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『デッドプール』鑑賞

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ライアン・レイノルズ,モリーナ・バッカリン,エド・スクライン,T・J・ミラー,ジーナ・カラーノ/20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

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マーベルコミックが原作の『X-Men』シリーズのスピンオフ作品。いわゆる「優等生」で、人類の平和のために戦うヒーローではなく、あくまでも自分の復讐を果たすために戦い、行動も言動もエロ・グロ・ナンセンスに満ちたアンチヒーローが主人公です。

主人公ウェイドは傭兵上がり。私立探偵というか、ボディーガードというか、一応依頼者の安全のために働くものの、明らかに「カタギ」ではない人物、という設定です。やがて、恋人ヴァネッサと巡り会ったウェイドはし幸せな日々を過ごすのですが、ある日、全身をガンに冒されていることが判明します。

そしてそのガンを克服するために投与されたクスリによりミュータントとしての能力をも得るのですが、副作用で非常に醜い外見となってしまいます。また、クスリの効果を上げるためには投与された人物に非常なる苦痛を与える必要があるため、投与に関わった技術者であるフランシスは、ありとあらゆると言って良い方法でウェイドを痛めつけます。

で、このことで怒り心頭に発したウェイドがフランシスに復讐するために、群がりでてくる敵を打ち倒し続ける、というだけのストーリーです。

普通に考えると、勧善懲悪的なストーリーなのですが、主人公ウェイドは常に汚い言葉をまき散らし、戦闘方法もグロテスクなアンチヒーロー的な性格を付与されているので清々しい展開とはなりません。

悪罵、わいせつ語、ブラックジョークが飛び交い、血や肉片が飛び散るスプラッターな展開は「良識ある人々」の眉をひそめさせるには十分な効果があります。で、R指定というわけです。

ジョークの中に、笑えるものが結構混じっていたのは評価して良いポイントだと思います。冒頭部分のネームロール的な言葉の端々や、ヴァネッサに醜くなってしまった素顔をさらす直前のギャグ等々。特に後者は単純ながらなかなか強力な仕掛けだったと思います。

ヒーローモノとしてはともかく、『X-Men』シリーズのパロディー作品としてはなかなか面白い作品だったとは思います。ネタ不足のハリウッドとしては無理矢理シリーズ化されそうな気もしますが、仮に作られるなら、よりパワーアップした内容になって欲しいものです。



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by lemgmnsc-bara | 2016-11-26 11:53 | エンターテインメント | Comments(0)

『永遠のディーバ:君たちに明日はない4』を読んだ

永遠のディーバ: 君たちに明日はない4 (新潮文庫)

垣根 涼介/新潮社

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出ると買い作家の一人、垣根涼介氏の人気作『君たちに明日はない』シリーズの第四弾。リストラ請負人村上真介が四つの事案に臨んでいます。

今巻はこのシリーズの中では最高傑作なのではないかと思います(第五弾の『迷子の王子』はまだ読んでませんし、今後のシリーズ展開ではもっといい作品が出て来る可能性も多々ありますが…)。

第一話の『勝ち逃げの女王』は元々単行本で出版された際のタイトル。事案は航空会社のCAの逆リストラ。つまり今までとは逆に、やめたいと言っている人間を引き止めようとするストーリーです。相手は年収の高い旦那を持ち、自宅も買い、二人の子供がそろそろ受験の時期を迎えるベテランのCA。子供のことだけを考えてもいい状況である上、仮に辞めても食うに困ることはなさそうだという「好条件」付き、しかも本人はこれ以上会社に残っても、地位も賃金も上がることはないことが見えている…。さて、真介はこの難敵にどう立ち向かうのか?答えは題名に出ています。会社に入って自分がやりたいと思ったことをやり遂げたら、あとはさっさと次の目標に向かう。確かに勝ち逃げです。本物の「実力」があるからこそ「勝って」逃げられるのだということもしっかり書いてありましたけどね。

真介の上司である社長の過去が明らかになる二作目もなかなかの出来映え。社長がかつて自らリストラした、大手証券会社の管理職と酒を酌み交わす中で語られた、二人の人生と社長との交錯点。男は黙って家族のために働き、無駄な心配をかけない。「真面目」に生きることの素晴らしさとシンドさが見事に語られています。地味ではあってもキモチにブレがあったら出来ない生き方です。

そして、文庫化の際に標題作に「昇格」した三作目。このシリーズの中でも最高傑作と言ってよい作品です。

まあ、今の私の状態に色んな意味で示唆を与える作品であったから、という色眼鏡が合ったことも事実ではあるのですが、それでも、誰しもが心の中に持っているであろう「本当に勝負したかったこと」への未練と一つの解決策を見事に描いていた作品だと思いますね。

人間誰しも一度くらいは華々しい場所でスポットライトを浴びるような仕事に就きたいと思ったことがあるはずです。俳優、芸人、プロスポーツ選手…。いつしか壁に突き当たり、その壁を突き破ることが出来ずに夢破れて「平凡な生き方」に落ち着くというのが大半の人々の人生でもあります。では、そこで壁を突き破れる人物と、壁に屈してしまう人物との差はなんなのでしょうか?この問いに関する答えが見事に記されています。詳しくは本文を読んで下さい、としか言いようがありませんが、私自身の「覚悟」には大きな力を与えてくれたように思います。

四作目。生きているのは「今」なのに、常に未来のことばかりを考えている…。これも誰しもが心当たりのあるオハナシでしょう。未来に備えて貯金し、保険をかけ、「名門」とされる教育機関に入るべく努力する。そうやって未来に、それもどちらかと言えば未来の「不安」に対処するための備えに力を使い続けて来た結果、最期の瞬間まで「今」が充実しない。実に深刻なパラドクスですね。

「今」を充実させることが、結果として未来にそなえることにもなる、という生き方を自分はしているのだろうか?とハタと考え込んでしまいました。

さて、このシリーズは冒頭にも書いた通り五巻まで刊行されています。今後の展開も楽しみですし、ぜひとも長く続けて欲しいシリーズです。



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by lemgmnsc-bara | 2016-11-26 11:19 | 読んだ本 | Comments(0)

シニアチーム本格デビュー

ついに本格的にシニアチームにデビューしました。先月出場した試合は上は60代から下は30代までが混じったチームで、いわゆる戦という位置づけでしたが、今回は50代以上が出場する真正のシニアチーム。元々のチームの後輩君から紹介されたほぼ知り合いのいないチームのはずでした。しかし、グラウンドで着替えていたら、いきなり昔の直属上司が登場。絶句してしまいました。

ちなみにこの方は今までこのブログに登場させて罵倒したクソ上司ではなく、非常にいい方です。同じ部署だった時代に、高校時代にラグビー経験があるとは聞いていましたが、まさかこのチームで一緒になるとは…。試合前から思わぬサプライズ。しかもポジションはLO、まさに私の尻を押す位置です。今までは尻を叩かれたことはあっても尻を押されたことはありません(笑)。ますますもって奇遇。世の中広いようで狭い。

そんな感慨はさておき、試合前の練習で、左足の踵にかなりの痛みを感じました。ここ数ヶ月、どうもトレーニングの後に痛むな、とは感じていたので、鍼灸院で治療してはもらっていたのですが、完全には痛みが取れなかった箇所です。この日の痛みは本格的でしたが、ここまで来ておいて試合前に怪我しました、じゃ帰るに帰れません。試合が始まりゃいやでも動くし、痛みもヘッタクレもねーわ!!と思い直して無理矢理出ることにしました。幸いなことに、メンバーは数多くいましたので、後半のみの出場。時間は20分。つい4年前までは80分やってたんですから、楽勝、と思ったんですが、私も4年分歳をとっているわけで、いや、本日に至るまで体中が痛い状況です。昨夜は寝返りを打つのも一苦労でした。

さて、試合は前半1トライ1ゴールを奪ったわがチームがリードして後半突入。おじさんばっかりで走れないだろうと高をくくっていましたが、私のほうがもっと走れませんでした…。ただし、一度はこぼれ球を拾って、一度はサインプレーでボールをもらって、ぶちかましを敢行しました。いや~、久しぶりの快感。思い切りぶち当たった相手が倒れるのを見るのはいいもんです。ラグビーに目覚めた原点を思い出しました。そうそう、この感激こそが私にとってはラグビーの醍醐味の一つなんだよなぁ。帰宅して風呂の中でぶちかましのシーンを思い出してしみじみと感慨に浸ってしまいました。

私が現役を引退したのは、首のヘルニアで整形外科医からドクターストップをもらったことが直接の原因です。で、この日もスクラムはノーコンテスト、つまり押し合いなし、ということで後半は開始したんですが、ちょっとルールが変わり、最初にガツンと首に負担がかかるようなあたりがなくなったので、首は痛くありませんでした。そのため二本目のスクラムからは、レフェリーに申請して押し合い有りに変えてもらいました。体中の骨がきしむような押し合いも4年ぶり。でも相手を圧倒することができました。やっぱり俺の持ち味はスクラムだよなぁ、とここでもまたしみじみ思いました。残念ながら試合は逆転負けしましたが、体の感触を思い出しただけでもガチンコ勝負にした価値があるというものです。試合中はかなり燃えてましたし、試合直後はすがすがしさに満ちてましたね、実際。

で、家に帰って風呂に入って出て、しばらくしてからジワジワと加齢を感じる時間がやって参りました。すなわち体中の痛みです左足踵、首はもとより、あばらにわき腹、両肩、左ひざあたりが特に痛かった。痛むであろうことを見越して現役時代にかかりつけだった整体院を予約してありましたので、早速行きましたが、いや、もまれる場所、もまれる場所痛いこと痛いこと。一夜明けて昨日は、一昨日行ったのとは別に鍼を打ってもらう整骨院に行ったんですが、そこの先生からは「今日はひどいですね」といわれる始末。いつもより多く鍼を打ってもらい、長い時間電気刺激を与えてもらいましたが、今日になってもびっこを引き引き歩いています。心配していた首の痛みはあまり感じませんがね。

少しの反省点と、大いなる喜びを与えてくれた20分間でした。この時間をもっと充実させるためにトレーニングに励まなければ!決意した昨日の夜でしたが、今日もまだ踵が痛くてトレーニングできそうにありません。

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by lemgmnsc-bara | 2016-11-23 06:08 | ラグビー関連 | Comments(0)

『峠越え』を読んだ

峠越え (講談社文庫)

伊東 潤/講談社

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戦国時代に数々の名将あれど、最後に天下を取ったのは徳川家康ですね。いったい家康という人物のどこが優れていたのでしょうか?伊東氏は作品中で、家康の師である太原雪斎の口から「お前は平凡なやつだ」という言葉を語らせて、その性質が凡庸であると定義しています。そしてその凡庸さの証拠として、軍略の天才武田信玄に散々に打ち破られる姿と、「上司」である織田信長にいいように使われる姿を描きます。家康が優れているところといえば、辛抱強いところと、切り所(いわゆる勝負所)をはずさない勘働きの鋭さだけ。もっともこの勝負所を乗り切るに至ったのは多分に幸運に恵まれたが故、という説明もなされています。あとは強いてあげれば個性豊かで、時には君主家康をも叱り飛ばすような部下がいたことくらいでしょうか。

とにもかくにも、姉川の戦いで殿軍を勤めたことを筆頭とする、さまざまな切り所を切り抜け、家康は武将として成長し、自身が率いる徳川軍団もどんどん巨大化していきます。そんな家康に脅威を感じていたのは、他ならぬ織田信長。信長は家康の嫡男信康と正室築地殿に謀反の疑いありとして、処刑することを要求し、家康の助命嘆願をはねつけて処刑させてしまいます。長年同盟を組み、一緒に死地をくぐってきた同志に対してのあまりにもむごい仕打ち。家康はじっと耐えます。そして信長は最後の手段として、家康の暗殺を企て、わずかな手勢しか率いらせずに堺までおびき出します。しかし、ここで家康は「天才」織田信長が思いもよらぬ方法で意趣返しをやってのけてしまうのです。戦国時代最大の謎である「本能寺の変」の一つの可能性が、史実に矛盾することなく、見事に解き明かされています。この展開には「う〜ん、そうきたか」と思わずうならされちゃいました。この着想は少なくとも私には今までなかったものです。

さて、信長の謀略をしのいだ家康ですが、この後には史実でも有名な伊賀越えが待っています。信長による大規模な虐殺を骨髄に感じている伊賀の地侍たちが、信長の盟友である家康を黙って通過させるわけはありません。しかも伊賀は名だたる忍者の里。攻撃してくる男たちはすべてが手練れの忍者ばかりという設定です。ここで実際に峠を越えようとする家康一行の姿と数々の切り所という峠を越えてきた家康の姿をダブルミーニングで表したタイトルが利いてくるというわけです。なかなか凝った作りですね。掛詞そのものはシンプルではありましたが、意味は非常に深いものでした。

余談ながら、この物語には秀吉はまったくと言ってよいほど登場しません。秀吉が家康の前に立ちふさがるのはもう少し先の話ですし、信長という峠が道なき道を切り開いていくような道行きでようやく越えたものであるとするなら、秀吉という峠は、家康が越えようとしたときにはすでに崩れ去って平坦な道になっていたようなものですから、ドラマ性には欠けるのでしょう。読み応えのある一冊でした。

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by lemgmnsc-bara | 2016-11-19 19:53 | 読んだ本 | Comments(2)

『ニッポンぶらり旅 宇和島の鯛めしは生卵入りだった』を読んだ

ニッポンぶらり旅 宇和島の鯛めしは生卵入りだった (集英社文庫)

太田和彦/集英社

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居酒屋探訪家としても名高いグラフィックデザイナー、太田和彦氏による地方都市周遊本。ま、ざっくりと言ってしまえば紙版の『じゅん散歩』または『アド街ック天国』といった趣の本です。氏の肩書きの通り、あくまでも記述の中心は居酒屋なのですが、観光客があまり足を運ばなそうな地域を丹念に歩き、その場所その場所で感じた人情、気候風土などを独特の視点で記しています。美辞麗句が連なっているわけではありませんが、たとえば料理のにおいまでが漂ってくるような「味のある」記述は、一度その土地を訪ねてみたくなるような魅力に満ちています。

その土地に古くから根付いている店に入り、地元の人が日ごろ食べているものを、地元の人とともに味わう…、確かにこれこそが本当は旅の醍醐味のはずなんですよね。そしてそういう店は表通りの派手な地域でけばけばしく営業するよりも、繁華街の外れとか、ぱっと見ではわからないような小さな路地の先なんかで常連さんだけを相手にひっそりとたたずんでいることの方が多い。最近は馬齢をかさねてきたせいか、若いおねーちゃんなんかがいる店よりも、そういう店で地元の魚の干物かなんかを肴に地酒をぬる燗ぐらいでちびちびやる、って風情にあこがれるようになりました。実際、現在行き着けと言ってよい店は大きなビルの谷間でひっそりと朝時から空けている大衆酒場だったりします。

氏の文章の一番の魅力は、料理の味や香りとともに、そこに生きる人の息遣いまでがしっかりと感じられること。さすがは居酒屋探訪家を標榜するだけあって、数々の名店をしっかり押さえているし、一見さんでぶらっと入った店でも、店の人や隣席のお客さんの懐に飛び込んでいって、その人々が持つ物語をしっかり聞きだしています。どんな人の人生にもさまざまな起伏があるもので、そういうお話こそが最高の酒のつまみなのだ、という主張がしっかりと感じられる一冊でした。

読み終えてから気づいたのですが、この本では四国と北陸の町が数多く取り上げられていました。実は当家は二人とも四国と北陸三県に行ったことがありません。北陸新幹線も開通したことだし、今年の夏は金沢にでも行こうか、というプランもあったのですが、最高権力者様のご都合で東北紀行となったため、いけずじまいでした。こんな魅力的な描き方をされたら、ぜひ行きたくなってしまいますね。特に高知県の桂浜にはぜひ行ってみたいと思いました。もちろんカツオのたたきも食いたいですしね。

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by lemgmnsc-bara | 2016-11-12 04:39 | 読んだ本 | Comments(2)

『さよなら、シリアルキラー』を読んだ

さよなら、シリアルキラー (創元推理文庫)

バリー・ライガ/東京創元社

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Kindleのオススメ本コーナーにあったので、ついつい衝動DLしてしまった標題の書。バリー・ライガという作家の作品を読むのは初めてです。

主人公は高校生の男子、ジャズ(ジャスパー)。彼はごく普通の男子高校生なのですが、父親ビリーが特別な「有名人」でした。ビリーは20年以上のもの間、100人以上の人間を殺害したシリアルキラー(連続殺人犯)なのでした。ジャズの住んでいるのはアメリカの片田舎。アメリカには先進的な大都市が存在する一方で、信じられないくらいのド田舎が存在します。「日本からわが町に初めての交換留学生が来た」みたいな記事が地元新聞の一面を飾ってしまうようなド田舎が、です。

さて、そんなド田舎の町に猟奇的な連続殺人事件が勃発します。その手口は十数年前にビリーが起こした事件と同一で、被害者の職業やイニシャルまでが同じという徹底したフォローぶり。そんな事件にジャズは強い興味を持ってしまいます。

ジャズはビリーに殺人及び死体解体の手練手管をしっかりと叩き込まれていたのでした。ビリーはジャズに殺人及び死体解体のテクニックを見せつけることによって、神への祈りなど無力であることや、命の儚さや、人体の物質としてのみにくさなどを「教育」していくのです。そんな教育を受けたジャズは、ビリーの姿を嫌悪しながらも、殺人事件の犯人を追及することには強い興味を持ってしまいます。犯人像を特定するためのプロファイリングは警察の専門家をもしのぐ冴えをみせたりもします。何しろ、幼少時から異常快楽殺人者の姿をつぶさに眺めて来たのですから…。

でも最後の最後、犯人捜査が行き詰まった時に、保安官の要請で、ジャズはビリーにプロファイリングに関しての助言を受けに行きます。捜査に首を突っ込んだ人間が、「実績」のある殺人犯に教えを乞う…、『羊たちの沈黙』そのまんまのストーリーじゃねーの、これ?しかもビリーは後にわずかな警備の隙をついて刑務所を脱走しています。ますますもってハンニバル・レクター博士そのものじゃん。そんなサイドストーリーを交えながら、ジャズと保安官は犯人の姿を追い求めてゆきます。果たして犯人の正体は?ジャズ達は犯人を捕らえることが出来るのか?この作品はミステリーでもありますので、結末についてはぜひとも本文をお読み下さい。

巻末に翻訳者の解説がありましたが、この作品はミステリーである以上に一人の青年が少年から男に変わる時代の苦悩を描いた「青春小説」であると記しています。私もこの見解には賛成です。犯人探し云々よりも、「自分は一体どこから来て、どこに行こうとしているのか?」という青年期に特有な悩みの描写の方に、より惹かれてしまいます。ジャズの場合はたまたま父親が連続殺人犯という常識からはかけ離れた存在であり、父親がジャズに施した教育が異常だったために、より鮮明に、先鋭的に悩みが描かれるのですが、子供にとって最も身近な存在である親から、生活の様々な場面で受けて来た影響というのは、良きにつけ悪しきにつけその人間の一生に多大な影響を及ぼす、ということを改めて考えざるを得ません。自分が親から「常識」として教わったことが、世間の常識からすれば異常なことなのか否かは、自分が社会に参加して初めてわかることです。そうした葛藤を実に見事にエッセンスとして読ませてくれた功績のほうが、なるほど、ミステリーとしての面白さよりも大きいような気がします。

この作品には後に続くものが二作あるそうです。ビリーはこの作品の終結時点では脱獄後に早速一件の殺人を犯した後、行方知れずとなっています。ますますもって、『羊たち〜』シリーズそのままですね。折を見て続編も読んでみたいと思います。



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by lemgmnsc-bara | 2016-11-08 05:43 | 読んだ本 | Comments(0)