トラオ 徳田虎雄 不随の病院王 (小学館文庫)

青木 理/小学館

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青木理氏による徳田虎雄氏の評伝。週刊ポストに連載されたものに加筆して上梓しています。

徳田氏といえば、2013年の11月に発覚した猪瀬都知事(当時)への資金供与の件で公の場に現れた姿をみて、驚いた記憶があります。現代の世にあっても原因、治療法ともに明らかになっていないALSという難病に冒され、全身が麻痺して、視線の動きでようやく意志の疎通ができるという、非常に痛々しい姿だったからです。そこには、地盤である徳之島で全島の島民を巻き込んで「保徳戦争」を繰り広げたり、徳州会病院の建設に際して建設予定地の医師会とモメゴトを繰り返したり、といった猛々しさはほとんどみられませんでした。わずかに視線の鋭さのみが強烈な意志を感じさせてはいましたがね…。

この本の出版は2013年の前半だったようで、猪瀬都知事への資金供与の問題についてはまったく触れられていませんでしたが、そうでなくても重大な疾患なのに、この事件でよりダメージを負って一気にあの世に行ってもおかしくはないなと思った記憶もあります。でも、あれから3年以上経った現在でも自力で呼吸もできない状況ながらまだご存命のようです。生命力が強いと感心すべきか、この世への未練がそんなに強いのか、とあきれるべきか?いずれにせよ、そんな状態でありながら、徳州会は虎雄氏の指導なしには日も夜も暮れぬという状態だそうです。いやはや。

徳田氏の医学への志向は幼い時に故郷の徳之島の医療体制が整っていないが故に弟が死んでしまったことで芽生えました。徳州会の根本的なスローガンである「生命だけは平等だ」という言葉には、地域や収入により受けられる医療に差があってはならないはずだ、という徳田氏の思いが込められています。患者は年中無休、24時間オープンという体制で受け入れ、3割の自己負担分も場合によっては支払いを免除する、という徳州会グループの病院の姿勢はなるほど「医は仁術である」という言葉を体現しているように思えます。しかし、この患者に取ってはありがたいと思える方針であるが故、進出する地方地方でその地の医師会からの猛反発を喰い、衝突を巻き起こします。徳州会グループに、常に漂うきな臭さというかヤバい雰囲気はこういう紛争に由来するもののようですね。

そして徳田氏自身もかなり強烈な人物であるようです。自分が正しいと信じたことを推進するためにはどんな「汚い」方法でも使う。そしてその「汚さ」ですら、自分の策の推進のためには必要だったと正統化してしまう。まわりの人間もすべて巻き込んで、不眠不休で目的を達成するまでしゃにむに走る。スティーブ・ジョブズしかり、ダイエーの創始者中内功氏しかり。大きな既得権益団体に戦いを挑み、大きくブレークスルーした人物にはどこかしら狂的な部分があるようです。徳田氏も、どんな地域のどんな人々にも平等に医療が行き渡る体制を作るためには政治を変えなければいけない、と考え「俺は総理大臣になる」と言い放って政界に進出します。

実現させるための方法についてはいろいろと問題があるように思いますが、なにしろ、一つのことを成し遂げようと自分の持てるもののすべてを注ぎ込む、という集中力と執念については大いに見習う点があるように思います。もっとも凡人中の凡人である私は自分の身の減量すらも達成し得ないというのが現状なのですが…。




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by lemgmnsc-bara | 2017-02-26 18:03 | 読んだ本 | Comments(0)

ソフィー・マルソーのSEX■LOVE&セラピー [DVD]

ソフィー・マルソー,パトリック・ブリュエル,アンドレイ・ウィルム,ジャン=ピエール・マリエール,マリー・リヴィエール/インターフィルム

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ソフィー・マルソーが超肉食の美魔女を演じた一作。

ソフィー・マルソーといえば、アラフィフ世代にとってはなんといっても『ラ・ブーム』でしょう。思春期を迎え、恋心に目覚めていく可憐な少女を演じた同作を観て、美少女ソフィーに惹かれた男子は少なくなかったはずです。公開当時男子校の高校生だった私も、美少女ソフィーに魅せられた一人でした。

それから数年後、彼女は見事なセクシー美女に変身します。豊満な肉体を披露したヌード写真を発表してみたり、ボンドガールになってジェームズ・ボンドと濡れ場を演じたりする大人の女性としてのソフィーを観て、引いてしまったロリコン男性もいると思います。私自身は成長した姿を好ましく(もちろん相当なエロ目線は入っています 苦笑)観てましたけどね。

さて、そんな彼女も当年とって50歳。顔のアチコチにあるしわは年輪を感じさせますが、プロポーションはボンドガール当時そのまま。まさに昨今流行の「美魔女」の条件にぴったりと合致する姿でスクリーンを駆け回ります。

彼女が今作で演じるのはセックスのことばかり考えているという美魔女。海外各地を股にかけ取引先の男性担当者をその美貌と肉体的な魅力で籠絡する敏腕営業職というキャラクターが付与されています。彼女が日本人らしき得意先と一戦交える倉庫にはなぜかニッカのウイスキーがずらりと並んでいます。後半部分でもニッカは印象的な部分で登場します。ニッカはフランスで人気があるんでしょうかね?

閑話休題。

彼女の「性癖」を快く思わない上層部からクビを言い渡された彼女は、ひょんなことからカップルセラピーのクリニックに潜り込みセラピストとしての職を得ることとなります。カップルセラピーとは男女のセラピストがコンビを組んで夫婦(または事実上の夫婦といってよい二人)の間の問題を解決するというものです。日本ではお目にかかったことはありませんが、彼の地ではポピュラーなものなのでしょうかね?いずれにせよさまざまな悩みを抱えたカップルがこのクリニックを訪れ、セラピストの経験などないはずの彼女からトンチンカンな回答を得て混乱に拍車がかかってしまったり、逆にうまく問題が解決する姿がコミカルに描かれます。フロイトじゃあるまいし、何でもかんでも性衝動に結びつけりゃいいってもんじゃない気もしますが、まあそういう設定を楽しむしかありません。

そして彼女は相棒の男性セラピストと恋に落ち、自分自身が様々なトラブルに直面する、というのが大まかなストーリー。フランスの作品らしく、色々なところに、細かく、かつ「高度」なくすぐりが入っていたのだとは思いますが、彼の地の文化には明るくない私にとってはイマイチ笑えないシーンが続きました。

昨今は日本の女性もずいぶん大胆に自由に行動するようになったとは思いますが、まだフランスの、それこそ本能のおもむくままに快楽を求めるという奔放さは一般化していませんね。少々誇張されているとはいえ、女だって普通に性欲があり、男をとっかえひっかえすることだってあるさ、という主張は日本の文化と照らし合わせたギャップとしてココロにひっかかりました。文化の差の前に、日本の普通の女性の場合は、この作品のソフィーのような美しさを保ったまま美魔女になれる人の絶対数が少ないってのもあるのかもしれませんがね。

俗に天才子役は大成しないなどといいますが、ソフィーに関して言えば、大スターとまでは言えないにせよ確かな演技力を身につけて立派に一本立ちしてるな、という印象を受けました。ソフィーみたいな女性が目の前に現れたら…、気後れしてナンパなんて思いもよらないでしょうね(苦笑)。

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by lemgmnsc-bara | 2017-02-23 10:56 | エンターテインメント | Comments(0)

アフリカで誕生した人類が日本人になるまで (SB新書)

溝口 優司/SBクリエイティブ

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少し前にkindleをPaperWhiteからFireHDに変えたのですが、変更後の最大の利点は本体のメモリ容量が増えたこと。本体に落とし込んでおける書籍の数が大幅に増えました。例えば前者だとコミックスはせいぜい3冊くらいしか落としておけませんが、後者なら100冊以上持ち歩くことが出来ます。文字情報だけの書籍なら1000冊以上大丈夫。そんなわけで、今までクラウドの中で文字通り眠っていた書籍を端末上に引っ張り出して片っ端から読んでいこうとしております。

以上のような状況の下で、クラウドの中から引っ張り出したうちの一冊が標題の書。今の人類がどこで発生し、どんな環境下で進化して現在の姿に至ったのかについて、特に日本人にフォーカスしてかなりわかりやすく解説してくれています。

人間がサルから枝分かれして人類としての歩みを始めたのはどの時点なのでしょうか?

それまでは森林地帯に住んでいたサルの種族のなかから、森林の中の敵を避けるために平地で暮らすものが出てきてから、というのが本書に記されたその答え。樹上とは違い、地上で素早く合理的に動くには二足歩行をする方がよい。で、自由になった前脚を「手」として使えるようになり、その手から受ける刺激で脳が著しく発達し、知能という卓抜した能力を得たところでヒトという種が始まります。その後は気候の寒冷化にあわせて、カラダの表面積を減らしたり、逆に暑さに対処するために体毛を減らしたり、大きくなった脳を格納するために頭蓋骨が大きくなったりというマイナーチェンジを何万年もの間連綿と続けてきた結果として今の人間に至った、という説明はシンプルながら非常にわかりやすいものでした。

今後、人間の姿はどのように変わっていくのでしょうか?発達した知能によって開発された道具の機能が優れていると、本来的には持ち合わせていた生物としての機能は衰えていくものなのだそうです。例えば、歯やあごの大きさや形状。刃物という道具によって細かく刻まれたり、熱を加えることで咀嚼しやすく加工することを覚えた結果、人類のあごはどんどん小さくなってきたそうですし、歯の形状も変化してきたそうです。確かに類人猿は牙を持った顔で表現されることが多いですね。生肉を喰いちぎるための能力が不可欠だったことの証左です。

さて、昨今人間特有の「考える」という働きを代行したり補完したりするための人工知能の発達が著しいようですが、これは人類の今後にとってどのような変化をもたらすのでしょうか?まあ、私が生きている間には結論が出るようなオハナシではないとは思いますが、様々な電子機器が身近にあることが「当たり前」となっている世代の常識と自分の持っている常識との乖離を考えあわせると少々恐いような気がしています。



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by lemgmnsc-bara | 2017-02-23 10:23 | 読んだ本 | Comments(0)

暗黒の巨人軍論 (角川新書)

野村 克也/KADOKAWA / 角川書店

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巨人を倒すことに生涯をささげてきたといってよい野村克也氏による現在の巨人軍の問題点を指摘した書。

野球というスポーツは、1球1球プレーが切れ、インターバルがあるという珍しいスポーツです。野村氏によれば、この「間」の活用方法こそが勝負を分ける重要なポイントであるとのこと。点差、イニング、アウトカウント、相手投手との相性、走者の有無などの属性により、その場面場面での最良の結果を見極め、その結果をもたらすよう努力するのと同時に、最悪の結果も考えて、そこから少しでも遠ざかるようなプレーをしようと試みる。たとえば、無死一塁二塁で点差が1点ビハインド自分が右打者で相手投手も右、なんてな場面を想像してみてください。最良の結果はホームランで3点取ることではありますが、ホームランが出る確率は非常に低いし、下手に打って出たら内野ゴロでダブルプレーを取られて一気に二死(すなわち最悪の結果)なんて事態にもなりかねない。そこで、チャンスを広げるために送りバントを選択するが、その際には、二塁ランナーが三塁で封殺されないよう、捕球から送球までに時間がかかる三塁側にボールを転がすことを心がける、などというのが「考えた」プレーです。こうした場面場面での最良選択プレーは長い歴史を経るうちに「セオリー」として定着しています。またこのセオリーがあるからこそ、その裏をかく策だって出てくるわけです。そこで、いろんな選択肢を考え、実行するために練習を重ねる、というのが強化における「セオリー」となります。

俗に「アンチは裏返ったファン心理だ」などという言葉がありますが、野村氏は実はかなりの巨人ファンです。有力な選手が続々と集まる巨人には鼻も引っ掛けられなかったという悔しさが打倒巨人への強いモチベーションとなったのですが、野村氏が打倒したかったのはV9を達成した当時の巨人であり、現在の巨人はまったく怖くないとも述べています。V9時代の巨人はONという打線の軸と強力な投手陣を擁した上に、なおかつ各人が自分の果たすべき役割を熟知し、その役割を果たすための練習をきちんとしていたそうです。中心選手であるONも圧倒的な練習量でチーム全体を引っ張った。試合でのプレーだけでなく、日常生活においても他の選手の手本となるよう心がけていたというわけです。こうしたチームが空前絶後のV9を達成したのは至極当然で、現在のチームもこの時代のチームを手本とすべきだとも説いています。

なぜ、こんなことを野村氏が一冊の本にして上梓したのか?それは現在の巨人軍に考えるということがまったく根付いていないからです。冒頭にいくつかのミスが挙げられていますが、なるほどプロとしては恥ずかしいレベルのプレーばかりです。野球というスポーツへの理解も足りないし、理解するための研鑽も積んでいない。反射神経と筋肉だけでただ目の前の事象にのみ対応しているだけ。だから体力が衰えると高いパフォーマンスがみせられなくなる。仕方がないから他球団で実績を挙げた選手をFAで引っこ抜く。かくして素質のある選手が育たずに、功成り名を遂げた選手ばかりを巨人が引っかき集める、という今の図式が出来上がり、しらけたファンがどんどん離れていくという事態を招いたというわけです。

まったくもってその通り。自前の選手を育てて優勝した広島や日ハムに倣うかと思いきや、またぞろ欲しい欲しい病発動で有力な選手を3人FAでかき集めるわ、未完の大器大田を放出するわ、外国人も欲しいだけ取るわで、まったく反省がありません。盟主がこれでは、日本野球はアメリカに追いつくどころか完全ファーム化への道一直線です。なんとかして欲しいもんですが、今の最高権力者がどうにかならない限りはどうしようもないんでしょうね。テレビのゴールデンタイムにプロ野球中継が復活する日は来るんでしょうか?望み薄ですね…。

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by lemgmnsc-bara | 2017-02-23 05:56 | 読んだ本 | Comments(0)

岳飛伝 2 飛流の章 (集英社文庫)

北方 謙三/集英社

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北方大水滸伝シリーズ完結編『岳飛伝』の二巻目。『楊令伝』終了時における作品世界の状況の「おさらい」に終始した観のある一巻目から、岳飛、金国、梁山泊のそれぞれが躍動を始め、新しいストーリーをつむぎだし始めたのが今巻です。

まずは主人公岳飛。梁山泊で銭を鋳造していた田峯を招聘して、楊令に斬り落とされた右手にはめる義手を作ってもらうこととなります。元々の右手に質感、性能ともに劣らぬ義手は、楊令との戦いで文字通り傷ついた岳飛の心身を癒し、新しい戦いへの意欲を掻き立てます。ただし、まだ、自分が主権を握ろうという考えは薄く、あくまでも南宋の軍閥の一つの頭領という位置づけで、金国や梁山泊との対決に臨んでいかに勝利するかを考え、行動しています。また、彼の下には崔蘭という義理の娘が登場します。彼女が、梁山泊の医療を薬という面で支えた薛永が残した、さまざまな薬草の効能を記した書をたよりに、薬に対する造詣を深めていく姿が描かれます。やがて訪れるであろう、大きな戦において彼女が重要な役割を果たすこととなるのでしょう。そして、彼女はまた岳飛に、父親の成長した娘に対する戸惑いまでをも感じさせる役割をも担います。岳飛の人間臭いエピソードを示す手段としてはとしてはなかなか上手く考えられた手法ですね。

金国は王位を狙う人物たちの権力闘争と平行して、隣接する梁山泊との戦いに突入します。元々精強な兵を多数抱えるという設定であり、兵の絶対数も梁山泊軍を大きく上回るために、梁山泊軍と一進一退の攻防を繰り広げます。国としての野望は中原に覇を唱えることではあるのですが、実際にもし覇を唱えることになっても、その際の王が誰なのかについてはまだまだ混迷を深めていきそうですね。梁山泊を凌駕して南宋軍との直接対決があるのか否かも気になります。

さて、われらが梁山泊の面々ですが、現首領である呉用は、自らの「統治権」を破棄し、一種の集団指導体制を採っています。軍、兵站、商流、物流などなどの各分野に最高責任者を任命し、自身はその調整役に回っているのです。自分自身には宋江や楊令のように「志」を強烈に示して梁山泊を一つの方向にまとめあげる力はないと考えての施策です。潔い腹のくくり方ですね。権力に固執するどこかの政治家にはぜひとも見習って欲しいと思います。呉用をはじめとする元々の水滸伝からの登場人物たちは、志という一番の重荷を若い楊令一人に背負わせてしまったことを悔いてもいます。そして、志は一人の人間が背負うものではなく、梁山泊に集った面々の一人ひとりが持つべきものだという結論に達したのです。この施策は結果として、梁山泊の運営体制を現代の「民主主義」に近いものに変質させていきます。「志」に反しない限りはどんな行動をとることも自由。軍においてはさらに「規律」が存在しますが、たとえば商流に関しては梁山泊に蓄えられた原資を背景に日本やベトナムにまで手を広げるなど、当時としては目一杯ワールドワイドな活動が可能です。「裁量が」大きい分、責任も重大であるというのは容易に想像はつきますがね…。

さてさて、今後の展開を楽しみに次巻のkindle化を待ちたいと思います。

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by lemgmnsc-bara | 2017-02-23 05:52 | 読んだ本 | Comments(0)

『ファーゴ』鑑賞

ファーゴ [Blu-ray]

フランシス・マクドーマンド,スティーヴ・ブシェーミ,ウィリアム・H・メイシー,ピーター・ストーメア,ジョン・キャロル・リンチ/20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

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ハリウッド屈指のヒットメーカー、コーエン兄弟によるクライムサスペンス。毎年この時期になるとレンタルDVD屋の店頭に出現する「アカデミー賞受賞作品」コーナーに並んでいたやつを衝動借り。

最初に登場するのはいかにも頼りなさそうな男ジェリーと、いかにもヤバそうな雰囲気を醸し出している2人組の男、カールとゲア。ジェリーがカールとゲアに持ちかけるのは自分の妻の狂言誘拐。資産家である義父から高額の身代金をせしめようという目論みです。どうやらジェリーはカネに困っているようです。

カールとゲアは誘拐に成功しますが、逃亡に使った車両にナンバープレートがついていないことを警官に見とがめられ、その警官をゲアが射殺してしまってから、ストーリーが、ジェリーを含む犯人一味にとっては悪い方向悪い方向に展開していきます。いわゆる「ドツボにはまる」というシチュエーションがどんどん進行していくのです。

まずは、警官射殺現場を偶然車で通りかかったカップルを二人とも殺害。罪がどんどん重なります。依頼したジェリーはジェリーで、警察に通報しようとする義父を説得し、身代金を引っ張り出すのに散々苦労させられます。おまけに、当初の要求金額から大幅に増額した身代金をジェリーではなく義父自らが犯人の元に運ぶと言い出し、強引に犯人との受け渡し場所に行ってしまいます。途中で身代金の大半をネコババしようとしていたジェリーにとっては実入りが何もないのに焦りと罪悪感だけが募る結果となります。

で、カネの受け渡し場所に行った義父は、受け取りに来たカールと銃撃戦の上、射殺されてしまいます。さらにはカネと車の取り分の争いから、カールもゲアに殺されてしまいます。いやはや。ちょっとした手違いや一瞬のイラつきによってもたらされたホンのちょっとしたズレがやがて大きな歪みとなって、登場人物たちに襲いかかる、という展開はなかなか上手く考えられていたと思います。悪いことを企んだやつには結局利益はもたらされず、代償としての罪だけはしっかり背負わされる、という結末も悪くありませんでした。

一つだけ消化不良だったのは、身代金の最終的な行方。支払われた金が要求額より大幅に多いことに気づいたカールは、当初通りの分け前だけ持って、残りはとりあえず雪の下に隠してゲアのいる隠れ家に帰るのですが、そこで前述した通り諍いが起こり、殺されてしまいます。カネの隠し場所を知る人物はストーリー展開からはカールしか考えられません。結局このカネは一体どうしたんだろう?そこだけ少々尻切れトンボ感は否めませんが、全体としてはなかなかの佳作だったように思います。



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by lemgmnsc-bara | 2017-02-14 18:59 | エンターテインメント | Comments(0)

『Eight Days a Week』鑑賞

ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK -The Touring Years DVD スタンダード・エディション

ポール・マッカートニー,リンゴ・スター,ジョージ・ハリスン,ジョン・レノン/KADOKAWA / 角川書店

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1962〜66年頃のビートルズの姿を、現存する映像から描き出したドキュメンタリー映画。当時のライブの映像から、後年になってからのメンバーや関係者へのインタビュー映像なども交え、彼らの「本気」にかなり近いところまでアプローチすることに成功しています。

静かなものから激しいものまでバラエティーに富んだメロディーにのせ、シンプルながら意味の深い歌詞が曲となって流れる。そして彼らの演奏する姿を観に、今までの音楽のコンサートでは考えられないほどの膨大な数の人々が会場に文字通り押し寄せる。熱狂、熱狂、また熱狂。警備の人数を増やしても、警官隊の出動を要請しても、ほとんど何の効果もない。このムーヴメントの解消のために、ひとまずは「ハコ」を大きくする方向に向かうこととなります。すなわち、普通のコンサートホールではなく、野球場などの「スタジアム」を会場とするのです。

今でこそ、ポッと出のアイドルとかいう連中までが当たり前のように行う「ドームツアー」なんてな催しを初めて「行わざるを得なかった」のがビートルズだったのですね。ネット配信などはもちろんなく、レコードですら普及の途上だった当時における彼らの人気は空前絶後、今の言葉で言えばレジェンドとでも言いましょうか。音楽の教科書にまでその名前が載ってしまうというのがよくわかる光景が次々と映し出されます。

そしてこの作品はやがて訪れるであろう、解散の日をにおわすようなカタチで終わっています。それこそ1週間に8日も働き詰めに働く、という日々がデビュー以来続いていた彼らは次第にマスコミの前でも不機嫌さを隠さなくなります。一部のメディアとは険悪な雰囲気になっていたし、デビュー当時の勢いからすればやや勢いに欠ける(とはいえ、それでもすべての作品が「ヒット」したと言える状態なのですがね…)セールスも、メンバー個々の音楽性の違いってやつも影響していたんでしょうね。メンバー間の亀裂を決定的なものにしたと言われている、ジョンのオノ・ヨーコへの過剰なまでの肩入れに関してのタネもこの時期に蒔かれていたのかもしれません。

ビートルズが音楽を、そして社会をどのように変えたのかが具体的に描かれていた、なかなか興味深い作品だったと思います。



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by lemgmnsc-bara | 2017-02-12 18:37 | エンターテインメント | Comments(0)

平尾誠二・ラグビー界の太陽 大金星のラグビー人生を振り返る (朝日新聞デジタルSELECT)

朝日新聞/朝日新聞社

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昨年53歳という若さで急逝し、昨日お別れの会が催され、2000人もの弔問客を集めた平尾誠二氏に関する朝日新聞の記事を集めた一冊。大学選手権三連覇を果たした同志社大学時代のものから、昨年6月に行われたジャパンvsスコットランドのテストマッチ直前のものまでが収められています。

平尾氏といえば伏見工業での高校ラグビー全国制覇、同志社では大学選手権三連覇、社会人の神戸製鋼では七連覇とすべてのステージで栄冠を得、ジャパンの中心選手としても長年活躍した「ミスターラグビー」の名にふさわしい名選手でした。

この一冊にも優勝直後のインタビューや、主将としての日常など明るい面が数多く取り上げられています。まあ、亡くなった方の悪い面をとりあげるのは特に日本でははばかられる傾向にありますし、悪いことよりは良いことの方が圧倒的に多い方でもありますので、構成上しかたのない部分もありますが、エディー氏というかつてない業績を残した監督が去った後という時期だけに、苦闘続きだった日本代表監督時代についてももっと触れて欲しかった気がします。彼の一番の悔いはおそらく、志半ばにして退いた日本代表監督であっただろうと思われますし、彼がやろうとしていながら果たせなかった強化策(例えばジュニア世代から継続したエリート育成プログラムなど)については今のジャパンに活かすことが可能であるとも思うからです。

無念の思いとともに、俗に「棺桶のなかまで持っていく」などと言われる秘話やしがらみ、障壁などを赤裸々に語った内容のものを掲載してほしかったなぁ、という気がします。彼は日本ラグビー界のさまざまな場面をすべて知りうる立場にあった人であり、かついろいろな方々に意見を言える立場でもあったはずです。だれの、どんな思惑が日本ラグビーの前進を阻んだか、それこそ亡くなった今だからこそ言えるオハナシが多々あるように思うのですがね…。

新聞報道の限界の一つの局面をみてしまったような気がしました。新聞はその時その時の客観的な事実を伝えることが最優先されるがゆえに一つ一つの事柄を深く掘り下げるて伝えるのは苦手です。新聞に掲載された記事を集めると、どうしても当たり障りのない事象の羅列になってしまうんですよね。平尾氏は称えられてしかるべき人物ではありますが、彼をもってしても改革出来なかったジャパンの今にも連なる暗部について語ることの意味は決して低くなかったように思いました。

いずれにせよ、私くらいの年代のラグビーファンにとってはまさしくキラ星のような存在でした。その輝きが亡くなってしまった今の喪失感は例えようもありません。改めてご冥福をお祈りしたいと思います。



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by lemgmnsc-bara | 2017-02-11 08:31 | 読んだ本 | Comments(0)

『5th Wave』鑑賞

フィフス・ウェイブ(初回生産限定) [Blu-ray]

クロエ・グレース・モレッツ,ニック・ロビンソン,ロン・リヴィングストン,マギー・シフ,アレックス・ロー/ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

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クロエ・グレース・モレッツが主演しているというだけで借りて来てしまった一作。

彼女の今作の役割は女子高生キャシー。ある日キャシーの住む町の真上にいきなり巨大な円盤のようなものが出現します。どうやらこれは異星人(作中の呼び名はアザース。以下アザース)の乗り物兼前線基地だったらしく、このアザースたちからは不気味な10日間の沈黙の後、第一の波(攻撃)が送られてきます。

これは電磁波による攻撃で、エネルギーの統制を司るコンピューターから、人々が持つスマホにいたるまで、すべての電子機器が使えなくなります。次に襲ってくるのが内陸部では大洪水、沿岸部では大津波。この第一次、二次の攻撃はちょっと穿った見方をすれば大地震の光景を模したものかもしれません。ライフラインと通信手段を失った後の人々に襲いかかる大量の水…、特に東日本ではリアルな恐怖を感じる人もいるのではないでしょうか?

お次ぎは伝染病。キャシーの母は看護師で人々の治療にあたるうちに感染して死亡。しかし中にはこの病原菌に打ち勝つ人々もいます。しかし打ち勝ったとは言ってもアザースに脳を乗っ取られて別人格(アザースのために人類を殺戮する方向で活動します)になってしまう人物もいれば、全く影響を受けない人物たちもいます。ここで起こるのが人間同士の同士討ちと疑心暗鬼。このあたりは「人間が本当に頼れるのは人間だが、同時に一番の敵となるのも人間だ」という私にとっては『デビルマン』の原作コミックを読んで以来のパラドクスが示されていたように思います。ここまでの攻撃で第4波。で、五つ目は何?と思っているうちにエンドロールになっちゃいました。何じゃこりゃ?

ストーリーそのものはさほど悪いとは思いませんでしたが、あまりにもリアリティーがなさ過ぎて、普通に観ているのが困難でした。詳しい筋立ては観ていただくしかありませんが、最終的に、人類を救いうるのは子供である、というメッセージを表すために、大人ですらかなわないアザース相手に子供が戦おうとする、という設定がそもそも理解不能。文字通りの子供騙しです。キャシーだって、不意打ちだったとはいえ、訓練を摘んだ女性兵士と戦って絞め殺してしまったりもします。いくらなんでもあり得ねーだろ。もしこれが実情だとしたら、アメリカ軍に守ってもらってるって安心すら出来ねーじゃねーか!

まあ、作品としての室はさておいて。クロエ・グレース・モレッツだけはたっぷりと鑑賞することはできましたので、それだけが救いでした。彼女のファン以外にはあまり観る価値のない作品であるように思います。



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by lemgmnsc-bara | 2017-02-07 19:00 | エンターテインメント | Comments(0)

なんだかんだで読んだ本のことばっかり書いてます。たまに映画、時々食い物とドライブとラグビー観戦。
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