのは初めてです。おそらく「ホラー大賞」とかいう腰巻がついた本がなかったことが原因だと思います。ちょっと前のkindle割引本コーナーで見かけて即DL。ちょっとググって調べてみたら、この方かなり広い守備範囲をお持ちだったんですね。数々の「シリーズ物」が作品リストにありました。さらに言うとすでに鬼籍に入られていたってのも初めて知りました。

さて、『13の〜』と謳ってあるにもかかわらず、収録のお話は12編。そのへんの事情は生前の吉村氏と付き合いの深かった編集者による解説に書いてありますのでそちらを参照してください。全体としてはホラーというよりは落語の人情話を聴いているかのような読後感を持つ物語が多かったように思います。特に最後の『レイク・クレセントの風』は、何か不思議な結末が待っていそうに思わせて、実に合理的な結末が待っていました。恐怖というよりは、悲しみとその悲しみを乗り越えた先に待っているであろう、ほのかに明るい将来を思わせる仕上がりになっていたと思います。

期待していたホラーではありませんでしたが、吉村氏という作家を知ることができたのは一つの収穫です。当面シリーズ物には手を出す予定はありませんが、ホラー、あるいは虚実が入り混じったミステリーなどについては折を見て読んでいきたいと思います。

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# by lemgmnsc-bara | 2017-01-06 05:47 | 読んだ本 | Comments(0)

スーサイド・スクワッド ブルーレイ&DVDセット(初回仕様/2枚組/デジタルコピー付) [Blu-ray]

ウィル・スミス,マーゴット・ロビー,ジャレッド・レト,ジョエル・キナマン,ジェイ・コートニー/ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント

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アメコミ原作の映画化。この作品の版元はDCコミックスで、『バットマン』や『スーパーマン』の世界観がミックスされて作品の設定に影響しています。バットマンの敵役ジョーカーが重要な役所をしめる脇役として登場したり、主人公フロイド(ウィル・スミス)の回想シーンでゴッサムシティーが出て来たり。

まあ、一言で言ってしまえば、『XーMEN』シリーズのDCコミックス版です。特殊技能や超能力を備えた人間が集まって、より強大で凶悪な存在と戦う、ってのが大まかなというかストーリー説明のすべてです。『XーMEN』シリーズとの大きな違いは集められるメンバーがすべて犯罪者であるということ。普通の人間の倫理観とはかなり乖離したキャラクターの持ち主たちが、政府のお役人に爆弾を首に仕込まれて、いやいや敵に立ち向かうという筋立てです。ちなみに犯罪者たちを集めて、超常的な特殊部隊を作ったのは「スーパーマンが死んだため」という理由です。

この作品は日本で公開されたのが2016年の9月10日からだったので、ヒロインであるハーレイ・クイン(マーゴット・ロビー)のコスプレがハロウィーンのばか騒ぎの際に少々流行ったようですが、精々その程度の話題にしかならない作品だったように思います。ハーレイ・クインというキャラクターはなかなかぶっ飛んでましたし、個人的には好感の持てる存在でしたが、なにせストーリーが貧弱すぎてオハナシになりません。

最後の最後に少々どんでん返しじみた展開があり、続編の可能性が示唆されていますが、仮に作られてもビデオ化されてから、それも新作落ちしてからの鑑賞で充分だと思います。



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# by lemgmnsc-bara | 2017-01-04 16:08 | エンターテインメント | Comments(0)

『黄金海流』を読んだ

黄金海流 (日経文芸文庫)

安部 龍太郎/日本経済新聞出版社

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時代小説の大御所、安部龍太郎氏の長編。松平定信の治世下(いわゆる寛政の改革が行われていた時代ですね)を舞台に、伊豆大島の港湾整備事業を巡る争いを重厚な筆致で描いています。

今も昔も多額のオカネが動く公共事業というのは、不正の温床のようですね。実際に動く予算の他に、そこから得られる利権を巡って陰に陽に繰り広げられる戦いの姿がリアル。曲がりなりにも殺人がタブーとされている現在とは違い、武士による平民の斬り捨ては当然の権利として認められていた時代ですから、反対派の主要人物を暗殺してしまう、などというのは日常茶飯事。当然のことながら、その場合にはその道のプロというのが登場することとなります。そこういう時代背景の下に、幕閣クラスの人間の勢力争いから、商人の利権争い、伊豆の大島に存在する島民と流人たちの対立などが複雑に絡み合って、ひっきりなしにいろんな争いが起こります。

登場人物のキャラも皆が皆濃いこと濃いこと。大島の商人大島屋はボンボン育ちの苦労知らず。芸妓あがりの女房を満足させることも出来ず、店の実権も番頭の庄助ににぎられたまま、趣味的生活に「逃げて」います。しかし、ある日、大島屋の持つ廻船が嵐の海で難破してしまいます。積み荷として浜に打ち上げられた俵のなかからはご禁制の品である干ナマコが…。このことを咎められた大島屋は窮地に追い込まれますが、番頭庄助の奇策で一気に挽回します。この奇策が何であったかは実際の本文をお読み下さい。

お次ぎに登場するのは、下田の役人英一郎。腕も立ち、人格的にも高潔な人物として登場しますが、自らの出生の秘密を握られ、とある大物政治家の走狗となることを余儀なくされます。我が身の出自を呪いながら、いやいや手を染めた「裏の仕事」ですが、そのうちに英一郎は悪に魅入られてしまうようになり、進んで悪事に手を染めていきます。そのことが原因で妻や娘には去られ、母親は認知症になってしまうのですが、こういう状況がますます英一郎を悪に走らせる…。シュチュエーション変えれば現代の一般市民にも充分に起こりうる「転落」のストーリーですね。

そして、この物語のおそらくはメインキャラである、鉄之助。恵まれた体躯と、自己流ながら卓抜した剣技と天賦のセンスで戦闘能力の高いキャラ設定です。しかしこの人物、地震や船上など「揺れ」が発生する場面になるとパニックを起こし、周りの人間を手当り次第に傷つけてしまうというキャラクターをも付与されています。どうやら鉄之助の過去には「揺れ」に関する重大なトラウマがあり、揺れを感じた途端、そのトラウマが刺激されてフラッシュバックを起こすようです。鉄之助は石川島の人足寄場にいます。いわゆる無宿人であるからなのですが、彼がなぜ無宿人なのかについてはストーリーを追ううちに明らかになっていきます。大きな政争に関連している、とだけ述べておきましょう。鉄之助と常にコンビを組む呑海という坊主頭の人物も力強くストーリーを引っ張ります。この人物も途中で正体が明らかになるのですが、こちらも意外な人物の余生の姿とだけ述べておきましょう。

最後は大島の港湾工事を一手に引き受けた新興商人伊勢屋の現場監督秋広。伊勢屋は予算をオーバーする分に関してはすべて自前で負担する代わりに、港が完成した暁には帆布一反につき100文の入港税を徴収させてほしいとの申し出をして、それが受け入れられ、工事を進めています。しかし、大島屋を始めとする大島に既存していた商人たちは開港にともなう利権がなにも得られないことに反発し、この工事を後押ししている幕閣の要人とはライバル関係にある要人に働きかけて、工事をやめさせようとします。のみならず、ライバル関係にある要人の息のかかった英一郎や、闇の存在である「疾風組」を暗躍させて工事を妨害しようとしたりもします。

そこに工事推進派として立ちはだかるのが鉄之助と呑海に率いられた一派です。いくつもの争いと、人間関係が交錯する面白さは、本の分厚さが気にならないほどでした。他の本のことを気にする暇もなく、行き帰りの電車の中と就寝前の時間を使って三日ほどで読了しました。傑作です。



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# by lemgmnsc-bara | 2017-01-03 08:21 | 読んだ本 | Comments(0)

2016年の年末に当たり

ブロ友の皆様、本年も大変お世話になりました。

このブログを始めたのが2006年の12/30。そしてそこから、なんとなく断続的に書き続けて10年という歳月が経ちました。

ネットという限定的な環境下ではありますが、様々な人々と知り合うことが出来、色々なご意見をうかがえるという体験は非常に貴重なものでした。生活に張りと潤い、時には怒りや悲しみなども与えてくれましたが、それらはすべて自分自身の成長の肥やしになったと考えております。おかげさまで、今後の人生にも一つの大きな指針を与えていただきました。

今後も日々の下らない雑事をつらつらと書き連ねて行く予定ですので、よろしくおつきあいのほどお願いいたします。

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# by lemgmnsc-bara | 2016-12-31 08:30 | 雑談 | Comments(4)

『熊撃ち』を読んだ

熊撃ち (ちくま文庫)

吉村 昭/筑摩書房

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昭和、大正といった現代に限りなく近い時代の出来事に題材を取った作品の多い吉村昭氏の、実在の猟師と実際の事件にもとづいた短編小説集。8人の熊撃ち名人たちが登場し、七つの事件が描かれます。

近年、熊と人間が遭遇し、人間が殺傷される事件が増えていますね。天候不順によりエサが不足している、人間の恐さをしらない世代が成獣に達する年回りとなった、等々さまざまに原因は挙げられますが、根本には、かつては棲み分けが出来ていた境界線を人間が越えてしまい、従来は熊のテリトリーだった地域までその活動領域を広げてしまったことにあると思います。熊にしてみれば、自分の領分に入って来た人間を迎撃し、ついでに食糧にしているだけ。本当は人間の方が人間の方が遠慮しなければいけないオハナシなのかもしれません。

この本に取り上げられた事件は昭和初期、特に北海道などで人間が盛んに未開の土地、すなわち熊の生息域を侵略していた時期でした。人間に生息域を侵された熊たちは文字通り人間に牙を剥き、不用意に山に立ち入った人間を食い殺します。そこで熊たちの駆除に呼び出されるのが「名人」たち。

本来ならば、平和的に共存してゆくべき存在の命を奪って、肉や毛皮、内臓などをとって生計をたてている名人たちは、命を奪うことへの後ろめたさからか、みな一様にストイック。無闇矢鱈と熊を駆除するのではなく、人を食い殺した、あるいは今後食い殺す可能性が高い場合に限ってのみ仕方なく撃ち殺すのです。

名人たちはたいてい一人で行動することを好みます。不慣れな人間はいつパニックを起こして狩りの妨げとなるかわかったものではないということもあると思いますが、人間の勝手な理屈で殺されてしまう熊たちに対し、一対一での戦いを挑み、なるべく苦しませないよう一発で仕留めることでせめてもの償いとしようとする心象が伺えます。人間とはなんと罪深い存在なのでしょうか。などと柄にもなく殊勝なことを考えてしまいました。

いくつかのストーリーをうまくつなぎ直せば、レオ様の『レヴェナント』をしのぐような熊との戦闘が描ける映画となるのではないか、とストーリーに全く関係ないことも思い浮かびました。

なお、この作品集のための取材から派生した長編も存在するそうです。こちらも是非読んでみたいですね。


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# by lemgmnsc-bara | 2016-12-21 21:12 | 読んだ本 | Comments(0)

10・8―巨人vs.中日史上最高の決戦

鷲田 康/文藝春秋

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公式戦の最終戦で勝率がまったくの同率で、勝ったほうがシーズン優勝というプロ野球史上初の大一番となった1994年10.8の中日-巨人戦に関するドキュメンタリー。スポーツライター鷲田康氏の作品です。この試合、私はテレビ桟敷で観戦してましたが、事前からマスコミにあおるだけにあおられたせいもあって、相当に興奮しながら観ていた覚えがあります。

夏前までの楽勝ムードから泥沼の連敗を経てこの日にたどり着いた巨人と、シーズン終了前に早々と高木監督の解任を発表していながら、終盤に一気の連勝で瞬く間に頂上の一歩手前まで上り詰めてきた中日。事前の予想では明らかに後者の方に勢いを感じました。しかも当日の先発は巨人キラーの名をほしいままにしている今中投手。巨人は先発の槙原を始め、斉藤、桑田の三本柱をすべて投入する、と試合前からぶち上げていましたが、いかにいい投手をつぎ込んでも、打って点をとらなきゃしょうがないしなぁ…ってのが試合前の私の個人的な不安でした。 しかし、その不安は二回にでた四番落合のソロホームランで一気に吹っ飛びました。打つべき人がきっちりと仕事をして先制点を取る…。大体において巨人は先行逃げ切りという展開で力を発揮するチームなんです。先発投手のイキがいいうちに、打線がしっかりと点を取って、後は磐石の中継ぎ、クローザーへとつなげて逃げ切る。まずはこの勝ちパターンに一歩近づいた。どうにかこのまま行ってくれ、という当時の心境は今でもかなりリアルに思い出すことができます。

この後、各イニングに関して、どちらかのチームから一人「主人公」が選ばれて、その選手の過去-10.8-その後まで、かなり詳細な物語が語られます。落合の負傷退場、桑田のひじの怪我、立浪の左肩脱臼、斉藤の脚の怪我等々。特にこの中では立浪の左肩脱臼あ印象に残っていますね。非常にスマートで泥臭さを感じさせない立浪選手が、一塁にヘッドスライディングし、セーフにはなったものの、左肩を脱臼。後に前年までチームメイトであった落合氏が「あいつはあんなことをやるやつじゃなかったのに、怪我までしてセーフになろうとした。あの姿をみて中日の必死さを感じた」という主旨の発言をしたと記憶しています。

結果としては巨人が勝ってセリーグ優勝。勢いに乗って、西鉄ライオンズ時代からの仇敵であり、当時は「球界の盟主」の座をあらそっていた西武ライオンズをも破って日本一となります。この本の中で、鷲田氏はさまざまな方法で祝祭的な異次元を演出した長嶋茂雄氏に率いられた巨人が、あくまでも普段どおりの野球をやろうとした中日に勝ったと述べています。こと、「この一戦」に際して、いかに選手の力を引き出すか、に関しては長嶋氏の方が一枚上手だったといわざるを得ません。もっとも高木氏が長嶋氏と同じ事をやろうとしてもうまくいかなかったとは思いますがね。この辺の違いがスターと野球職人の違いなのでしょう。どっちがいいとか悪いとかではなく、あくまでも方向性の違いなのですが、10.8の決戦時に関しては、スターのかもし出す非日常が日常を飲み込んでしまったというわけです。

読み終えて、当時の興奮を思い出すとともに、すでにあれから22年もの月日が流れてしまったことに思い至り、感慨にふけってしまいました。その間、日本プロ野球もずいぶん変わってしまいました。そういう意味ではあの一戦は最後の奇跡だったのかもしれませんね。

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# by lemgmnsc-bara | 2016-12-21 19:54 | 読んだ本 | Comments(2)

マイケル・ムーアの世界侵略のススメ [DVD]

マイケル・ムーア/ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

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「マイケル・ムーア監督じゃねーよ!!」という近藤春菜のお約束ツッコミでおなじみのマイケル・ムーア氏の今のところの最新作。出演しているのはほぼ監督ご本人だけで、あとはズブの素人のみが登場するドキュメンタリーです。

監督は欧州各国を巡って、アメリカとは大違いの政策を見つけ出し、その関係者へのインタビューを試み、最後はインタビューした場所へ星条旗を押し立てて「侵略」の証とします。ひたすらこの繰り返しですが、それぞれの国で取り上げられるトピックスがいちいち興味深い。

まずはイタリア。この国の労働者は毎年二ヶ月以上の有給休暇が貰えます。このことはアメリカよりむしろ日本に響くオハナシではないでしょうか?毎日毎日朝早くから夜遅くまでオフィスに縛り付けられて、土日の休みもろくろく取れない。労働は善で、休みは悪というのが日本人の基本的な心象。つい最近電通の若手女性社員の過労自殺が大きな話題となりましたが、あれはホンの一例に過ぎず、似たような状況下で心身をむしばまれていく人々は数多いると思います。しっかりと休みを取って人生を楽しみつつ、やる時にはやるイタリア人と、ちょっと長く休むと罪悪感に苛まれる日本人。さて、あなたならどちらの国に暮らしたいですか?という問いは明示されませんが確実に心の中に入り込んできます。

お次ぎはフランスの学校給食。専門の料理人が腕によりをかけて作ったメニューと、大量生産された「工業製品」をただ温めただけのアメリカの給食。前者の豪華さを見せつけられた後では、後者は家畜のエサ程度にしか見えません。人工甘味料に添加物の塊のようなコカ・コーラ(これもアメリカの象徴の一つですね)を勧められたフランスの小学生は一口飲んだだけですぐに監督に返してしまいます。食材の美味さを充分に引き出した料理と、ただカロリーを摂取するためだけの「製品」、さてどちらをあなたは食べたいですか?どちらを自分の子供に食べさせたいですか?これも心に深く刺さる問いです。

その他、大学教育が無料なスロベニアに殺人犯までが、清潔な環境でのびのびと過ごせるスエーデンの刑務所など、それぞれをアメリカの現状と比べることで「どちらが良いか?」という問いを観るものに投げかけるつくりとなっています。

答えはいわずもがなでしょう。しかし、核の抑止のために核兵器を持つのが「常識」であるアメリカの指導者たちにはおそらくアメリカの現状を変える気はさらさらないでしょう。かくして、この作品は監督お得意の壮大な皮肉と、権力へのおちょくりになるのです。なかなかの佳作でした。



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# by lemgmnsc-bara | 2016-12-18 08:04 | エンターテインメント | Comments(0)

赤目四十八瀧心中未遂 (文春文庫)

車谷 長吉/文藝春秋

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この本を原作とした映画が各種の賞を受賞したことで、ずっと気になっていた一冊。本屋で見かけて衝動買いしてからずいぶん長い間の積ん読山での熟成を経て、ようやく読み終えました。ちなみに映画はまだ観ていません。

主人公生島与一(おおっ、与一!!!感情移入しやすい 笑)は大学卒業後広告代理店に勤めていましたが、勤務を続けて「中流の幸せ」を手にすることが、果たして本当に幸せになることなのだろうか?という深淵かつ青臭い疑問を消し去ることが出来ずに、安定していた生活を捨てます。そして住んでいた東京を離れ、チンピラや年のいった売春婦たちの吹きだまりのような尼崎の片隅で、焼き鳥屋の下働きで口を糊する日々に入ります。

こういう生活への衝動は私にもよく起こります。ただ私には最高権力者様という世間とガッチリつながったヒモがついておりますので、簡単に逃げることは出来ないし、なんだかんだで、食うにも事欠くような経済的な苦しさや惨めさを味わったことがないため、本当に貧しい境遇に落ちてしまった時に耐えきる自信もないので、実行しないだけです。会社の仕事からはちょいちょい逃げてますがね(笑)。

自分の夢や理想からはほど遠いものの、生きていくためにはカネが必要で、カネを得るためには働かざるを得ない…、こう考えただけでも気分は暗く、重苦しくなります。そして物語に重苦しさを増量してくれるのが周りの登場人物たち。刺青師の彫眉に、その子供の晋平、死んだ豚や鳥を捌く焼き鳥屋の女将セイ子ねえさん、そして出自が半島であることを隠しながら生きているアヤ子。どの人物にも、様々な社会の歪みが背負わされています。

中でもアヤ子。彼女は与一のファム・ファタールとして与一をより深い闇の中へと引きずり込んでいきます。そして最後には「一緒に死んで欲しい」と願うのです。結末は題名に表れていますが、与一は精神的には限りなく死に近い状態に追い込まれることになります。

この作品は映画のみならず、文章の方でも直木賞を受賞しています。人間の心がいかに移ろいやすく弱いものか、反面いかにしぶとくてしたたかであるかがよく描かれた一作であったように思います。



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# by lemgmnsc-bara | 2016-12-18 07:13 | 読んだ本 | Comments(0)

拝み屋怪談 禁忌を書く (角川ホラー文庫)

郷内 心瞳/KADOKAWA/角川書店

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宮城県で、拝み屋として日々怪しいモノや怪しい人々と関わり続けている郷内心瞳氏によるエピソード集。

私の中で「拝み屋」と言えば、まずは『孔雀王』の主人公、孔雀がイメージされるのですが、実際の拝み屋さんたちには孔雀のような超絶的な法力があるわけではありません。ただ、普通の人よりは怪しさに関する感度が高く、かつそうした怪しいモノたちを追い払うテクニックをいくつか身につけている存在として定義されています。

私は宮城県に数年間住んでいたことがあるのですが、彼の地に拝み屋が実在していたとは知りませんでした。まあ、実際の効果効能はともかく、民間信仰という文化の一部として、こういう存在がいたとしてもおかしくはありません。これは日本全国どこに行っても同じことだと思います。大学の社会心理学の授業で、シャーマニズムを研究していた教授から、こうした拝み屋の現存する具体例として沖縄県のユタについてのオハナシを聴いたことはあります。教授曰く、「沖縄では例えば子供が病気に罹った場合に、医者に行くことと並行して、ユタにその病いの原因を探ってもらうことが一般的だ」とのこと。一つの事象の原因を、科学的な手法と、非科学的な手法の両方からアプローチする。日本の「原風景」である農村が消滅しない限りは、こうした一見矛盾した心象が消え去ることはないだろうと思われます。自然に限りなく近い環境下では、予測のつかない出来事に対しての理屈は「神」を始めとする超常的な存在でないとつけられないでしょうから…。

さて、先にも述べた通り、この本はエピソード集ですので、郷内氏が実際に関わった人物や事象が生々しく描かれています。中でも一番印象的だったのが、一人の女性のオハナシ。彼女はずっと「引きこもり」でしたが、ある時「神が自分の中に入って来た」と自覚するようになり、しかもその神がどんどん暴走していくのです。そこで郷内氏が下した解決法とは?

このオハナシ、私は自分自身のことを振り返って大いに反省させられました。モノゴトは結局自分がどう考え、どう行動するかで決まるのです。自分以外のモノのせいにしているうちは絶対に事態は好転に向かいません。こうした事に気づかせてもらうだけでも拝んでもらう価値はあるのかもしれません。少なくとも私はこの一冊から実際に拝んでもらうのと同等の救いを貰えたと考えています。




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# by lemgmnsc-bara | 2016-12-10 18:54 | 読んだ本 | Comments(0)

陰陽師 蒼猴ノ巻 (文春文庫)

夢枕 獏/文藝春秋

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安倍晴明と源博雅のコンビの活躍を描く『陰陽師シリーズ』の最新文庫化作。いつも通りに二人の活躍を描くものの中に、ここのところとみに「いい人」感が増している蘆屋道満の活躍を描くものも一編含まれています。

オハナシの展開はいつも通り。博雅と清明が式神の蜜虫をサーバントに、ゆるゆると酒を飲みながら、とある怪異について語り合う、あるいはその酒盛りの場に誰かが飛び込んで来るというところからストーリーが始まります。題材的にはおどろおどろしい物怪だったり、生身の人間のドロドロとした怨恨が由来の怪しげな出来事だったりするのですが、このシリーズの特色として、常に物語はゆるゆると流れていきます。ある種の無常観というか諦念というか、そんなものがこのシリーズの底辺に流れているような気がしますね。

問題の解決を依頼して来た人物が必ずしも救われない、というのも特色の一つです。最終的には問題を起こした側に報いが訪れる、という結末となります。

表題にもなっている『蒼猴』は琵琶湖を舞台とした物怪と神の恋物語。泣沢女神と弁才天の逢瀬を、弁才天に横恋慕している青猿が邪魔するというオハナシです。その方法は琵琶湖にいる巨大なガマガエルに霧を吐かせて泣沢女神のもとへ通う、湖上の水路を見えなくしてしまうという、いかにもおどろおどろしいもの。泣沢女神はその名の示す通り女神だし、弁才天も女神のはずですからレズビアンのカップルの片一方に横恋慕しているオスの青猿がガマカエルに霧を吐かせているという訳です。考えるだに生臭い霧が漂ってくるような気がします。筆致はあくまでも淡々としているのですが、イカの塩辛の樽の中にアタマから飛び込んでしまったかのような、生臭さを感じさせる霧ですね。

まだまだ続きそうなこのシリーズ。映像化された作品では清明を稲垣吾郎氏と野村萬斎氏が演じましたが、誰か新しい人物に演じてもらって映像の方でも新シリーズを作っていただきたいものですね。

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# by lemgmnsc-bara | 2016-12-10 06:48 | 読んだ本 | Comments(0)

超高速! 参勤交代 [DVD]

佐々木蔵之介,深田恭子,伊原剛志,寺脇康文,上地雄輔/松竹

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日本の時代劇としては久々のヒットとなったのが標題の作。

話の舞台は徳川吉宗治世下の江戸時代。主人公は石高1万五千石という小藩、湯長谷藩の藩主、内藤政醇(佐々木蔵之介)。映画の中のキャラクターがどこまで実像に近いのかは定かではありませんが、一応実在した人物のようです。ちょっとググって調べてみたら31歳という若さで早世したとも書かれていました。

さて、湯長谷藩には金山がありました。そこでその金山を乗っ取って私腹を肥やそうとする老中、松平信祝(陣内孝則)が藩の取り潰しを狙い、その罪状作りのために60里という道のりを五日間のうちに移動して江戸城に登城せよという無茶苦茶な命令を下します。

取り潰し回避のために湯長谷藩家老の相馬(西村雅彦)は街道筋ではなく、山また山の間道を通ることを選択。そこでその話を屋根裏に潜んで聴いていた戸隠流の忍者雲隠段蔵(伊原剛志)が登場し、山道の「ガイド」を買って出ます。

さあ、あとは襲いかかって来る様々な困難をクリアして、いかに刻限までに江戸城に登城するかの描写が続きます。

途中、宿場町の飯盛り女お咲と政醇とのラブロマンスがあったり、大名行列らしく取り繕おうとして道中で雇った中間たちの逃亡があったりなどのエピソードを挟みながら、一行は江戸を目指します。このあたりはコメディタッチなのですが、江戸城近くなり、信祝配下の忍者集団との戦闘シーンはかなり迫力がありました。途中、いかにも「ワイヤー使ってます」みたいなミエミエの跳躍シーンが挟まってしまったのが少々残念ではありましたがね…、まあ、これは重箱の隅つつき。気合いの入った殺陣の連続でした。

主演の佐々木蔵之介を始め、深田恭子、寺脇康文、上地雄輔、六角精児にジャニーズ一派の知念侑李まで、人気者が多数出演していたというのもヒットの一因でしょうが、それ以上にストーリーが濃かったように思います。特にどちらかといえばなよっとしていて、今までは優男役の多かった佐々木蔵之介の殺陣のシーンの迫力には、彼の新しい一面を観た気がしました。それだけ演出も凝っていたということなのでしょう。思わぬ拾い物でした。





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# by lemgmnsc-bara | 2016-12-03 05:54 | エンターテインメント | Comments(0)

ヘイル,シーザー! ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]

ジョシュ・ブローリン,ジョージ・クルーニー,アルデン・エーレンライク,レイフ・ファインズ,ジョナ・ヒル/NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン

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ハリウッド屈指のヒットメーカー、コーエン兄弟の監督作品。ハリウッドを舞台に1950年代の映画業界の内幕を描いたコメディーです。

映画会社のプロデューサーという立場で、様々なモメ事に対処するエディ(ジョシュ・ブローリン)が主人公。エディが立ち向かうトラブルの一つ一つが当時のハリウッドの状況をパロディとして描き出している、という手法です。

一番の「からかいポイント」は、当時吹き荒れた「赤狩り」なんでしょうね。TVに押され、栄光の日々に暗雲が立ちこめ始めていた時代。エディの所属する映画会社は起死回生の策として大物俳優のベアードをフューチャーした大作映画『ヘイル・シーザー』の制作に取りかかっています。その撮影の最中にベアードが突然行方不明に…。彼は映画界から締め出された共産主義者たちに誘拐されたのでした。シーザー役の扮装のまま共産主義者たちから資本主義の矛盾点を次々と指摘され、洗脳されていくベアードの姿が哀れでおかしい。ゲラゲラ笑ではなく、インテリジェンスをくすぐるクスクス笑い誘う展開です。

またこの「クスクス笑い」には「神」の描き方に対する、各宗派の対立を描く際にも誘われます。ユダヤ教にカソリックにプロテスタントに東方正教会。当時のアメリカにおけるメジャーな4つの宗派が、それぞれの教義にしたがって「イエスは神の子だ」「いや神に子などいない」「そもそも神の姿など描けるものではない」という議論をくりひろげ、いつまで経っても結論が出ない。この争いは現在のアメリカにまで色濃く影響していますね。むしろ、今はここにイスラム教までが加わって、事態はより一層複雑化しているように思えます。日本ではちょっと想像出来ない争いですね。

その他、俳優同士の惚れたはれたに群がる芸能マスコミに、素のキャラクターでは訛りが酷くて洗練されたジェントルマンとはとても言えない人物が、人気者であるというだけで主役を務めるという、ハリウッドならではの力学が巧く描写されています。こちらはクスクスというよりはゲラゲラ笑を誘います。

コーエン兄弟の作品というのは観る者にそれなりの教養を求めますね。たぶん、私の知識の及ばない部分に、アメリカ人ならばもっと笑えるシーンがあったのだと思います。ただ笑っているわけにはいかないな、と感じさせてくれる作品でした。



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# by lemgmnsc-bara | 2016-12-02 05:27 | エンターテインメント | Comments(0)

『デッドプール』鑑賞

【Amazon.co.jp限定】デッドプール 2枚組ブルーレイ&DVD (俺ちゃんステッカー&俺ちゃんカード&日本限定アート グリーティングカード付き)(初回生産限定) [Blu-ray]

ライアン・レイノルズ,モリーナ・バッカリン,エド・スクライン,T・J・ミラー,ジーナ・カラーノ/20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

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マーベルコミックが原作の『X-Men』シリーズのスピンオフ作品。いわゆる「優等生」で、人類の平和のために戦うヒーローではなく、あくまでも自分の復讐を果たすために戦い、行動も言動もエロ・グロ・ナンセンスに満ちたアンチヒーローが主人公です。

主人公ウェイドは傭兵上がり。私立探偵というか、ボディーガードというか、一応依頼者の安全のために働くものの、明らかに「カタギ」ではない人物、という設定です。やがて、恋人ヴァネッサと巡り会ったウェイドはし幸せな日々を過ごすのですが、ある日、全身をガンに冒されていることが判明します。

そしてそのガンを克服するために投与されたクスリによりミュータントとしての能力をも得るのですが、副作用で非常に醜い外見となってしまいます。また、クスリの効果を上げるためには投与された人物に非常なる苦痛を与える必要があるため、投与に関わった技術者であるフランシスは、ありとあらゆると言って良い方法でウェイドを痛めつけます。

で、このことで怒り心頭に発したウェイドがフランシスに復讐するために、群がりでてくる敵を打ち倒し続ける、というだけのストーリーです。

普通に考えると、勧善懲悪的なストーリーなのですが、主人公ウェイドは常に汚い言葉をまき散らし、戦闘方法もグロテスクなアンチヒーロー的な性格を付与されているので清々しい展開とはなりません。

悪罵、わいせつ語、ブラックジョークが飛び交い、血や肉片が飛び散るスプラッターな展開は「良識ある人々」の眉をひそめさせるには十分な効果があります。で、R指定というわけです。

ジョークの中に、笑えるものが結構混じっていたのは評価して良いポイントだと思います。冒頭部分のネームロール的な言葉の端々や、ヴァネッサに醜くなってしまった素顔をさらす直前のギャグ等々。特に後者は単純ながらなかなか強力な仕掛けだったと思います。

ヒーローモノとしてはともかく、『X-Men』シリーズのパロディー作品としてはなかなか面白い作品だったとは思います。ネタ不足のハリウッドとしては無理矢理シリーズ化されそうな気もしますが、仮に作られるなら、よりパワーアップした内容になって欲しいものです。



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# by lemgmnsc-bara | 2016-11-26 11:53 | エンターテインメント | Comments(0)

永遠のディーバ: 君たちに明日はない4 (新潮文庫)

垣根 涼介/新潮社

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出ると買い作家の一人、垣根涼介氏の人気作『君たちに明日はない』シリーズの第四弾。リストラ請負人村上真介が四つの事案に臨んでいます。

今巻はこのシリーズの中では最高傑作なのではないかと思います(第五弾の『迷子の王子』はまだ読んでませんし、今後のシリーズ展開ではもっといい作品が出て来る可能性も多々ありますが…)。

第一話の『勝ち逃げの女王』は元々単行本で出版された際のタイトル。事案は航空会社のCAの逆リストラ。つまり今までとは逆に、やめたいと言っている人間を引き止めようとするストーリーです。相手は年収の高い旦那を持ち、自宅も買い、二人の子供がそろそろ受験の時期を迎えるベテランのCA。子供のことだけを考えてもいい状況である上、仮に辞めても食うに困ることはなさそうだという「好条件」付き、しかも本人はこれ以上会社に残っても、地位も賃金も上がることはないことが見えている…。さて、真介はこの難敵にどう立ち向かうのか?答えは題名に出ています。会社に入って自分がやりたいと思ったことをやり遂げたら、あとはさっさと次の目標に向かう。確かに勝ち逃げです。本物の「実力」があるからこそ「勝って」逃げられるのだということもしっかり書いてありましたけどね。

真介の上司である社長の過去が明らかになる二作目もなかなかの出来映え。社長がかつて自らリストラした、大手証券会社の管理職と酒を酌み交わす中で語られた、二人の人生と社長との交錯点。男は黙って家族のために働き、無駄な心配をかけない。「真面目」に生きることの素晴らしさとシンドさが見事に語られています。地味ではあってもキモチにブレがあったら出来ない生き方です。

そして、文庫化の際に標題作に「昇格」した三作目。このシリーズの中でも最高傑作と言ってよい作品です。

まあ、今の私の状態に色んな意味で示唆を与える作品であったから、という色眼鏡が合ったことも事実ではあるのですが、それでも、誰しもが心の中に持っているであろう「本当に勝負したかったこと」への未練と一つの解決策を見事に描いていた作品だと思いますね。

人間誰しも一度くらいは華々しい場所でスポットライトを浴びるような仕事に就きたいと思ったことがあるはずです。俳優、芸人、プロスポーツ選手…。いつしか壁に突き当たり、その壁を突き破ることが出来ずに夢破れて「平凡な生き方」に落ち着くというのが大半の人々の人生でもあります。では、そこで壁を突き破れる人物と、壁に屈してしまう人物との差はなんなのでしょうか?この問いに関する答えが見事に記されています。詳しくは本文を読んで下さい、としか言いようがありませんが、私自身の「覚悟」には大きな力を与えてくれたように思います。

四作目。生きているのは「今」なのに、常に未来のことばかりを考えている…。これも誰しもが心当たりのあるオハナシでしょう。未来に備えて貯金し、保険をかけ、「名門」とされる教育機関に入るべく努力する。そうやって未来に、それもどちらかと言えば未来の「不安」に対処するための備えに力を使い続けて来た結果、最期の瞬間まで「今」が充実しない。実に深刻なパラドクスですね。

「今」を充実させることが、結果として未来にそなえることにもなる、という生き方を自分はしているのだろうか?とハタと考え込んでしまいました。

さて、このシリーズは冒頭にも書いた通り五巻まで刊行されています。今後の展開も楽しみですし、ぜひとも長く続けて欲しいシリーズです。



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# by lemgmnsc-bara | 2016-11-26 11:19 | 読んだ本 | Comments(0)

ついに本格的にシニアチームにデビューしました。先月出場した試合は上は60代から下は30代までが混じったチームで、いわゆる戦という位置づけでしたが、今回は50代以上が出場する真正のシニアチーム。元々のチームの後輩君から紹介されたほぼ知り合いのいないチームのはずでした。しかし、グラウンドで着替えていたら、いきなり昔の直属上司が登場。絶句してしまいました。

ちなみにこの方は今までこのブログに登場させて罵倒したクソ上司ではなく、非常にいい方です。同じ部署だった時代に、高校時代にラグビー経験があるとは聞いていましたが、まさかこのチームで一緒になるとは…。試合前から思わぬサプライズ。しかもポジションはLO、まさに私の尻を押す位置です。今までは尻を叩かれたことはあっても尻を押されたことはありません(笑)。ますますもって奇遇。世の中広いようで狭い。

そんな感慨はさておき、試合前の練習で、左足の踵にかなりの痛みを感じました。ここ数ヶ月、どうもトレーニングの後に痛むな、とは感じていたので、鍼灸院で治療してはもらっていたのですが、完全には痛みが取れなかった箇所です。この日の痛みは本格的でしたが、ここまで来ておいて試合前に怪我しました、じゃ帰るに帰れません。試合が始まりゃいやでも動くし、痛みもヘッタクレもねーわ!!と思い直して無理矢理出ることにしました。幸いなことに、メンバーは数多くいましたので、後半のみの出場。時間は20分。つい4年前までは80分やってたんですから、楽勝、と思ったんですが、私も4年分歳をとっているわけで、いや、本日に至るまで体中が痛い状況です。昨夜は寝返りを打つのも一苦労でした。

さて、試合は前半1トライ1ゴールを奪ったわがチームがリードして後半突入。おじさんばっかりで走れないだろうと高をくくっていましたが、私のほうがもっと走れませんでした…。ただし、一度はこぼれ球を拾って、一度はサインプレーでボールをもらって、ぶちかましを敢行しました。いや~、久しぶりの快感。思い切りぶち当たった相手が倒れるのを見るのはいいもんです。ラグビーに目覚めた原点を思い出しました。そうそう、この感激こそが私にとってはラグビーの醍醐味の一つなんだよなぁ。帰宅して風呂の中でぶちかましのシーンを思い出してしみじみと感慨に浸ってしまいました。

私が現役を引退したのは、首のヘルニアで整形外科医からドクターストップをもらったことが直接の原因です。で、この日もスクラムはノーコンテスト、つまり押し合いなし、ということで後半は開始したんですが、ちょっとルールが変わり、最初にガツンと首に負担がかかるようなあたりがなくなったので、首は痛くありませんでした。そのため二本目のスクラムからは、レフェリーに申請して押し合い有りに変えてもらいました。体中の骨がきしむような押し合いも4年ぶり。でも相手を圧倒することができました。やっぱり俺の持ち味はスクラムだよなぁ、とここでもまたしみじみ思いました。残念ながら試合は逆転負けしましたが、体の感触を思い出しただけでもガチンコ勝負にした価値があるというものです。試合中はかなり燃えてましたし、試合直後はすがすがしさに満ちてましたね、実際。

で、家に帰って風呂に入って出て、しばらくしてからジワジワと加齢を感じる時間がやって参りました。すなわち体中の痛みです左足踵、首はもとより、あばらにわき腹、両肩、左ひざあたりが特に痛かった。痛むであろうことを見越して現役時代にかかりつけだった整体院を予約してありましたので、早速行きましたが、いや、もまれる場所、もまれる場所痛いこと痛いこと。一夜明けて昨日は、一昨日行ったのとは別に鍼を打ってもらう整骨院に行ったんですが、そこの先生からは「今日はひどいですね」といわれる始末。いつもより多く鍼を打ってもらい、長い時間電気刺激を与えてもらいましたが、今日になってもびっこを引き引き歩いています。心配していた首の痛みはあまり感じませんがね。

少しの反省点と、大いなる喜びを与えてくれた20分間でした。この時間をもっと充実させるためにトレーニングに励まなければ!決意した昨日の夜でしたが、今日もまだ踵が痛くてトレーニングできそうにありません。

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# by lemgmnsc-bara | 2016-11-23 06:08 | ラグビー関連 | Comments(0)

『峠越え』を読んだ

峠越え (講談社文庫)

伊東 潤/講談社

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戦国時代に数々の名将あれど、最後に天下を取ったのは徳川家康ですね。いったい家康という人物のどこが優れていたのでしょうか?伊東氏は作品中で、家康の師である太原雪斎の口から「お前は平凡なやつだ」という言葉を語らせて、その性質が凡庸であると定義しています。そしてその凡庸さの証拠として、軍略の天才武田信玄に散々に打ち破られる姿と、「上司」である織田信長にいいように使われる姿を描きます。家康が優れているところといえば、辛抱強いところと、切り所(いわゆる勝負所)をはずさない勘働きの鋭さだけ。もっともこの勝負所を乗り切るに至ったのは多分に幸運に恵まれたが故、という説明もなされています。あとは強いてあげれば個性豊かで、時には君主家康をも叱り飛ばすような部下がいたことくらいでしょうか。

とにもかくにも、姉川の戦いで殿軍を勤めたことを筆頭とする、さまざまな切り所を切り抜け、家康は武将として成長し、自身が率いる徳川軍団もどんどん巨大化していきます。そんな家康に脅威を感じていたのは、他ならぬ織田信長。信長は家康の嫡男信康と正室築地殿に謀反の疑いありとして、処刑することを要求し、家康の助命嘆願をはねつけて処刑させてしまいます。長年同盟を組み、一緒に死地をくぐってきた同志に対してのあまりにもむごい仕打ち。家康はじっと耐えます。そして信長は最後の手段として、家康の暗殺を企て、わずかな手勢しか率いらせずに堺までおびき出します。しかし、ここで家康は「天才」織田信長が思いもよらぬ方法で意趣返しをやってのけてしまうのです。戦国時代最大の謎である「本能寺の変」の一つの可能性が、史実に矛盾することなく、見事に解き明かされています。この展開には「う〜ん、そうきたか」と思わずうならされちゃいました。この着想は少なくとも私には今までなかったものです。

さて、信長の謀略をしのいだ家康ですが、この後には史実でも有名な伊賀越えが待っています。信長による大規模な虐殺を骨髄に感じている伊賀の地侍たちが、信長の盟友である家康を黙って通過させるわけはありません。しかも伊賀は名だたる忍者の里。攻撃してくる男たちはすべてが手練れの忍者ばかりという設定です。ここで実際に峠を越えようとする家康一行の姿と数々の切り所という峠を越えてきた家康の姿をダブルミーニングで表したタイトルが利いてくるというわけです。なかなか凝った作りですね。掛詞そのものはシンプルではありましたが、意味は非常に深いものでした。

余談ながら、この物語には秀吉はまったくと言ってよいほど登場しません。秀吉が家康の前に立ちふさがるのはもう少し先の話ですし、信長という峠が道なき道を切り開いていくような道行きでようやく越えたものであるとするなら、秀吉という峠は、家康が越えようとしたときにはすでに崩れ去って平坦な道になっていたようなものですから、ドラマ性には欠けるのでしょう。読み応えのある一冊でした。

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# by lemgmnsc-bara | 2016-11-19 19:53 | 読んだ本 | Comments(2)

なんだかんだで読んだ本のことばっかり書いてます。たまに映画、時々食い物とドライブとラグビー観戦。
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