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千曲川ワインバレー 新しい農業への視点 (集英社新書)

玉村 豊男 / 集英社

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「食」に造詣の深いエッセイスト玉村豊男氏が、ブドウの栽培からワインの醸造まですべてを自らの手で行うワイナリーについて紹介し、併せて日本の農業の一つの将来像についても言及している一冊。

玉村氏が何年か前から長野県でワイナリーを経営している、というオハナシは雑誌かなにかで読んだ記憶があり、なんとなくアタマの片隅にはあったのですが、「所詮日本のワインは大したことがない」という先入観の下、大して注目していませんでした。パリに留学経験があり、ワインについても人一倍詳しいであろうと推測される玉村氏であっても、ワインを味わう事と実際にワインを作る事は全くの別物。日本ではいくら頑張っても大したワインは出来ない。まあ老後の道楽として始めたんだろう、カネがある人はいいよね、くらいの気持ちで読み始めたのですが、さにあらず。玉村氏は、従来ブドウ栽培には向かないであろうと思われていた土地を入手し、そこで、日本で開発されたワイン用ブドウだけでなく、フランスの高級品種を栽培する事に注力します。

また、ワイナリーにはレストランも併設されており、たまに玉村氏自らオーダーを取ったりもするそうです。行ってみたいなぁ。

氏のワイナリーがあるのは東御市。菅平からは高速のインター一つの距離です。長野道がまだ全線開通していない頃は、東御インターで降りて菅平を目指したもんだったっけ。あんなところでワイン作りができるのか?氏によれば、東御市を流れる千曲川の流域は、カリフォルニアの名醸地ナパヴァレーに勝るとも劣らない、非常にワイン作りに適した土地なのだそうです。

ワイン作りには時間がかかりますが、5年間我慢する事が出来れば十分に勝算ありなんだそうです。う〜ん、魅力的なオハナシだなぁ。多分自分では実行しないけど(笑)。

最近は日本のワインも世界で高い評価を得るようになって来たようです。日本産のワインが世界に羽ばたく日を心待ちにする事にします。
# by lemgmnsc-bara | 2013-10-01 21:09 | 読んだ本

柔道五輪金メダリスト猪熊功はなぜ自刃したのか

井上 斌 / アドレナライズ

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東京五輪の重量級で金メダルを獲得した稀代の名柔道家、猪熊功氏の生涯を氏の側近中の側近だった井上斌氏が綴った一冊。井上氏は猪熊氏が自刃した現場に立ち会ってもいます。

スポーツ選手として一世を風靡した人間が第二の人生として実業界に乗り出すと、たいてい失敗しますね。元プロ野球選手が水商売に手を出して失敗し、現役時代の「遺産」を食いつぶすだけではなく、多額の借金まで背負って苦労した、などという話はそれこそその辺にごろごろ転がっています。

現役時代の「名声」が通用するのは精々5年くらい。それ以降は世間から忘れ去られて「あの人は今」状態に陥る事の方が多いですね。また、ある競技の達人は、良きにつけ悪しきにつけその競技一筋に生きて来た「競技バカ」です。スポーツはある意味単純です。努力すればしただけ結果に跳ね返りますから。ところが実業の世界はそうはいきません。こうすれば必ず成功する、という「公式」はないし、努力が報われない事の方が多いのです。

猪熊氏はまさにこの「競技バカ」の典型とも言える人物でした。柔道は確かに強い。しかし実社会のビジネスは柔道より遥かに繊細で、かつ力強い駆け引きが要求されます。金メダリストという肩書きは感嘆の対象ではあってもビジネスパートナーとして有力か否かは全くの別問題です。猪熊氏の悲劇は最後まで実業家としての感覚を身につけられなかったところにあると思いますね。

著者の井上氏が文中で何度も指摘している通り、東海大学の経営陣が猪熊氏を利用するだけ利用して、経営が危うくなったら掌返しをした、というのも一つの事実でしょう。しかし、猪熊氏が「人寄せパンダ」に徹しきれなかったというのも事実だと思います。柔道のセンスと経営の手腕とは全くの別物。経営は経営のプロに任せて、自分は客寄せに徹すればよかったのではないでしょうか?なまじ自分がトップに立とうとしたことで自刃という悲劇を招いてしまったような気がしてなりません。

いずれにせよ不世出の柔道家が一人、自らの命を絶ったという重い事実は残りました。「死んで花実が咲くものか」。本当は彼には最後の最後まであきらめない姿を見せて欲しかったように思います。会社が倒産しようが、借金が残ろうが、命まではとられなかったはずです。
# by lemgmnsc-bara | 2013-09-28 21:44 | 読んだ本

なるほど、料理のことば

ベターホーム協会 / ベターホーム出版局

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いつ頃、何を考えて買ったのかが分らない本が「積ん読山」から発掘されちゃいました。奥付をみると2003年の出版のようですから、かれこれ10年くらい前に買った事になります。どこで買ったのかすら記憶がありません…。

編集したのはベターホーム協会。1963年に設立され、全国で料理教室などを開催している他、料理に関する本も多数出版しているそうです。標題の書は、料理にまつわる様々な言葉を解説したもの。料理に関する言葉を理解できる若者が著しく減少していることに危機感を持った協会が少しでも料理に関する知識を広めようという意図の下に出版したもののようです。しかし、料理の言葉を理解できないような知能の持ち主が本なんか読みますかね?まあ、何もせずにただ、手をこまねいているよりはマシだとはおもいますが。

閑話休題。この本、なかなか内容的にはスグレモノでした。そのものズバリの料理用語の解説もさることながら、まめ知識として途中に挿入されている蘊蓄がニクい。私はむしろそっちの方が興味深かったですね。たとえば「おせっかい」という言葉。これはもともと、すり鉢についたとろろなどの残滓を残さずにこそげとる道具の名前だったそうです。目の細かいすり鉢の溝からスリおろしたモノをかきとるわけですから、余計なものもかきとってしまうことになる。そこから転じて、余計なことを勝手にしでかしてかえって事態を混乱させる現在の「お節介」という意味になったそうです。おもしろいなぁ〜。

その他、知っていたつもりで、実は意味を誤解していた言葉も多々発見しました。餅は餅屋ってやつですね。知らずに使っていたら恥をかくところでした、そう言う意味では感謝に値する一冊です。まあ、でも今のオネーチャンたちは手に取って読んだりはしないだろうなぁ…。
# by lemgmnsc-bara | 2013-09-26 21:25 | 読んだ本

プラダを着た悪魔(特別編) [DVD]

20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン (FOXDP)

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何の気なしに借りて来てしまった一作。メリル・ストリープが「悪魔」役である事以外、何も予備知識がないままに観ました。

主人公のアンドレア・サックス(アン・ハサウェイ)はジャーナリスト志望。本格的なライター活動へのきっかけ作りとしてファッション誌「RUNWAY」に応募します。ファッションにまったく興味のなかったアンドレアは明らかに場違い、という雰囲気を察して就職をあきらめますが、何故かカリスマ編集長ミランダの目に止まり、第二アシスタントとして採用されます。

そこでアンドレアを待ち受けていたのは、アシスタントとは名ばかりの山のような雑用。ミランダの朝のコーヒーを用意する事から始まり、脱ぎ散らかした服や放り投げたバッグの片付けから、ミランダの双子の娘のための買い物まで。出版前のハリーポッターが読みたいなどの理不尽な要求まで突きつけられますが、アンドレアはなんとかしちゃうんです。この辺りは少々ご都合主義の感がなくはないですが、まあ、気難しいミランダがアンドレアを抜擢してどんどん大きな仕事を任せていく、というところは典型的なアメリカンドリーム達成のストーリーでした。

しかし、昼も夜もなく仕事に追い回される生活は、アンドレアから気持ちの余裕を奪って行き、彼氏とも別れ、友人からも絶交を言い渡されます。

この辺、ちょっと身につまされました。別に私は仕事によって彼女を奪われた訳でもないし、親しい人との決定的な決別があった訳ではありませんが、自ら目指した道を歩みたいが故にやりたくもない仕事を我慢してやって、そしていざ報われるかと思ったら全く別の道が用意されている…。まさに自分の10年くらい前の姿にダブっちゃいます。アンドレアみたいに、最後は自分の求める道に踏み出せていたらどんなに爽快だった事でしょうね。まあ、無い物ねだりです。

ストーリーとは別に、アン・ハサウェイの美しさに惹かれました。ファッションセンスが磨かれる事によって、内面も変化して行くところなんかが特に。最後にはその磨かれた美しさも捨ててしまうんですけど。意外と若い(今年で31)のにもビックリです。『レ・ミゼラブル』の時は役柄のせいもありましたが、かなり老けていた、という印象がありましたから。

でもやっぱり、自分の本当に求めていた姿を見つけ、そこに向かって歩み始めた姿が一番美しいってことをはっきりと示してくれたラストシーンが印象的でしたかね。ちょっとベタな表現ではありましたが…。
# by lemgmnsc-bara | 2013-09-25 21:45 | エンターテインメント

ラグビーの情景

藤島 大 / ベースボールマガジン社

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日本のラグビーライターの第一人者藤島大氏のコラム・インタビュー集。日本で唯一のラグビー専門誌『ラグビーマガジン』に掲載されたモノを収録しています。

印象に残ったのは以下の三つの「作品」。

まずは「1987年のロッカールーム」。

1987年に開催された第1回ラグビーワールドカップの決勝戦直前のNZオールブラックスのロッカールームで何が語られ、どんな言葉が叫ばれたのか。当時オールブラックスに密着していた記者がロッカールーム内の会話を「盗み撮り」したものを元に構成されています。今でこそ試合前のロッカールームには関係者以外近づく事など思いもよりませんが、まだプロラグビー選手というものが存在しなかった牧歌的な時代だったからこそのネタです。オールブラックス優位が伝えられ、実際に29-9でフランスを下し、優勝という結果に終わった大会ですが、初めて「公式」の世界一を決める大一番を直後に控えた選手達の緊張感が伝わってくる作品でした。

「さ、グランド、回ろう。」

ジャパンが初めてスコットランドに勝った時の監督である宿澤広朗氏の言葉です。氏が現役の日本代表選手であった頃、早稲田のグランドに臨時コーチとして行ったときに発せられたようです。当時の早稲田の選手達は伝説の先輩からどんなことを教えてもらえるのか、大いに期待していたようですが、練習は延々と走るというもの。不満顔の選手達に言った一言が「走ればなんでもできるんだよ」。昨年まで現役だった身にとっては、一番痛いところを衝かれた言葉でした。そうそう、小難しい理屈を捏ねて、小賢しいサインプレーなんかを考えるより、とにかく相手よりも走れた方が勝ち、というのがラグビーというスポーツなのです。単純ですが、実行に移すのは一番難しいオハナシでもあります。

三つ目は現ジャパン監督のエディー・ジョーンズ氏へのインタビュー三連発です。エディー氏が日本代表のラグビーをどういう方向に持って行こうとしているのか?そしてその方向にははたして「勝算」があるのか?読み応えのあるインタビューでしたね。パシフィックネーションズカップではフィジーやトンガに勝てませんでしたが、6月のウエールズとの試合では史上初となる大金星を挙げるという成果を見ました。二年後のワールドカップ、そして2019年に控えている日本開催のラグビーワールドカップに向けて、大いに期待しています。
# by lemgmnsc-bara | 2013-09-24 19:38 | 読んだ本

映画、演劇、お笑い、あまり肩の凝らない小説等々…、基本的にエンターテインメント系に特化したブログにします。

by 黄昏ラガーマン
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