『プロ野球・二軍の謎』を読んだ

プロ野球・二軍の謎 (幻冬舎新書)

田口 壮/幻冬舎

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昨シーズンは、ファーム、交流戦、シーズンとすべて最下位という「完全最下位(史上初の怪挙…)」を達成してしまったオリックスバファローズ。毎年外国人選手には大枚をはたくし、T−岡田という和製大砲はいるし、中継ぎ、抑えの勝利の方程式もそれなりに整っているのに、何故か勝てずに低迷期に突入しています。今シーズンはいきなり5連勝するなど、好調な滑り出しですが「いつ、この勢いが止まってしまうんだろう」という不安を常に感じさせているのが、この球団の特色ですね。

このオリックスというチームが最高に輝いていたのはブルーウエーブというニックネームだった1990年代半ば頃。イチローが大ブレークして打線を引っ張り、投手のコマも豊富だったところに名将の仰木彬氏が監督に就任し、二年連続してシーズン優勝。二年目の優勝時は阪急ブレーブス時代からの宿敵巨人を破って日本一にも輝いています。

本書の著者であり、現在オリックスバファローズの二軍監督でもある田口壮氏はこの黄金時代に堂々たる主力選手として活躍していました。そしてその時代の実績を引っさげてMLBへと打って出た田口氏は、貴重なバイプレーヤーとしての存在感を醸し出し、日本人としては初となるワールドシリーズ制覇を含め、二度のアメリカNo.1に輝いています。

数々の輝かしい実績はさすがにドラフト1位指名を受けた期待の選手だ、と言いたいところですが、氏の選手生活は必ずしも順調なモノではありませんでした。打撃と走塁には長けていたのですが、遊撃手としての守備、特に送球がメタメタで、一時はゴロを捕った後、一塁への送球ができない「イップス」という状況になったこともあったそうです。ちなみにこの「イップス」って言葉が一般化したのも田口氏の「功績」の一つだと思いますね。それほど深刻な問題でした。この症状が重症であったが故に外野手へとコンバートされ、結果的にはこのコンバートは奏功するのですが、田口氏には未だにショートというポジションに対してのこだわりがあるそうです。

また、渡米後は一軍半的な存在で、メジャーとマイナーを行ったり来たりした期間が長かったようですね。そしてこのアメリカのマイナーを経験したことが、この本を書く大きなモチベーションともなったようです。

氏の記述によれば、共に新戦力を見いだすことと、主力選手に調整をさせることが主目的の組織ながら、日米の二軍はまったく対照的です。

日本の場合は二軍であっても基本的には球団がすべて衣食住を提供してくれた上で、野球に打ち込める環境を作ってくれますし、よほどのことがない限り、いきなり契約を打ち切られることはありませんが、米はマイナーだと衣食住すべてを自分が確保しなければならないし、能力がないとみなされれば、今この瞬間に契約打ち切りになるということも珍しくないそうです。

各人が持ちうる文化的背景が比較的均一に近い日本と、人種のるつぼと言われ、人種も言語も宗教も全く異なる人々の集まりである米との文化的な相違が感じられるオハナシですね。

どちらの方法が良いのかは一朝一夕で結論の出せるオハナシではありませんが、米のような、文字通りのハングリーさを乗り越えた選手の方が「緊迫した場面」でのプレッシャーには強そうな気はしますね。

さて、彼我の相違を知る田口氏は、現在の与件の中でどうやって「一軍に奉仕する」組織である二軍を率いていくのか?

オリックスの二軍はウエスタンリーグに所属しており、西日本が活動の場となるため、関東在住の身としてはなかなかその動静が詳しくは伝わってきません。結局は一軍に新しい選手をどれだけ送り出したかで判断するしかないのですが、T−岡田のような「大化け」した選手を一人でも多く一軍に送り込んで欲しいな、とは思います。



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# by lemgmnsc-bara | 2017-04-09 17:56 | 読んだ本 | Comments(0)

『ア・ホーマンス』鑑賞

ア・ホーマンス [DVD]

松田優作,石橋凌,手塚理美,ポール牧,阿木燿子/TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)

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故松田優作氏の初監督作品。新宿を舞台に、ヤクザ同士の抗争とそこに関わる謎の男の姿を描いています。

松田優作演じるのは、主人公「風(ふう)」。彼は記憶をなくしているという設定で、バイクに乗って新宿にやって来て、浮浪者のたまり場近くに住みつきます。独特の威圧感を持つ彼の周りには、その威を借りようとする浮浪者たちが恐々近寄ってきますが、彼はまったく相手にしません。やがて、新宿を拠点とする大島組のヤクザ山崎にその威圧感を見込まれ、組の経営するデートクラブのボーイとしての職を得ることとなります。

そんな折、大島組の組長が、対立する旭会のヒットマンに襲撃され死亡するという事件が起きます。この辺は、映画公開当時世間を賑わしていた、巨大暴力団同士の扮装を彷彿とさせます。また、当時の新宿は、そんな血なまぐさい事件が勃発してもおかしくないような危うさが漂ってもいました。親分さんたちが派手にカネをばら撒いて遊んでたりもしましたね。特に夜の歌舞伎町は賑わいとともに、その裏の闇の濃さを濃厚に感じさせてくれる場でもありました。その辺の雰囲気はよく出ていたように思います。

親を殺されたら、そのカタキは自分の命に代えても討たなきゃならないのがヤクザの世界。しかし、大島組の「後継者」藤井(故ポール牧師匠が、コミカルな中にも残虐さと冷徹さを併せ持つインテリヤクザを怪演しています!)は相手のトップではなくナンバー2の副会長への報復を指示。どうやら藤井は裏で旭会とつるんで表向きは共存共栄を目指す方針のようです。この藤井の方針に納得いかないのが山崎。彼は単身で旭会会長の命を狙います。そしてそこに風は助太刀として参戦するのですが…。というところで久しぶりの逃げ口上。この先は本編をご覧ください。

全体に、不思議な緊張感の漂う作品でした。今にも大爆発しそうな予感があるのに、決して爆発しない。俗に言う「嵐の前の静けさ」ってやつがずーっと続きます。それこそ本当に最後まで。結局観る側の期待も予測もすべて裏切る結末が待ち受けているんですが、一言で言えば拍子抜け。あれだけ引っ張った緊張感はナンだったんだ?という感想を持つしかない結末です。アクターとしての松田優作に求められていた「雰囲気」はたっぷり味わえたものの、作品としては欲求不満の残る不思議な一作でした。

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# by lemgmnsc-bara | 2017-04-07 20:19 | エンターテインメント | Comments(0)

『本当は間違いばかりの「戦国史の常識」』を読んだ

本当は間違いばかりの「戦国史の常識」 (SB新書)

八幡 和郎/SBクリエイティブ

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歴史学者八幡和郎氏による、戦国時代の解説書。

私は八幡氏の著作を読むのは初めてですが、様々な時代の様々な地域の出来事について、新しい考え方を提示し、今までの定説(いわゆる教科書に載っている「史実」)を覆すことを自らの使命としている方のようです。

この本のターゲットは題名通り、日本の「戦国時代」。日本という国が大きく変わった時代であり、世の抑圧された皆様が「俺があの武将だったら…」という仮説を好きなだけ飛翔させることのできるエピソードに満ちた時代でもあります。

氏は、現在の定説は、徳川の治世を正統化したいが故にかなり偏った見方をしていると喝破しています。すなわち、それまで戦乱に明け暮れていた日本を最終的に平定した徳川家こそが正義であり、それ以前の反徳川勢力(反織田の勢力も含む)はすべて悪で立ち遅れた存在だったという論調で語られる学説です。

最後の最後に徳川家の前に立ちふさがった豊臣家などは最も悪く描かれています。秀吉は死の間際に狂ってしまい、夢か現かはっきりしない意識状態のまま、勝算などないに等しかった朝鮮出兵に及んだ、とか戦を理解していない淀君とその取り巻きの文官たちが余計な口出しをしたため、真田幸村を筆頭とする優秀な武将を無駄死にさせたとか…。

もちろん、今までの定説にもそれなりの根拠に基づいたものであることは事実なのでしょう。しかしその説と、そこから派生したエンターテインメント作品が広く流布されたことで、徳川にはポジティブさが、それ以外の勢力にはネガティブさが必要以上に付与されてしまったというのもまた事実です。

それぞれの事柄についての定説と、八幡氏の見解の相違についてはぜひとも本文をお読み下さい。一つだけ印象に残ったのは、織田・徳川と武田の二つの大きな戦いを巡る見解です。この二つの戦いとは、徳川軍が大敗し、逃げる家康が馬上で恐怖のあまり脱糞したというエピソードで有名な三方ヶ原の戦いと、当時としては最新の武器である鉄砲と三段構えという斬新な戦法で武田の騎馬軍を織徳連合軍が散々に打ち破った長篠の戦いです。前者は脆弱な三河武士が武田の精強な騎馬武者軍団に蹂躙されたというイメージで、後者は旧態依然の武田軍に対し、織徳連合は最新兵器を用いて大勝したというストーリーですね。確か学校でもそう習った気がします(笑)。八幡氏はこの二つの戦いは単純に兵数の多い方が勝っただけ、という味も素っ気もない説を開陳しています。三方原では武田軍二万五千に対し、織徳側は一万一千、長篠では同一万五千に対し三万五千。血湧き肉踊る戦国物語ではなく、冷徹な現実ってやつです。実社会の経験からは冷徹な現実のほうが強いと学びましたね(泣)。戦国シュミレーションもののゲームだって、武将の才能より兵力のデカい方が強いんですから…。

俗に「歴史を学ぶことの一つの価値は、過去を研究することでその過ちを分析し、同じ間違いを繰り返さない方策をたてることだ」などと言いますが、事象の見方をまるっきりひっくり返されるような説を次々と出されると、なにを基準に考えればいいのか、よくわからなくなってしまいますね。

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# by lemgmnsc-bara | 2017-04-01 07:36 | 読んだ本 | Comments(0)

『創価学会』を読んだ

創価学会 (新潮新書)

島田 裕巳/新潮社

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いまや連立与党の片翼として、政府の意思決定に深く関与しているのが公明党。その支持母体となっているのが、いろんな意味で有名な創価学会。衆議院で圧倒的多数を占める自民党ですが、各選挙区における創価学会の選挙協力なしには成立し得ない議席数だそうです。日本で一番政治力のある宗教団体と言ってもよい同会についてその発生から、現在に至るまでの歴史を概観しているのが宗教学者島田裕巳氏による標題の書。

島田氏がこの書で語るところによれば、創価学会の基本的な教義は現世利益の実現です。信者は自らが深く信仰することもさることながら、新しい信者をより多く獲得することでより多くの現世利益がもたらされるという教えを受けるそうです。故に一時はその布教方針について批判が集まったこともありました。よく言われていたのは、重病の患者の枕元に押し掛けて、入信を迫り、最後まで入信しなかった故人に対し「入信しなかったから罰が当たったのだ」と言い放ったという「伝説」。聖教新聞の購読を勧めることと連動した大学生への勧誘も多々あったようです。

私は幸か不幸か彼の教団の「折伏」に遭遇したことはありません。私の学生時代に布教活動に熱心だったのは統一教会(月に一回か二回くらいは自室に勧誘が来た)かオウム真理教(こちらも私は遭遇したことはありません)で、聖教新聞の勧誘も仏罰を唱えて入信を強要する人物にもお目にはかかったことがありません。しかしながら、実際には先に述べたように、政治的影響力を強く持つ集団として、かなりの数の信者が存在するようですね。各地に存在する学会の教会所はみな立派な建物で、しかも地価の高そうなところに堂々と鎮座しています。

島田氏は創価学会が勢力を伸ばした背景には日本の高度成長とそれに伴う都市部への人口集中があると分析しています。高度成長は農村から労働力となる若者を都会へと呼び寄せる作用がありました。そして人口が集中した都会に大量に発生したのが、地縁や血縁のない孤独な大衆。日々の労働で疲れ、その疲れを癒す受け皿を持たない大衆の不満は社会体制への不満となります。そしてその不満の受け皿となったのが、創価学会と社会主義・共産主義だったというわけです。後者の運動の中心は難しい理論を唱えるインテリで、時にはテロ行為を行うなど、ささやかな幸せを求める一般庶民の「志向」からは少々乖離していたのに対し、創価学会が唱える現世利益は、見事にその「需要」を満たした、というのが島田氏の解説。なるほど、わかりやすい。アメリカのトランプ氏が目先の利益への関心を強く持つ、農民を中心とした中間層の意向をうまくくみ上げ勝利した昨年の大統領選と同じような構造ですね。

さて、この集団は一体どこに向かうのか?そしてその方向性により日本はどのように引っ張られるのか?なかなか興味深いところではあります。公明党が信条とするところの「平和の党」というスタンスだけは持ち続け、自民党の暴走を食い止める存在であって欲しいとも思います。



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# by lemgmnsc-bara | 2017-03-26 17:09 | 読んだ本 | Comments(0)

『熱狂の王 ドナルド・トランプ』を読んだ


先ごろ行われたG20では、さまざまな議題を全部吹っ飛ばす勢いで、トランプ大統領が掲げた、アメリカ第一の保護主義への対策が議論されたとのことです。2017年に入り、アメリカの実権を掌握したトランプ氏は、アメリカという巨大な「ドル箱(文字通り!!)」を掌中の玉としてもてあそんでいるような印象があります。始まったばかりだというのにはやくも世界各国を周章狼狽させる、山っ気たっぷりなこのおじさんにアメリカの、いや世界の舵取りができるのか大いに不安が募るところです。

標題の一冊は、トランプ氏の人となりを克明に調べ上げた半生記。どのような生い立ちで、どのような生育過程を経たらあのような人物が出来上がるのかについて、興味深いエピソードがずらりと並んでいます。氏がビジネスマンとして一定の手腕を持っているのは明らか。ニューヨークの一等地に、ドデカイ上に、住んでいるのはセレブばかり、入っているのは高級ブランドばかりという物件を持ち、維持運営していくのは並大抵の才覚ではありません。のみならず世界各地にも同じような物件をたくさん抱え、きちんと利益を出しているのですから、少なくとも知能が低い人物ではないことは事実です。

ただし、この方、商売の才覚はあっても人格的に少々難ありのようです。だまって金儲けしてればいいものを、いささか病的なまでの目立ちたがり屋という側面も持ち合わせていますね。せいぜい自社物件に「トランプ~」って命名するくらいでとどめておけばいい(日本にも森家が運営する「森ビル」ってのがあります)ものを、一番目立つ大統領選に打って出てきてしまった。しかもなまじ商才があるだけに、アメリカの大衆に内在する欲望を見抜き、その充足を公約としてしまった。結果として彼の国の選挙権を持たない他国の大衆がワリを食うというわけです。いやはや。

氏の基本的心象にあるのは「勝てば官軍」。目標達成のためなら何でもやる。その熱意自身は悪いことではないのですが、この方の場合はちょっと方角がずれているような気がしますね。氏が現有資産の大半を稼いだ大規模な不動産取引に際しては、限りなくブラックに近いグレーな手法が用いられています。政治家にカネを贈ることもあれば、日本で言うところの反社会勢力にモノをいわすこともある。氏が、大統領という職を「ビジネス」ととらえて取り組んだときに、どんな暴走が始まるのか見当がつきません。

我々としては一刻も早く4年が過ぎ去ることを祈るしかありません。あとは「ジジイ蕩し」がお得意の安倍首相に、うまく立ち回ってもらうくらいのことしか考え付きません。トランプ氏の出現が後の世の大きな禍につながった、などという記述が後世の歴史書に残るような事態にだけはなってほしくないものです。

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# by lemgmnsc-bara | 2017-03-25 07:39 | 読んだ本 | Comments(0)

『岳飛伝 三 嘶鳴の章』を読んだ

岳飛伝 三 嘶鳴の章 (集英社文庫)

北方謙三/集英社

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岳飛伝も三巻目を迎えました。文庫本ではすでに五巻目まで発売されているようですが、まだ電子書籍では三巻目が最新です。早く電子化して欲しいなぁ、集英社の皆さん。

というわけで、いつもの通りの読書感想文です。

さて、この巻では梁山泊、南宋、金国の三つの勢力が、来るべき「決戦」の日に向けて力を蓄えていこうとする姿を描くとともに、それぞれの勢力が内側に抱える問題や、勢力同士の小さな衝突などが描かれています。

我らが梁山泊の一番の問題は、絶対的なリーダーがいないこと。各頭領たちはそれぞれ「志」を持ち、現在でいうところの自由主義経済国家、すなわち国の強権的な部分をなるべく小さくして、商流や物流を自由に行えることを保証する国家を作ろうとしてはいるのですが、「志」を明確に示し、成員を一つの方向に引っ張っていくだけの資質を備えた人物がいないため、「志」が各人各様に分裂してしまう危険性を常にはらんでいます。水滸伝の頃から「生き残って」いる史進や燕青、呉用などに加齢からくる衰えが忍び寄ってきているのも不安材料。新時代のリーダー候補秦容は軍を離れ、ベトナムで甘藷の栽培に勤しむこととなりますし、新しい商流を築きつつあった王貴は南宋の軍閥張俊の軍に襲われ、半死半生の状態で岳飛の軍で手当を受けることとなります。

かつて、北宋軍に攻め滅ぼされた梁山泊から落ち延びた楊令は金国の保護を受け、「幻王」という名で北宋の軍に対峙しましたが、こうした敵味方とははっきり分かれにくい人間関係が出現するところも「現代的」。王貴と岳飛軍の今後の関係性の変化も見逃せません。

南宋も趨勢がはっきりしない。張俊、岳飛の軍閥は成長を続けている上、皇帝の直属軍も整備されつつあります。張俊は他国と対抗する気満々の上、巨大化した軍閥の勢力を背景に宋の乗っ取りをにおわせる行動にも出ています。岳飛はこのシリーズの「主人公らしく」、心身ともに精強な兵団を作り上げつつあります。先にも述べた通り、梁山泊の中心人物の一人である王貴ともつながりができました。旧宋で跋扈していた諜報集団の残党もいまは鳴りをひそめていますが、今後の勢力の動向によってはまた暗躍を始めるかもしれません。

金国は梁山泊と対決して敗戦します。しかし梁山泊は一気に金国を攻め滅ぼそうとはせずに、和を結びます。そこで交渉の任についたのは宣讃の息子にして、呉用が自らの後継者であると見込んでいる宣凱。武力同士の衝突だけではなく、交渉による戦いもあるのだ、という記述には静かな力があります。宣凱の今後にも期待したいところです。

様々な勢力が入り乱れる様相を示してきた物語がどのような混沌を迎え、平静をとりもどすのか?早く次の巻が読みたいなぁ。



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# by lemgmnsc-bara | 2017-03-20 15:10 | 読んだ本 | Comments(0)

『よろず屋稼業 早乙女十内 一 雨月の道』を読んだ

よろず屋稼業 早乙女十内(一)雨月の道

稲葉稔/幻冬舎

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早乙女十内シリーズの第一巻。例によってkindleのバーゲン本コーナーで見かけて衝動DL。稲葉稔氏の作品を読むのはこれが初めてです。

主人公の早乙女十内は幕府の要職にある名門旗本の次男坊。幼少の頃は、長男である兄が、「明日をも知れぬ」レベルの病弱体質だったため、跡継ぎとしての期待をかけられ手厚く遇されていたのですが、長じた兄が健康となってからは、一家の中での厄介者扱い。そのことで少々やっかみ気質となってしまった十内は部屋住みの身に甘んじることも、他家への婿入りも潔しとせずに、町人と同じ長屋に住んで「よろず屋」を開業。人捜しなどで生計を立てています。幼い頃から鍛えられたこともあって優れた剣技を持ってはいるものの。その腕を披露する機会にもそうそう恵まれない、その日暮らしの毎日。

自ら選んだ道とはいえ、うらぶれた境遇にあって満たされぬ思いを抱えた身、という設定は心ならずもサラリーマンとして口に糊している方には感情移入しやすいものだと思います。私は大いに身につまされました(苦笑)。

さて、十内はとある商家から人捜しを頼まれます。捜す人物はその商家の一人娘への入り婿。かざり職人として独立しているのですが、何故かその商家のカネを持ち逃げしたというのが捜される理由です。持ち逃げされたのは二百両余。にもかかわらず、ケチとして名の通っている商家の主人が五十両もの金を成功報酬で支払う、という話に違和感を覚えた十内は婿を捜すと同時に、この商家が婿を捜す本当の理由を知ろうと奔走します。

で、数々の妨害にも関わらず、その謎を解いて、こじれた人間関係(婿と嫁である商家の一人娘の間にはいろいろな問題があったということ設定になっています)も修復して、十内の剣の腕も存分に披露される場も生じるというストーリー展開です。

まあ、一言で言ってしまえば、昭和の時代劇の典型的なストーリー展開です。日頃は冴えない主人公が、いざとなったら凄腕を発揮して謎を解いて悪人を懲らしめて最後はメデタシメデタシ。十内のキャラクター設定だけは少々ひねってありますが、主人公が遊び人の金さんでも徳田新之助でもまったく同じストーリーで通用してしまいます。よくいえば、昭和の時代劇へのオマージュ、悪くいえばモロパクリ。それ以上の感想は持ち得ませんでした。このシリーズかなり巻数を重ねているようですが、次の巻に進みたいか?と問われたら「微妙」と返さざるを得ませんね。



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# by lemgmnsc-bara | 2017-03-16 12:03 | 読んだ本 | Comments(0)

『奇談蒐集家』を読んだ

奇談蒐集家 (創元推理文庫)

太田 忠司/東京創元社

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kindleのバーゲン本コーナーからのDL品。最近このイントロ多いですが、バーゲンコーナーから購った作品から新しい作家を知ることも少なくないので、この衝動DLだけは止められません。太田氏の作品を読むのはもちろん初めてです。

主人公は恵美酒一(えびすはじめ)。奇談蒐集家を名乗り、新聞広告を打って実際に奇妙な体験をした人を募り、応募してきた人からその体験談を聞き取るというのが趣味という人物設定です。なお、本当に奇妙なオハナシには高額な謝礼を支払う、というのが広告の謳い文句でもあります。『聊斎志異』みたいな作りのオハナシですね。

さて、この一冊は、いくつかのオハナシが編まれた連作短編集で、どの話も恵美酒氏が指定したバー「Strawberry Hills」に奇談を売り込もうと企図した人物たちが入店するところから始まります。どの話もそれなりに奇妙な話ですので、恵美酒氏は大いに喜んで買い取ろうとするのですが、そこに待ったをかけるのが恵美酒氏の助手(というよりは相棒またはそれ以上の存在)である氷坂。話をする人の背後にいつの間にか忍び寄っているような不気味な習性を持ち、美貌でありながら、外見からは男か女かの区別がつかないというキャラクターが付与されています。

この氷坂は、出てくる話出てくる話にすべてツッコミをいれ、冷静に、科学的に話の矛盾点を指摘し、すべての人の話を思い込みや錯覚によるものだと「解決」してしまうのです。

奇談を集めたい恵美酒氏も、奇談を買ってもらおうと意気込んできた人々もガックリとさせてしまうことがオチ。「幽霊の正体見たり枯れ尾花」ではありませんが、いわゆる奇談とか怪異譚の類いは、すべて当事者の歪んだ主観がもたらすもので、すべてにおいて何らかの「合理的」な説明がついてしまうものだ、という皮肉り方はなかなか悪くありません。この展開は展開として面白かったのですが、最後の最後のオハナシにどんでん返しが待っています。う〜ん、やられたね、ってな感じです。すべての矛盾に対する答えを示すと見せかけて、実は最後の最後に最大の奇談を持ってくるというのは、この一冊の完結編としてなかなか見事な落とし方だったと思います。

太田氏なかなか面白い作風の持ち主ですね。また別の作品を読んでみたい作家が増えちゃいました。



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# by lemgmnsc-bara | 2017-03-11 19:34 | 読んだ本 | Comments(0)

『漂流巌流島』を読んだ

漂流巌流島 (創元推理文庫)

高井 忍/東京創元社

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kindleのバーゲン本コーナーで見かけてDLした一冊。

著者高井氏は、日本史上有名な出来事にフォーカスし、様々な資料を検証し、再構成することで、「そういう見方も出来るな」という事態にその出来事を放り込むという手法でこの一冊を書き上げ、文壇デビュー。ちなみに今作は『ミステリーズ!新人賞』を受賞しているそうです。

さて、この一作には4つの事件が取り上げられていますが、主人公は事件の「当事者」でも、事件があった時代に生きた人物でもなく、その子孫でもなく、映画界の底辺付近を這いずり回っているような駆け出しのシナリオライター。主人公は、低予算でどんな無理な撮影も引き受けるが、「巨匠」とか「名監督」という名称にはほど遠い三津木という映画監督からの依頼で、巌流島の決闘を題材とした作品のシナリオを書くこととなります。この三津木監督という方、安い予算で撮影を引き受けはしても、作品そのものを安っぽく作ることは良しとしない気概だけは持っている人物という設定で、主人公の書いてきたシナリオと、そのシナリオの基となった史料をもう一度見直して、よく言えば大胆な新解釈の、悪く言えば荒唐無稽な筋立てて映画を撮影しようとするのです。

主人公がSFチックな存在、すなわちタイムトラベラーとか超能力者などではなく、身は現実社会にありながら、空想だけは果てしなく飛翔させることを常に求められる映画というものの制作に関わっている人物だというのがミソ。一般的に「常識」とされている説を紹介した上で、「それじゃつまらないから」という理由で、ちょっとしたほころびを見つけて、そこをどんどん拡大させて新しい物語をでっち上げてしまう…。なかなか巧い方法です。

で、でっち上げられた方のストーリーでも、それなりに信憑性のあるものに仕上げられてしまうというところも巧みです。

4つの出来事は、巌流島の決闘の他、赤穂浪士47士の討ち入りに、池田屋事件、鍵屋の辻の仇討ちとどれもこれも人口に膾炙したオハナシばかり。さてさて、この物語たちがどんな風に変身させられ、それなりに筋の通ったオハナシとなるのか?基本的にこの作品集はミステリー集ですので、ネタバレになるような野暮なことはできません。実際の文章に是非触れてみて下さい。

高井氏はこの作風をこの後も続けているとのことなので、折をみて別の作品も読んでみたいと思います。



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# by lemgmnsc-bara | 2017-03-11 19:08 | 読んだ本 | Comments(0)

『日本の「神話」と「古代史」がよくわかる本』を読んだ

日本の「神話」と「古代史」がよくわかる本

日本博学倶楽部/PHP研究所

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私が愛読しているコミックスの一つに『孔雀王』シリーズがあります。

このシリーズ、最初の作品が好評だったために一旦完結した後『退魔聖伝』という続編が連載されたのですが、その中盤位から、日本の天津神と国津神の戦いを描くストーリーが展開されます。主人公、裏高野退魔師孔雀がスサノオの牙の力を得て、天津神たちの野望を打ち砕こうとするというのが主な筋立てなのですが、このシリーズはなぜか途中でブッチ切れてしまいます。その後このストーリーを引き継ぐものとして『曲神記』が連載されたのですが、これも肝心なところでブチ切れ。ようやく最近『戦国転生』というシリーズが始まって尻切れとんぼだったストーリーの続きが読めるようになりました。

前置きと愚痴が長くなりましたが、このストーリーで孔雀の前に立ちはだかるのがイザナギとその子供のツキヨミ、それに手力男やオモイカネといった日本の神話の神たちです。『孔雀王』では実際のキャラクターはそのままに本来なら善であるはずの神が悪役で出てきたりするので、この作品を読むためにはそもそもの「位置づけ」を知っておく必要があります。しかしながら私が日本の神話に触れたのは遥か昔の小学生時代に子供向けの「やさしい日本神話」みたいなものを読んだのが最後。そのため、イザナギ、イザナミの後、アマテラスが出てきて、スサノオが暴れて天岩戸に引っ込んで、八岐大蛇に因幡の国の白ウサギ、海幸山幸、ヤマトタケル…、どの人物がどの順番で出現してきて、で、どんな子孫を残したのかについて混乱に混乱を重ねる状態でした。

これは良くないね、ということでいつかは日本の神話を読んで、少なくとも誰がどの順番で出てきて、どんなキャラクターだったのかのアウトラインくらいはあたまにいれておかなきゃ、という思いは常に持ち続けていました。で、kindleの割引本コーナーで見かけたこの本を即DL。一応すべて読んだのですが、まだなんとなくこんがらがっています。

天皇が人間宣言をしたのは第二次大戦の敗戦後ですが、神話の神が実際の人間の天皇として政治を始めたのは誰の代からなのか?なぜ、大国主は国ゆずりをしたのか?土蜘蛛や長髄彦などと呼ばれ蛮族とされた土着民たちはどんな由来を持つ民族だったのか?こうしたことはこの本を出発点としてより深く学んでいくべき事柄なのでしょう。孔雀王を最初から読み直す際には、端末に呼び出しておいて、並行して読み進め直したいと思います。




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# by lemgmnsc-bara | 2017-03-05 19:57 | 読んだ本 | Comments(0)

『2014年! 中国と韓国、北朝鮮の動きが15分でわかる本』を読んだ

2014年! 中国と韓国、北朝鮮の動きが15分でわかる本

中島 孝志/ゴマブックス株式会社

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標題の通り、日本の隣国3国の状況につき著者中島氏が概観した一冊。2014年時点での概観ですので、3年後の現在、状況は変化してはいますが、当時より良くなったと思える状況はどの国との間にもありません。まずは中国。南シナ海での軍のプレゼンスをますます高めてきているような印象があります。そのうち本気で尖閣諸島に進出してくるかもしれません。一応アメリカとは「尖閣諸島は日米安保条約の適用区域である」との合意をみてはいますが、大統領が大統領だけに、今後のアメリカの動向には注意する必要がありますね。中国には「太平洋を中国とアメリカで分け合おう」という壮大かつ馬鹿げた妄想がありますが、提示される条件によってはアメリカ側が日本の権益などそっちのけでいきなり合意してしまわないとも限りません。トランプ氏は20年、30年先のことを考えるより、目先の利益に追われるビジネスマンの典型例ですからね。ましてや、アメリカファーストを掲げて当選してますから、アメリカの利益につながれば、日本がないがしろにされる可能性は低くありません。さらに中島氏の解説によれば、中国は表向き共産党の首脳が指導者ですが、実際は軍閥による支配の方が強力であり、もし軍閥のどれかが暴走しはじめたらそれを止める術はないそうです。直接的な軍事的行動はないにせよ、民間の漁船(を装ってはいるもののその実、軍の方針で動いている可能性が高い)をどんどん送り込んで、気がつけば実効支配されているなどという事態が出来しないとも限りませんね。

お次は韓国。この国は今実質的に指導者がいない状態です。パククネ大統領は「友人」への利益供与問題で、機能停止状態ですが、そんなこと関係なく世界は動いていますから、どんどんその潮流から置いていかれてしまっています。最大の有力企業であるサムスンはスマホの不具合で大打撃を受けていますし、政治、経済ともに麻痺状態ですね。そんな時にこの国が何を考えるか?嫌日です。プサンの大使館前をはじめ世界各国に設置された従軍慰安婦の像は撤去されるどころかますます増えていきそうな勢いです。明日、すぐに諸問題をすべて解決してくれとはいわないものの、せめて正常な交渉ができる責任者を早く擁立して欲しいものですね。

最後は北朝鮮。ここのところマレーシアでの暗殺事件で世界を騒がせていますし、査察が行われる度に破棄を約束するものの、実際はまったく破棄などせず、日米交渉が行われるタイミングにあわせて、ミサイルを発射するなど、ならずもの国家としての体裁ばかりが整いつつある状態です。「親」である中国も、経済制裁は実施していますが、国家の根本的な体制を変革するまでの意志はないようですし、「兄弟分」の韓国は前述したとおり、自国のことで精一杯で北のことをどうこうできる状態にありません。

お隣三国の状態もばたついてますが、わが日本も国有地の格安払い下げ問題なんかでかなりゆれています。政局政局ばっかりで肝心の政治活動は進まないまま。野党に与党を倒すほどの甲斐性がないために政権だけは安定してますが、やっぱり短期的な問題の対処に追われて、重要な問題は先送りのままです。こういうときこそアジアが共同体を組んでアメリカや欧州に対抗するチャンスだったような気もしますがね・・・。

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# by lemgmnsc-bara | 2017-03-02 05:48 | 読んだ本 | Comments(2)

『トラオ 徳田虎雄 不随の病院王』を読んだ

トラオ 徳田虎雄 不随の病院王 (小学館文庫)

青木 理/小学館

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青木理氏による徳田虎雄氏の評伝。週刊ポストに連載されたものに加筆して上梓しています。

徳田氏といえば、2013年の11月に発覚した猪瀬都知事(当時)への資金供与の件で公の場に現れた姿をみて、驚いた記憶があります。現代の世にあっても原因、治療法ともに明らかになっていないALSという難病に冒され、全身が麻痺して、視線の動きでようやく意志の疎通ができるという、非常に痛々しい姿だったからです。そこには、地盤である徳之島で全島の島民を巻き込んで「保徳戦争」を繰り広げたり、徳州会病院の建設に際して建設予定地の医師会とモメゴトを繰り返したり、といった猛々しさはほとんどみられませんでした。わずかに視線の鋭さのみが強烈な意志を感じさせてはいましたがね…。

この本の出版は2013年の前半だったようで、猪瀬都知事への資金供与の問題についてはまったく触れられていませんでしたが、そうでなくても重大な疾患なのに、この事件でよりダメージを負って一気にあの世に行ってもおかしくはないなと思った記憶もあります。でも、あれから3年以上経った現在でも自力で呼吸もできない状況ながらまだご存命のようです。生命力が強いと感心すべきか、この世への未練がそんなに強いのか、とあきれるべきか?いずれにせよ、そんな状態でありながら、徳州会は虎雄氏の指導なしには日も夜も暮れぬという状態だそうです。いやはや。

徳田氏の医学への志向は幼い時に故郷の徳之島の医療体制が整っていないが故に弟が死んでしまったことで芽生えました。徳州会の根本的なスローガンである「生命だけは平等だ」という言葉には、地域や収入により受けられる医療に差があってはならないはずだ、という徳田氏の思いが込められています。患者は年中無休、24時間オープンという体制で受け入れ、3割の自己負担分も場合によっては支払いを免除する、という徳州会グループの病院の姿勢はなるほど「医は仁術である」という言葉を体現しているように思えます。しかし、この患者に取ってはありがたいと思える方針であるが故、進出する地方地方でその地の医師会からの猛反発を喰い、衝突を巻き起こします。徳州会グループに、常に漂うきな臭さというかヤバい雰囲気はこういう紛争に由来するもののようですね。

そして徳田氏自身もかなり強烈な人物であるようです。自分が正しいと信じたことを推進するためにはどんな「汚い」方法でも使う。そしてその「汚さ」ですら、自分の策の推進のためには必要だったと正統化してしまう。まわりの人間もすべて巻き込んで、不眠不休で目的を達成するまでしゃにむに走る。スティーブ・ジョブズしかり、ダイエーの創始者中内功氏しかり。大きな既得権益団体に戦いを挑み、大きくブレークスルーした人物にはどこかしら狂的な部分があるようです。徳田氏も、どんな地域のどんな人々にも平等に医療が行き渡る体制を作るためには政治を変えなければいけない、と考え「俺は総理大臣になる」と言い放って政界に進出します。

実現させるための方法についてはいろいろと問題があるように思いますが、なにしろ、一つのことを成し遂げようと自分の持てるもののすべてを注ぎ込む、という集中力と執念については大いに見習う点があるように思います。もっとも凡人中の凡人である私は自分の身の減量すらも達成し得ないというのが現状なのですが…。




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# by lemgmnsc-bara | 2017-02-26 18:03 | 読んだ本 | Comments(0)

『ソフィー・マルソーのSEX,LOVE&セラピー』鑑賞

ソフィー・マルソーのSEX■LOVE&セラピー [DVD]

ソフィー・マルソー,パトリック・ブリュエル,アンドレイ・ウィルム,ジャン=ピエール・マリエール,マリー・リヴィエール/インターフィルム

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ソフィー・マルソーが超肉食の美魔女を演じた一作。

ソフィー・マルソーといえば、アラフィフ世代にとってはなんといっても『ラ・ブーム』でしょう。思春期を迎え、恋心に目覚めていく可憐な少女を演じた同作を観て、美少女ソフィーに惹かれた男子は少なくなかったはずです。公開当時男子校の高校生だった私も、美少女ソフィーに魅せられた一人でした。

それから数年後、彼女は見事なセクシー美女に変身します。豊満な肉体を披露したヌード写真を発表してみたり、ボンドガールになってジェームズ・ボンドと濡れ場を演じたりする大人の女性としてのソフィーを観て、引いてしまったロリコン男性もいると思います。私自身は成長した姿を好ましく(もちろん相当なエロ目線は入っています 苦笑)観てましたけどね。

さて、そんな彼女も当年とって50歳。顔のアチコチにあるしわは年輪を感じさせますが、プロポーションはボンドガール当時そのまま。まさに昨今流行の「美魔女」の条件にぴったりと合致する姿でスクリーンを駆け回ります。

彼女が今作で演じるのはセックスのことばかり考えているという美魔女。海外各地を股にかけ取引先の男性担当者をその美貌と肉体的な魅力で籠絡する敏腕営業職というキャラクターが付与されています。彼女が日本人らしき得意先と一戦交える倉庫にはなぜかニッカのウイスキーがずらりと並んでいます。後半部分でもニッカは印象的な部分で登場します。ニッカはフランスで人気があるんでしょうかね?

閑話休題。

彼女の「性癖」を快く思わない上層部からクビを言い渡された彼女は、ひょんなことからカップルセラピーのクリニックに潜り込みセラピストとしての職を得ることとなります。カップルセラピーとは男女のセラピストがコンビを組んで夫婦(または事実上の夫婦といってよい二人)の間の問題を解決するというものです。日本ではお目にかかったことはありませんが、彼の地ではポピュラーなものなのでしょうかね?いずれにせよさまざまな悩みを抱えたカップルがこのクリニックを訪れ、セラピストの経験などないはずの彼女からトンチンカンな回答を得て混乱に拍車がかかってしまったり、逆にうまく問題が解決する姿がコミカルに描かれます。フロイトじゃあるまいし、何でもかんでも性衝動に結びつけりゃいいってもんじゃない気もしますが、まあそういう設定を楽しむしかありません。

そして彼女は相棒の男性セラピストと恋に落ち、自分自身が様々なトラブルに直面する、というのが大まかなストーリー。フランスの作品らしく、色々なところに、細かく、かつ「高度」なくすぐりが入っていたのだとは思いますが、彼の地の文化には明るくない私にとってはイマイチ笑えないシーンが続きました。

昨今は日本の女性もずいぶん大胆に自由に行動するようになったとは思いますが、まだフランスの、それこそ本能のおもむくままに快楽を求めるという奔放さは一般化していませんね。少々誇張されているとはいえ、女だって普通に性欲があり、男をとっかえひっかえすることだってあるさ、という主張は日本の文化と照らし合わせたギャップとしてココロにひっかかりました。文化の差の前に、日本の普通の女性の場合は、この作品のソフィーのような美しさを保ったまま美魔女になれる人の絶対数が少ないってのもあるのかもしれませんがね。

俗に天才子役は大成しないなどといいますが、ソフィーに関して言えば、大スターとまでは言えないにせよ確かな演技力を身につけて立派に一本立ちしてるな、という印象を受けました。ソフィーみたいな女性が目の前に現れたら…、気後れしてナンパなんて思いもよらないでしょうね(苦笑)。

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# by lemgmnsc-bara | 2017-02-23 10:56 | エンターテインメント | Comments(0)

『アフリカで誕生した人類が日本人になるまで』を読んだ

アフリカで誕生した人類が日本人になるまで (SB新書)

溝口 優司/SBクリエイティブ

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少し前にkindleをPaperWhiteからFireHDに変えたのですが、変更後の最大の利点は本体のメモリ容量が増えたこと。本体に落とし込んでおける書籍の数が大幅に増えました。例えば前者だとコミックスはせいぜい3冊くらいしか落としておけませんが、後者なら100冊以上持ち歩くことが出来ます。文字情報だけの書籍なら1000冊以上大丈夫。そんなわけで、今までクラウドの中で文字通り眠っていた書籍を端末上に引っ張り出して片っ端から読んでいこうとしております。

以上のような状況の下で、クラウドの中から引っ張り出したうちの一冊が標題の書。今の人類がどこで発生し、どんな環境下で進化して現在の姿に至ったのかについて、特に日本人にフォーカスしてかなりわかりやすく解説してくれています。

人間がサルから枝分かれして人類としての歩みを始めたのはどの時点なのでしょうか?

それまでは森林地帯に住んでいたサルの種族のなかから、森林の中の敵を避けるために平地で暮らすものが出てきてから、というのが本書に記されたその答え。樹上とは違い、地上で素早く合理的に動くには二足歩行をする方がよい。で、自由になった前脚を「手」として使えるようになり、その手から受ける刺激で脳が著しく発達し、知能という卓抜した能力を得たところでヒトという種が始まります。その後は気候の寒冷化にあわせて、カラダの表面積を減らしたり、逆に暑さに対処するために体毛を減らしたり、大きくなった脳を格納するために頭蓋骨が大きくなったりというマイナーチェンジを何万年もの間連綿と続けてきた結果として今の人間に至った、という説明はシンプルながら非常にわかりやすいものでした。

今後、人間の姿はどのように変わっていくのでしょうか?発達した知能によって開発された道具の機能が優れていると、本来的には持ち合わせていた生物としての機能は衰えていくものなのだそうです。例えば、歯やあごの大きさや形状。刃物という道具によって細かく刻まれたり、熱を加えることで咀嚼しやすく加工することを覚えた結果、人類のあごはどんどん小さくなってきたそうですし、歯の形状も変化してきたそうです。確かに類人猿は牙を持った顔で表現されることが多いですね。生肉を喰いちぎるための能力が不可欠だったことの証左です。

さて、昨今人間特有の「考える」という働きを代行したり補完したりするための人工知能の発達が著しいようですが、これは人類の今後にとってどのような変化をもたらすのでしょうか?まあ、私が生きている間には結論が出るようなオハナシではないとは思いますが、様々な電子機器が身近にあることが「当たり前」となっている世代の常識と自分の持っている常識との乖離を考えあわせると少々恐いような気がしています。



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# by lemgmnsc-bara | 2017-02-23 10:23 | 読んだ本 | Comments(0)

『暗黒の巨人軍論』を読んだ

暗黒の巨人軍論 (角川新書)

野村 克也/KADOKAWA / 角川書店

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巨人を倒すことに生涯をささげてきたといってよい野村克也氏による現在の巨人軍の問題点を指摘した書。

野球というスポーツは、1球1球プレーが切れ、インターバルがあるという珍しいスポーツです。野村氏によれば、この「間」の活用方法こそが勝負を分ける重要なポイントであるとのこと。点差、イニング、アウトカウント、相手投手との相性、走者の有無などの属性により、その場面場面での最良の結果を見極め、その結果をもたらすよう努力するのと同時に、最悪の結果も考えて、そこから少しでも遠ざかるようなプレーをしようと試みる。たとえば、無死一塁二塁で点差が1点ビハインド自分が右打者で相手投手も右、なんてな場面を想像してみてください。最良の結果はホームランで3点取ることではありますが、ホームランが出る確率は非常に低いし、下手に打って出たら内野ゴロでダブルプレーを取られて一気に二死(すなわち最悪の結果)なんて事態にもなりかねない。そこで、チャンスを広げるために送りバントを選択するが、その際には、二塁ランナーが三塁で封殺されないよう、捕球から送球までに時間がかかる三塁側にボールを転がすことを心がける、などというのが「考えた」プレーです。こうした場面場面での最良選択プレーは長い歴史を経るうちに「セオリー」として定着しています。またこのセオリーがあるからこそ、その裏をかく策だって出てくるわけです。そこで、いろんな選択肢を考え、実行するために練習を重ねる、というのが強化における「セオリー」となります。

俗に「アンチは裏返ったファン心理だ」などという言葉がありますが、野村氏は実はかなりの巨人ファンです。有力な選手が続々と集まる巨人には鼻も引っ掛けられなかったという悔しさが打倒巨人への強いモチベーションとなったのですが、野村氏が打倒したかったのはV9を達成した当時の巨人であり、現在の巨人はまったく怖くないとも述べています。V9時代の巨人はONという打線の軸と強力な投手陣を擁した上に、なおかつ各人が自分の果たすべき役割を熟知し、その役割を果たすための練習をきちんとしていたそうです。中心選手であるONも圧倒的な練習量でチーム全体を引っ張った。試合でのプレーだけでなく、日常生活においても他の選手の手本となるよう心がけていたというわけです。こうしたチームが空前絶後のV9を達成したのは至極当然で、現在のチームもこの時代のチームを手本とすべきだとも説いています。

なぜ、こんなことを野村氏が一冊の本にして上梓したのか?それは現在の巨人軍に考えるということがまったく根付いていないからです。冒頭にいくつかのミスが挙げられていますが、なるほどプロとしては恥ずかしいレベルのプレーばかりです。野球というスポーツへの理解も足りないし、理解するための研鑽も積んでいない。反射神経と筋肉だけでただ目の前の事象にのみ対応しているだけ。だから体力が衰えると高いパフォーマンスがみせられなくなる。仕方がないから他球団で実績を挙げた選手をFAで引っこ抜く。かくして素質のある選手が育たずに、功成り名を遂げた選手ばかりを巨人が引っかき集める、という今の図式が出来上がり、しらけたファンがどんどん離れていくという事態を招いたというわけです。

まったくもってその通り。自前の選手を育てて優勝した広島や日ハムに倣うかと思いきや、またぞろ欲しい欲しい病発動で有力な選手を3人FAでかき集めるわ、未完の大器大田を放出するわ、外国人も欲しいだけ取るわで、まったく反省がありません。盟主がこれでは、日本野球はアメリカに追いつくどころか完全ファーム化への道一直線です。なんとかして欲しいもんですが、今の最高権力者がどうにかならない限りはどうしようもないんでしょうね。テレビのゴールデンタイムにプロ野球中継が復活する日は来るんでしょうか?望み薄ですね…。

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# by lemgmnsc-bara | 2017-02-23 05:56 | 読んだ本 | Comments(0)

『岳飛伝 二 飛流の章』を読んだ

岳飛伝 2 飛流の章 (集英社文庫)

北方 謙三/集英社

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北方大水滸伝シリーズ完結編『岳飛伝』の二巻目。『楊令伝』終了時における作品世界の状況の「おさらい」に終始した観のある一巻目から、岳飛、金国、梁山泊のそれぞれが躍動を始め、新しいストーリーをつむぎだし始めたのが今巻です。

まずは主人公岳飛。梁山泊で銭を鋳造していた田峯を招聘して、楊令に斬り落とされた右手にはめる義手を作ってもらうこととなります。元々の右手に質感、性能ともに劣らぬ義手は、楊令との戦いで文字通り傷ついた岳飛の心身を癒し、新しい戦いへの意欲を掻き立てます。ただし、まだ、自分が主権を握ろうという考えは薄く、あくまでも南宋の軍閥の一つの頭領という位置づけで、金国や梁山泊との対決に臨んでいかに勝利するかを考え、行動しています。また、彼の下には崔蘭という義理の娘が登場します。彼女が、梁山泊の医療を薬という面で支えた薛永が残した、さまざまな薬草の効能を記した書をたよりに、薬に対する造詣を深めていく姿が描かれます。やがて訪れるであろう、大きな戦において彼女が重要な役割を果たすこととなるのでしょう。そして、彼女はまた岳飛に、父親の成長した娘に対する戸惑いまでをも感じさせる役割をも担います。岳飛の人間臭いエピソードを示す手段としてはとしてはなかなか上手く考えられた手法ですね。

金国は王位を狙う人物たちの権力闘争と平行して、隣接する梁山泊との戦いに突入します。元々精強な兵を多数抱えるという設定であり、兵の絶対数も梁山泊軍を大きく上回るために、梁山泊軍と一進一退の攻防を繰り広げます。国としての野望は中原に覇を唱えることではあるのですが、実際にもし覇を唱えることになっても、その際の王が誰なのかについてはまだまだ混迷を深めていきそうですね。梁山泊を凌駕して南宋軍との直接対決があるのか否かも気になります。

さて、われらが梁山泊の面々ですが、現首領である呉用は、自らの「統治権」を破棄し、一種の集団指導体制を採っています。軍、兵站、商流、物流などなどの各分野に最高責任者を任命し、自身はその調整役に回っているのです。自分自身には宋江や楊令のように「志」を強烈に示して梁山泊を一つの方向にまとめあげる力はないと考えての施策です。潔い腹のくくり方ですね。権力に固執するどこかの政治家にはぜひとも見習って欲しいと思います。呉用をはじめとする元々の水滸伝からの登場人物たちは、志という一番の重荷を若い楊令一人に背負わせてしまったことを悔いてもいます。そして、志は一人の人間が背負うものではなく、梁山泊に集った面々の一人ひとりが持つべきものだという結論に達したのです。この施策は結果として、梁山泊の運営体制を現代の「民主主義」に近いものに変質させていきます。「志」に反しない限りはどんな行動をとることも自由。軍においてはさらに「規律」が存在しますが、たとえば商流に関しては梁山泊に蓄えられた原資を背景に日本やベトナムにまで手を広げるなど、当時としては目一杯ワールドワイドな活動が可能です。「裁量が」大きい分、責任も重大であるというのは容易に想像はつきますがね…。

さてさて、今後の展開を楽しみに次巻のkindle化を待ちたいと思います。

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# by lemgmnsc-bara | 2017-02-23 05:52 | 読んだ本 | Comments(0)

『ファーゴ』鑑賞

ファーゴ [Blu-ray]

フランシス・マクドーマンド,スティーヴ・ブシェーミ,ウィリアム・H・メイシー,ピーター・ストーメア,ジョン・キャロル・リンチ/20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

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ハリウッド屈指のヒットメーカー、コーエン兄弟によるクライムサスペンス。毎年この時期になるとレンタルDVD屋の店頭に出現する「アカデミー賞受賞作品」コーナーに並んでいたやつを衝動借り。

最初に登場するのはいかにも頼りなさそうな男ジェリーと、いかにもヤバそうな雰囲気を醸し出している2人組の男、カールとゲア。ジェリーがカールとゲアに持ちかけるのは自分の妻の狂言誘拐。資産家である義父から高額の身代金をせしめようという目論みです。どうやらジェリーはカネに困っているようです。

カールとゲアは誘拐に成功しますが、逃亡に使った車両にナンバープレートがついていないことを警官に見とがめられ、その警官をゲアが射殺してしまってから、ストーリーが、ジェリーを含む犯人一味にとっては悪い方向悪い方向に展開していきます。いわゆる「ドツボにはまる」というシチュエーションがどんどん進行していくのです。

まずは、警官射殺現場を偶然車で通りかかったカップルを二人とも殺害。罪がどんどん重なります。依頼したジェリーはジェリーで、警察に通報しようとする義父を説得し、身代金を引っ張り出すのに散々苦労させられます。おまけに、当初の要求金額から大幅に増額した身代金をジェリーではなく義父自らが犯人の元に運ぶと言い出し、強引に犯人との受け渡し場所に行ってしまいます。途中で身代金の大半をネコババしようとしていたジェリーにとっては実入りが何もないのに焦りと罪悪感だけが募る結果となります。

で、カネの受け渡し場所に行った義父は、受け取りに来たカールと銃撃戦の上、射殺されてしまいます。さらにはカネと車の取り分の争いから、カールもゲアに殺されてしまいます。いやはや。ちょっとした手違いや一瞬のイラつきによってもたらされたホンのちょっとしたズレがやがて大きな歪みとなって、登場人物たちに襲いかかる、という展開はなかなか上手く考えられていたと思います。悪いことを企んだやつには結局利益はもたらされず、代償としての罪だけはしっかり背負わされる、という結末も悪くありませんでした。

一つだけ消化不良だったのは、身代金の最終的な行方。支払われた金が要求額より大幅に多いことに気づいたカールは、当初通りの分け前だけ持って、残りはとりあえず雪の下に隠してゲアのいる隠れ家に帰るのですが、そこで前述した通り諍いが起こり、殺されてしまいます。カネの隠し場所を知る人物はストーリー展開からはカールしか考えられません。結局このカネは一体どうしたんだろう?そこだけ少々尻切れトンボ感は否めませんが、全体としてはなかなかの佳作だったように思います。



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# by lemgmnsc-bara | 2017-02-14 18:59 | エンターテインメント | Comments(0)

『Eight Days a Week』鑑賞

ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK -The Touring Years DVD スタンダード・エディション

ポール・マッカートニー,リンゴ・スター,ジョージ・ハリスン,ジョン・レノン/KADOKAWA / 角川書店

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1962〜66年頃のビートルズの姿を、現存する映像から描き出したドキュメンタリー映画。当時のライブの映像から、後年になってからのメンバーや関係者へのインタビュー映像なども交え、彼らの「本気」にかなり近いところまでアプローチすることに成功しています。

静かなものから激しいものまでバラエティーに富んだメロディーにのせ、シンプルながら意味の深い歌詞が曲となって流れる。そして彼らの演奏する姿を観に、今までの音楽のコンサートでは考えられないほどの膨大な数の人々が会場に文字通り押し寄せる。熱狂、熱狂、また熱狂。警備の人数を増やしても、警官隊の出動を要請しても、ほとんど何の効果もない。このムーヴメントの解消のために、ひとまずは「ハコ」を大きくする方向に向かうこととなります。すなわち、普通のコンサートホールではなく、野球場などの「スタジアム」を会場とするのです。

今でこそ、ポッと出のアイドルとかいう連中までが当たり前のように行う「ドームツアー」なんてな催しを初めて「行わざるを得なかった」のがビートルズだったのですね。ネット配信などはもちろんなく、レコードですら普及の途上だった当時における彼らの人気は空前絶後、今の言葉で言えばレジェンドとでも言いましょうか。音楽の教科書にまでその名前が載ってしまうというのがよくわかる光景が次々と映し出されます。

そしてこの作品はやがて訪れるであろう、解散の日をにおわすようなカタチで終わっています。それこそ1週間に8日も働き詰めに働く、という日々がデビュー以来続いていた彼らは次第にマスコミの前でも不機嫌さを隠さなくなります。一部のメディアとは険悪な雰囲気になっていたし、デビュー当時の勢いからすればやや勢いに欠ける(とはいえ、それでもすべての作品が「ヒット」したと言える状態なのですがね…)セールスも、メンバー個々の音楽性の違いってやつも影響していたんでしょうね。メンバー間の亀裂を決定的なものにしたと言われている、ジョンのオノ・ヨーコへの過剰なまでの肩入れに関してのタネもこの時期に蒔かれていたのかもしれません。

ビートルズが音楽を、そして社会をどのように変えたのかが具体的に描かれていた、なかなか興味深い作品だったと思います。



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# by lemgmnsc-bara | 2017-02-12 18:37 | エンターテインメント | Comments(0)

『平尾誠二・ラグビー界の太陽大金星のラグビー人生を振り返る』を読んだ

平尾誠二・ラグビー界の太陽 大金星のラグビー人生を振り返る (朝日新聞デジタルSELECT)

朝日新聞/朝日新聞社

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昨年53歳という若さで急逝し、昨日お別れの会が催され、2000人もの弔問客を集めた平尾誠二氏に関する朝日新聞の記事を集めた一冊。大学選手権三連覇を果たした同志社大学時代のものから、昨年6月に行われたジャパンvsスコットランドのテストマッチ直前のものまでが収められています。

平尾氏といえば伏見工業での高校ラグビー全国制覇、同志社では大学選手権三連覇、社会人の神戸製鋼では七連覇とすべてのステージで栄冠を得、ジャパンの中心選手としても長年活躍した「ミスターラグビー」の名にふさわしい名選手でした。

この一冊にも優勝直後のインタビューや、主将としての日常など明るい面が数多く取り上げられています。まあ、亡くなった方の悪い面をとりあげるのは特に日本でははばかられる傾向にありますし、悪いことよりは良いことの方が圧倒的に多い方でもありますので、構成上しかたのない部分もありますが、エディー氏というかつてない業績を残した監督が去った後という時期だけに、苦闘続きだった日本代表監督時代についてももっと触れて欲しかった気がします。彼の一番の悔いはおそらく、志半ばにして退いた日本代表監督であっただろうと思われますし、彼がやろうとしていながら果たせなかった強化策(例えばジュニア世代から継続したエリート育成プログラムなど)については今のジャパンに活かすことが可能であるとも思うからです。

無念の思いとともに、俗に「棺桶のなかまで持っていく」などと言われる秘話やしがらみ、障壁などを赤裸々に語った内容のものを掲載してほしかったなぁ、という気がします。彼は日本ラグビー界のさまざまな場面をすべて知りうる立場にあった人であり、かついろいろな方々に意見を言える立場でもあったはずです。だれの、どんな思惑が日本ラグビーの前進を阻んだか、それこそ亡くなった今だからこそ言えるオハナシが多々あるように思うのですがね…。

新聞報道の限界の一つの局面をみてしまったような気がしました。新聞はその時その時の客観的な事実を伝えることが最優先されるがゆえに一つ一つの事柄を深く掘り下げるて伝えるのは苦手です。新聞に掲載された記事を集めると、どうしても当たり障りのない事象の羅列になってしまうんですよね。平尾氏は称えられてしかるべき人物ではありますが、彼をもってしても改革出来なかったジャパンの今にも連なる暗部について語ることの意味は決して低くなかったように思いました。

いずれにせよ、私くらいの年代のラグビーファンにとってはまさしくキラ星のような存在でした。その輝きが亡くなってしまった今の喪失感は例えようもありません。改めてご冥福をお祈りしたいと思います。



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# by lemgmnsc-bara | 2017-02-11 08:31 | 読んだ本 | Comments(0)

『5th Wave』鑑賞

フィフス・ウェイブ(初回生産限定) [Blu-ray]

クロエ・グレース・モレッツ,ニック・ロビンソン,ロン・リヴィングストン,マギー・シフ,アレックス・ロー/ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

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クロエ・グレース・モレッツが主演しているというだけで借りて来てしまった一作。

彼女の今作の役割は女子高生キャシー。ある日キャシーの住む町の真上にいきなり巨大な円盤のようなものが出現します。どうやらこれは異星人(作中の呼び名はアザース。以下アザース)の乗り物兼前線基地だったらしく、このアザースたちからは不気味な10日間の沈黙の後、第一の波(攻撃)が送られてきます。

これは電磁波による攻撃で、エネルギーの統制を司るコンピューターから、人々が持つスマホにいたるまで、すべての電子機器が使えなくなります。次に襲ってくるのが内陸部では大洪水、沿岸部では大津波。この第一次、二次の攻撃はちょっと穿った見方をすれば大地震の光景を模したものかもしれません。ライフラインと通信手段を失った後の人々に襲いかかる大量の水…、特に東日本ではリアルな恐怖を感じる人もいるのではないでしょうか?

お次ぎは伝染病。キャシーの母は看護師で人々の治療にあたるうちに感染して死亡。しかし中にはこの病原菌に打ち勝つ人々もいます。しかし打ち勝ったとは言ってもアザースに脳を乗っ取られて別人格(アザースのために人類を殺戮する方向で活動します)になってしまう人物もいれば、全く影響を受けない人物たちもいます。ここで起こるのが人間同士の同士討ちと疑心暗鬼。このあたりは「人間が本当に頼れるのは人間だが、同時に一番の敵となるのも人間だ」という私にとっては『デビルマン』の原作コミックを読んで以来のパラドクスが示されていたように思います。ここまでの攻撃で第4波。で、五つ目は何?と思っているうちにエンドロールになっちゃいました。何じゃこりゃ?

ストーリーそのものはさほど悪いとは思いませんでしたが、あまりにもリアリティーがなさ過ぎて、普通に観ているのが困難でした。詳しい筋立ては観ていただくしかありませんが、最終的に、人類を救いうるのは子供である、というメッセージを表すために、大人ですらかなわないアザース相手に子供が戦おうとする、という設定がそもそも理解不能。文字通りの子供騙しです。キャシーだって、不意打ちだったとはいえ、訓練を摘んだ女性兵士と戦って絞め殺してしまったりもします。いくらなんでもあり得ねーだろ。もしこれが実情だとしたら、アメリカ軍に守ってもらってるって安心すら出来ねーじゃねーか!

まあ、作品としての室はさておいて。クロエ・グレース・モレッツだけはたっぷりと鑑賞することはできましたので、それだけが救いでした。彼女のファン以外にはあまり観る価値のない作品であるように思います。



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# by lemgmnsc-bara | 2017-02-07 19:00 | エンターテインメント | Comments(0)

なんだかんだで読んだ本のことばっかり書いてます。たまに映画、時々食い物とドライブとラグビー観戦。


by 黄昏ラガーマン
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