2016年の年末に当たり

ブロ友の皆様、本年も大変お世話になりました。

このブログを始めたのが2006年の12/30。そしてそこから、なんとなく断続的に書き続けて10年という歳月が経ちました。

ネットという限定的な環境下ではありますが、様々な人々と知り合うことが出来、色々なご意見をうかがえるという体験は非常に貴重なものでした。生活に張りと潤い、時には怒りや悲しみなども与えてくれましたが、それらはすべて自分自身の成長の肥やしになったと考えております。おかげさまで、今後の人生にも一つの大きな指針を与えていただきました。

今後も日々の下らない雑事をつらつらと書き連ねて行く予定ですので、よろしくおつきあいのほどお願いいたします。

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by lemgmnsc-bara | 2016-12-31 08:30 | 雑談 | Comments(4)

『熊撃ち』を読んだ

熊撃ち (ちくま文庫)

吉村 昭/筑摩書房

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昭和、大正といった現代に限りなく近い時代の出来事に題材を取った作品の多い吉村昭氏の、実在の猟師と実際の事件にもとづいた短編小説集。8人の熊撃ち名人たちが登場し、七つの事件が描かれます。

近年、熊と人間が遭遇し、人間が殺傷される事件が増えていますね。天候不順によりエサが不足している、人間の恐さをしらない世代が成獣に達する年回りとなった、等々さまざまに原因は挙げられますが、根本には、かつては棲み分けが出来ていた境界線を人間が越えてしまい、従来は熊のテリトリーだった地域までその活動領域を広げてしまったことにあると思います。熊にしてみれば、自分の領分に入って来た人間を迎撃し、ついでに食糧にしているだけ。本当は人間の方が人間の方が遠慮しなければいけないオハナシなのかもしれません。

この本に取り上げられた事件は昭和初期、特に北海道などで人間が盛んに未開の土地、すなわち熊の生息域を侵略していた時期でした。人間に生息域を侵された熊たちは文字通り人間に牙を剥き、不用意に山に立ち入った人間を食い殺します。そこで熊たちの駆除に呼び出されるのが「名人」たち。

本来ならば、平和的に共存してゆくべき存在の命を奪って、肉や毛皮、内臓などをとって生計をたてている名人たちは、命を奪うことへの後ろめたさからか、みな一様にストイック。無闇矢鱈と熊を駆除するのではなく、人を食い殺した、あるいは今後食い殺す可能性が高い場合に限ってのみ仕方なく撃ち殺すのです。

名人たちはたいてい一人で行動することを好みます。不慣れな人間はいつパニックを起こして狩りの妨げとなるかわかったものではないということもあると思いますが、人間の勝手な理屈で殺されてしまう熊たちに対し、一対一での戦いを挑み、なるべく苦しませないよう一発で仕留めることでせめてもの償いとしようとする心象が伺えます。人間とはなんと罪深い存在なのでしょうか。などと柄にもなく殊勝なことを考えてしまいました。

いくつかのストーリーをうまくつなぎ直せば、レオ様の『レヴェナント』をしのぐような熊との戦闘が描ける映画となるのではないか、とストーリーに全く関係ないことも思い浮かびました。

なお、この作品集のための取材から派生した長編も存在するそうです。こちらも是非読んでみたいですね。


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by lemgmnsc-bara | 2016-12-21 21:12 | 読んだ本 | Comments(0)

10・8―巨人vs.中日史上最高の決戦

鷲田 康/文藝春秋

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公式戦の最終戦で勝率がまったくの同率で、勝ったほうがシーズン優勝というプロ野球史上初の大一番となった1994年10.8の中日-巨人戦に関するドキュメンタリー。スポーツライター鷲田康氏の作品です。この試合、私はテレビ桟敷で観戦してましたが、事前からマスコミにあおるだけにあおられたせいもあって、相当に興奮しながら観ていた覚えがあります。

夏前までの楽勝ムードから泥沼の連敗を経てこの日にたどり着いた巨人と、シーズン終了前に早々と高木監督の解任を発表していながら、終盤に一気の連勝で瞬く間に頂上の一歩手前まで上り詰めてきた中日。事前の予想では明らかに後者の方に勢いを感じました。しかも当日の先発は巨人キラーの名をほしいままにしている今中投手。巨人は先発の槙原を始め、斉藤、桑田の三本柱をすべて投入する、と試合前からぶち上げていましたが、いかにいい投手をつぎ込んでも、打って点をとらなきゃしょうがないしなぁ…ってのが試合前の私の個人的な不安でした。 しかし、その不安は二回にでた四番落合のソロホームランで一気に吹っ飛びました。打つべき人がきっちりと仕事をして先制点を取る…。大体において巨人は先行逃げ切りという展開で力を発揮するチームなんです。先発投手のイキがいいうちに、打線がしっかりと点を取って、後は磐石の中継ぎ、クローザーへとつなげて逃げ切る。まずはこの勝ちパターンに一歩近づいた。どうにかこのまま行ってくれ、という当時の心境は今でもかなりリアルに思い出すことができます。

この後、各イニングに関して、どちらかのチームから一人「主人公」が選ばれて、その選手の過去-10.8-その後まで、かなり詳細な物語が語られます。落合の負傷退場、桑田のひじの怪我、立浪の左肩脱臼、斉藤の脚の怪我等々。特にこの中では立浪の左肩脱臼あ印象に残っていますね。非常にスマートで泥臭さを感じさせない立浪選手が、一塁にヘッドスライディングし、セーフにはなったものの、左肩を脱臼。後に前年までチームメイトであった落合氏が「あいつはあんなことをやるやつじゃなかったのに、怪我までしてセーフになろうとした。あの姿をみて中日の必死さを感じた」という主旨の発言をしたと記憶しています。

結果としては巨人が勝ってセリーグ優勝。勢いに乗って、西鉄ライオンズ時代からの仇敵であり、当時は「球界の盟主」の座をあらそっていた西武ライオンズをも破って日本一となります。この本の中で、鷲田氏はさまざまな方法で祝祭的な異次元を演出した長嶋茂雄氏に率いられた巨人が、あくまでも普段どおりの野球をやろうとした中日に勝ったと述べています。こと、「この一戦」に際して、いかに選手の力を引き出すか、に関しては長嶋氏の方が一枚上手だったといわざるを得ません。もっとも高木氏が長嶋氏と同じ事をやろうとしてもうまくいかなかったとは思いますがね。この辺の違いがスターと野球職人の違いなのでしょう。どっちがいいとか悪いとかではなく、あくまでも方向性の違いなのですが、10.8の決戦時に関しては、スターのかもし出す非日常が日常を飲み込んでしまったというわけです。

読み終えて、当時の興奮を思い出すとともに、すでにあれから22年もの月日が流れてしまったことに思い至り、感慨にふけってしまいました。その間、日本プロ野球もずいぶん変わってしまいました。そういう意味ではあの一戦は最後の奇跡だったのかもしれませんね。

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by lemgmnsc-bara | 2016-12-21 19:54 | 読んだ本 | Comments(2)

マイケル・ムーアの世界侵略のススメ [DVD]

マイケル・ムーア/ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

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「マイケル・ムーア監督じゃねーよ!!」という近藤春菜のお約束ツッコミでおなじみのマイケル・ムーア氏の今のところの最新作。出演しているのはほぼ監督ご本人だけで、あとはズブの素人のみが登場するドキュメンタリーです。

監督は欧州各国を巡って、アメリカとは大違いの政策を見つけ出し、その関係者へのインタビューを試み、最後はインタビューした場所へ星条旗を押し立てて「侵略」の証とします。ひたすらこの繰り返しですが、それぞれの国で取り上げられるトピックスがいちいち興味深い。

まずはイタリア。この国の労働者は毎年二ヶ月以上の有給休暇が貰えます。このことはアメリカよりむしろ日本に響くオハナシではないでしょうか?毎日毎日朝早くから夜遅くまでオフィスに縛り付けられて、土日の休みもろくろく取れない。労働は善で、休みは悪というのが日本人の基本的な心象。つい最近電通の若手女性社員の過労自殺が大きな話題となりましたが、あれはホンの一例に過ぎず、似たような状況下で心身をむしばまれていく人々は数多いると思います。しっかりと休みを取って人生を楽しみつつ、やる時にはやるイタリア人と、ちょっと長く休むと罪悪感に苛まれる日本人。さて、あなたならどちらの国に暮らしたいですか?という問いは明示されませんが確実に心の中に入り込んできます。

お次ぎはフランスの学校給食。専門の料理人が腕によりをかけて作ったメニューと、大量生産された「工業製品」をただ温めただけのアメリカの給食。前者の豪華さを見せつけられた後では、後者は家畜のエサ程度にしか見えません。人工甘味料に添加物の塊のようなコカ・コーラ(これもアメリカの象徴の一つですね)を勧められたフランスの小学生は一口飲んだだけですぐに監督に返してしまいます。食材の美味さを充分に引き出した料理と、ただカロリーを摂取するためだけの「製品」、さてどちらをあなたは食べたいですか?どちらを自分の子供に食べさせたいですか?これも心に深く刺さる問いです。

その他、大学教育が無料なスロベニアに殺人犯までが、清潔な環境でのびのびと過ごせるスエーデンの刑務所など、それぞれをアメリカの現状と比べることで「どちらが良いか?」という問いを観るものに投げかけるつくりとなっています。

答えはいわずもがなでしょう。しかし、核の抑止のために核兵器を持つのが「常識」であるアメリカの指導者たちにはおそらくアメリカの現状を変える気はさらさらないでしょう。かくして、この作品は監督お得意の壮大な皮肉と、権力へのおちょくりになるのです。なかなかの佳作でした。



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by lemgmnsc-bara | 2016-12-18 08:04 | エンターテインメント | Comments(0)

赤目四十八瀧心中未遂 (文春文庫)

車谷 長吉/文藝春秋

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この本を原作とした映画が各種の賞を受賞したことで、ずっと気になっていた一冊。本屋で見かけて衝動買いしてからずいぶん長い間の積ん読山での熟成を経て、ようやく読み終えました。ちなみに映画はまだ観ていません。

主人公生島与一(おおっ、与一!!!感情移入しやすい 笑)は大学卒業後広告代理店に勤めていましたが、勤務を続けて「中流の幸せ」を手にすることが、果たして本当に幸せになることなのだろうか?という深淵かつ青臭い疑問を消し去ることが出来ずに、安定していた生活を捨てます。そして住んでいた東京を離れ、チンピラや年のいった売春婦たちの吹きだまりのような尼崎の片隅で、焼き鳥屋の下働きで口を糊する日々に入ります。

こういう生活への衝動は私にもよく起こります。ただ私には最高権力者様という世間とガッチリつながったヒモがついておりますので、簡単に逃げることは出来ないし、なんだかんだで、食うにも事欠くような経済的な苦しさや惨めさを味わったことがないため、本当に貧しい境遇に落ちてしまった時に耐えきる自信もないので、実行しないだけです。会社の仕事からはちょいちょい逃げてますがね(笑)。

自分の夢や理想からはほど遠いものの、生きていくためにはカネが必要で、カネを得るためには働かざるを得ない…、こう考えただけでも気分は暗く、重苦しくなります。そして物語に重苦しさを増量してくれるのが周りの登場人物たち。刺青師の彫眉に、その子供の晋平、死んだ豚や鳥を捌く焼き鳥屋の女将セイ子ねえさん、そして出自が半島であることを隠しながら生きているアヤ子。どの人物にも、様々な社会の歪みが背負わされています。

中でもアヤ子。彼女は与一のファム・ファタールとして与一をより深い闇の中へと引きずり込んでいきます。そして最後には「一緒に死んで欲しい」と願うのです。結末は題名に表れていますが、与一は精神的には限りなく死に近い状態に追い込まれることになります。

この作品は映画のみならず、文章の方でも直木賞を受賞しています。人間の心がいかに移ろいやすく弱いものか、反面いかにしぶとくてしたたかであるかがよく描かれた一作であったように思います。



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by lemgmnsc-bara | 2016-12-18 07:13 | 読んだ本 | Comments(0)

拝み屋怪談 禁忌を書く (角川ホラー文庫)

郷内 心瞳/KADOKAWA/角川書店

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宮城県で、拝み屋として日々怪しいモノや怪しい人々と関わり続けている郷内心瞳氏によるエピソード集。

私の中で「拝み屋」と言えば、まずは『孔雀王』の主人公、孔雀がイメージされるのですが、実際の拝み屋さんたちには孔雀のような超絶的な法力があるわけではありません。ただ、普通の人よりは怪しさに関する感度が高く、かつそうした怪しいモノたちを追い払うテクニックをいくつか身につけている存在として定義されています。

私は宮城県に数年間住んでいたことがあるのですが、彼の地に拝み屋が実在していたとは知りませんでした。まあ、実際の効果効能はともかく、民間信仰という文化の一部として、こういう存在がいたとしてもおかしくはありません。これは日本全国どこに行っても同じことだと思います。大学の社会心理学の授業で、シャーマニズムを研究していた教授から、こうした拝み屋の現存する具体例として沖縄県のユタについてのオハナシを聴いたことはあります。教授曰く、「沖縄では例えば子供が病気に罹った場合に、医者に行くことと並行して、ユタにその病いの原因を探ってもらうことが一般的だ」とのこと。一つの事象の原因を、科学的な手法と、非科学的な手法の両方からアプローチする。日本の「原風景」である農村が消滅しない限りは、こうした一見矛盾した心象が消え去ることはないだろうと思われます。自然に限りなく近い環境下では、予測のつかない出来事に対しての理屈は「神」を始めとする超常的な存在でないとつけられないでしょうから…。

さて、先にも述べた通り、この本はエピソード集ですので、郷内氏が実際に関わった人物や事象が生々しく描かれています。中でも一番印象的だったのが、一人の女性のオハナシ。彼女はずっと「引きこもり」でしたが、ある時「神が自分の中に入って来た」と自覚するようになり、しかもその神がどんどん暴走していくのです。そこで郷内氏が下した解決法とは?

このオハナシ、私は自分自身のことを振り返って大いに反省させられました。モノゴトは結局自分がどう考え、どう行動するかで決まるのです。自分以外のモノのせいにしているうちは絶対に事態は好転に向かいません。こうした事に気づかせてもらうだけでも拝んでもらう価値はあるのかもしれません。少なくとも私はこの一冊から実際に拝んでもらうのと同等の救いを貰えたと考えています。




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by lemgmnsc-bara | 2016-12-10 18:54 | 読んだ本 | Comments(0)

陰陽師 蒼猴ノ巻 (文春文庫)

夢枕 獏/文藝春秋

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安倍晴明と源博雅のコンビの活躍を描く『陰陽師シリーズ』の最新文庫化作。いつも通りに二人の活躍を描くものの中に、ここのところとみに「いい人」感が増している蘆屋道満の活躍を描くものも一編含まれています。

オハナシの展開はいつも通り。博雅と清明が式神の蜜虫をサーバントに、ゆるゆると酒を飲みながら、とある怪異について語り合う、あるいはその酒盛りの場に誰かが飛び込んで来るというところからストーリーが始まります。題材的にはおどろおどろしい物怪だったり、生身の人間のドロドロとした怨恨が由来の怪しげな出来事だったりするのですが、このシリーズの特色として、常に物語はゆるゆると流れていきます。ある種の無常観というか諦念というか、そんなものがこのシリーズの底辺に流れているような気がしますね。

問題の解決を依頼して来た人物が必ずしも救われない、というのも特色の一つです。最終的には問題を起こした側に報いが訪れる、という結末となります。

表題にもなっている『蒼猴』は琵琶湖を舞台とした物怪と神の恋物語。泣沢女神と弁才天の逢瀬を、弁才天に横恋慕している青猿が邪魔するというオハナシです。その方法は琵琶湖にいる巨大なガマガエルに霧を吐かせて泣沢女神のもとへ通う、湖上の水路を見えなくしてしまうという、いかにもおどろおどろしいもの。泣沢女神はその名の示す通り女神だし、弁才天も女神のはずですからレズビアンのカップルの片一方に横恋慕しているオスの青猿がガマカエルに霧を吐かせているという訳です。考えるだに生臭い霧が漂ってくるような気がします。筆致はあくまでも淡々としているのですが、イカの塩辛の樽の中にアタマから飛び込んでしまったかのような、生臭さを感じさせる霧ですね。

まだまだ続きそうなこのシリーズ。映像化された作品では清明を稲垣吾郎氏と野村萬斎氏が演じましたが、誰か新しい人物に演じてもらって映像の方でも新シリーズを作っていただきたいものですね。

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by lemgmnsc-bara | 2016-12-10 06:48 | 読んだ本 | Comments(0)

超高速! 参勤交代 [DVD]

佐々木蔵之介,深田恭子,伊原剛志,寺脇康文,上地雄輔/松竹

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日本の時代劇としては久々のヒットとなったのが標題の作。

話の舞台は徳川吉宗治世下の江戸時代。主人公は石高1万五千石という小藩、湯長谷藩の藩主、内藤政醇(佐々木蔵之介)。映画の中のキャラクターがどこまで実像に近いのかは定かではありませんが、一応実在した人物のようです。ちょっとググって調べてみたら31歳という若さで早世したとも書かれていました。

さて、湯長谷藩には金山がありました。そこでその金山を乗っ取って私腹を肥やそうとする老中、松平信祝(陣内孝則)が藩の取り潰しを狙い、その罪状作りのために60里という道のりを五日間のうちに移動して江戸城に登城せよという無茶苦茶な命令を下します。

取り潰し回避のために湯長谷藩家老の相馬(西村雅彦)は街道筋ではなく、山また山の間道を通ることを選択。そこでその話を屋根裏に潜んで聴いていた戸隠流の忍者雲隠段蔵(伊原剛志)が登場し、山道の「ガイド」を買って出ます。

さあ、あとは襲いかかって来る様々な困難をクリアして、いかに刻限までに江戸城に登城するかの描写が続きます。

途中、宿場町の飯盛り女お咲と政醇とのラブロマンスがあったり、大名行列らしく取り繕おうとして道中で雇った中間たちの逃亡があったりなどのエピソードを挟みながら、一行は江戸を目指します。このあたりはコメディタッチなのですが、江戸城近くなり、信祝配下の忍者集団との戦闘シーンはかなり迫力がありました。途中、いかにも「ワイヤー使ってます」みたいなミエミエの跳躍シーンが挟まってしまったのが少々残念ではありましたがね…、まあ、これは重箱の隅つつき。気合いの入った殺陣の連続でした。

主演の佐々木蔵之介を始め、深田恭子、寺脇康文、上地雄輔、六角精児にジャニーズ一派の知念侑李まで、人気者が多数出演していたというのもヒットの一因でしょうが、それ以上にストーリーが濃かったように思います。特にどちらかといえばなよっとしていて、今までは優男役の多かった佐々木蔵之介の殺陣のシーンの迫力には、彼の新しい一面を観た気がしました。それだけ演出も凝っていたということなのでしょう。思わぬ拾い物でした。





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by lemgmnsc-bara | 2016-12-03 05:54 | エンターテインメント | Comments(0)

ヘイル,シーザー! ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]

ジョシュ・ブローリン,ジョージ・クルーニー,アルデン・エーレンライク,レイフ・ファインズ,ジョナ・ヒル/NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン

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ハリウッド屈指のヒットメーカー、コーエン兄弟の監督作品。ハリウッドを舞台に1950年代の映画業界の内幕を描いたコメディーです。

映画会社のプロデューサーという立場で、様々なモメ事に対処するエディ(ジョシュ・ブローリン)が主人公。エディが立ち向かうトラブルの一つ一つが当時のハリウッドの状況をパロディとして描き出している、という手法です。

一番の「からかいポイント」は、当時吹き荒れた「赤狩り」なんでしょうね。TVに押され、栄光の日々に暗雲が立ちこめ始めていた時代。エディの所属する映画会社は起死回生の策として大物俳優のベアードをフューチャーした大作映画『ヘイル・シーザー』の制作に取りかかっています。その撮影の最中にベアードが突然行方不明に…。彼は映画界から締め出された共産主義者たちに誘拐されたのでした。シーザー役の扮装のまま共産主義者たちから資本主義の矛盾点を次々と指摘され、洗脳されていくベアードの姿が哀れでおかしい。ゲラゲラ笑ではなく、インテリジェンスをくすぐるクスクス笑い誘う展開です。

またこの「クスクス笑い」には「神」の描き方に対する、各宗派の対立を描く際にも誘われます。ユダヤ教にカソリックにプロテスタントに東方正教会。当時のアメリカにおけるメジャーな4つの宗派が、それぞれの教義にしたがって「イエスは神の子だ」「いや神に子などいない」「そもそも神の姿など描けるものではない」という議論をくりひろげ、いつまで経っても結論が出ない。この争いは現在のアメリカにまで色濃く影響していますね。むしろ、今はここにイスラム教までが加わって、事態はより一層複雑化しているように思えます。日本ではちょっと想像出来ない争いですね。

その他、俳優同士の惚れたはれたに群がる芸能マスコミに、素のキャラクターでは訛りが酷くて洗練されたジェントルマンとはとても言えない人物が、人気者であるというだけで主役を務めるという、ハリウッドならではの力学が巧く描写されています。こちらはクスクスというよりはゲラゲラ笑を誘います。

コーエン兄弟の作品というのは観る者にそれなりの教養を求めますね。たぶん、私の知識の及ばない部分に、アメリカ人ならばもっと笑えるシーンがあったのだと思います。ただ笑っているわけにはいかないな、と感じさせてくれる作品でした。



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by lemgmnsc-bara | 2016-12-02 05:27 | エンターテインメント | Comments(0)