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『水滸伝15 折戟の章』を読んだ

水滸伝 15 折戟の章
北方 謙三 / / 集英社
ISBN : 4087462390
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今年最後の北方水滸伝。前巻から引き続き、宋の大軍との全面対決が描かれています。

総勢20万という圧倒的な数で各地の梁山泊の要塞に攻撃を仕掛ける宋軍。その中でも流花塞の攻防が主に描かれます。

今巻のメインは花栄でしょうか。108人の頭領の中でも弓の名手として知られている花栄の弓の腕を見せる場がないのを常々不満に思っていたのですが、ようやく面目躍如という場面が描かれました。並みの名手では届かすことすら困難な距離にいる敵を、掲げた盾をものともせずに矢で射抜く!フィクションと分かっていながらも胸のすくような活躍です。

この活躍はまた、花栄を真のリーダーとして認めさせるものともなります。率いられている兵士に「この人間に従っていれば安心して戦える」という意識を持たす・・・、なにやらラグビーのキャプテンシーにも通じるおハナシですな。周りの人間が不平不満や疑問を抱くことなく「何となく」しかも安心して指示に従ってしまう。花栄がそういう武将として脱皮し、梁山泊はまた一つ大きな支柱を得ることとなります。

もう一つ今巻で印象に残ったのは宿元景の散り様。苦戦続きながら、1枚1枚流花塞の防御を引きはがし、あと1歩で流花塞陥落というところまで追いつめました。原作では大軍頼みの腰抜け武将として描かれていましたが、北方版では知勇ともに優れた大将としてかなりカッコ良く描かれています。北京大名府を梁山泊軍に占領されたことにより、撤退という勅命が下されますが、その勅命に抗議してわずかな手勢を率いて流花塞に突入。軍師の朱武を道連れに敵軍のまっただ中で壮絶に討ち死にします。あくまで自らの意志を貫いて生き、そして死ぬ。敵も味方もカッコ良すぎです。

北方版では影の薄かった最大の敵役高キュウが不気味に存在感を増してきました。急転直下の勅命も高キュウの皇帝への訴えによるもの。宋内部の分裂にも拍車がかかってますます複雑な状況になってきました。

あと残り4巻。早く読みたいような読み終わるのが惜しいような・・・。ヤな小説ですな、まったく(苦笑)。
by lemgmnsc-bara | 2007-12-24 10:12 | 読んだ本

映画、演劇、お笑い、あまり肩の凝らない小説等々…、基本的にエンターテインメント系に特化したブログにします。

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