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『君たちに明日はない 』を読んだ

君たちに明日はない
垣根 涼介 / / 新潮社
ISBN : 4101329710
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前回投稿した『行動経済学入門』に引き続き「山本周五郎賞受賞作」という文字につられて衝動買いしたのが標題の小説。

著者の垣根涼介氏については名前も存じ上げないくらいだったので、当然の事、他の著作も読んだことはありません。ここのところまともに小説を読んでいないな、という気がしたので何気なく「積ん読」山から抜き出して読みはじめました。

意外なことに(失礼)、この本、実に面白かった。主人公村上真介は、いわゆるリストラで「整理」される社員を説得することを企業から請け負う会社の社員。様々な駆け引きでリストラ対象の社員を説得していく交渉のプロとして描かれています。

説得される側の人間は、一癖も二癖もある連中ばかり。ただでさえ難航しそうな交渉がより困難になるように設定されています。しかしながら村上真介はさほどの困難を感じさせずに、説得してしまいます。この辺りの「手練手管」は読んでもらうしかないのですが、リアリティーにあふれる記述です。

我が身を振り返って考えて見た場合、彼のようなプロにかかれば手もなく退職においこまれてしまうでしょう。営業職時代は、自分の活動が会社にどれだけの利益をもたらしているかなんて考えたこともありませんでした。とにかく売り上げを上げることしか考えていませんでした(そう強制されていたっていうのもあります)から販促費なんかバンバン使ってました。他の社員との比較で利益率が低いと言われたら一も二もなく降参するしかなかったに違いありません。

著者はあとがきの中で「冒険小説を主に書いてきたが、普通の日常生活の中にある冒険を描いてみたかった」という旨のことを書いています。なるほど、今までの「住み慣れた」環境を離れ、新しい会社で新しい仕事に就くというのは一種の冒険には違いありません。右も左も分からない中で、どんな事態に襲われるか予想もつかない訳ですから、ジャングルの中に一人乏しい装備で踏み込むようなモンです。それ故刺激に満ちているとも言えるのですがね。

交渉の場面だけでなく、主人公の恋愛模様や、リストラされる側の夫婦の情愛、大胆な性描写なども盛り込まれた中味の濃い小説でした。この本には続編も出ているそうですので、文庫化されたら是非読んでみたいです。また氏の出世作である冒険小説も読んでみたいと思いました。
by lemgmnsc-bara | 2007-12-07 00:20 | 読んだ本

映画、演劇、お笑い、あまり肩の凝らない小説等々…、基本的にエンターテインメント系に特化したブログにします。

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