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『水滸伝 13 白虎の章』を読んだ

水滸伝 13 (13) (集英社文庫 き 3-56)
北方 謙三 / / 集英社
ISBN : 408746220X
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今月もいつの間にか月末に近づいております。で、店頭には例によって北方版水滸伝の最新刊がでてました。

今巻は梁山泊の拠点の一つ、双頭山をめぐっての攻防戦と、宋軍の造船工場を策略を用いて破壊するという二つのストーリーが展開されます。

宋軍の奇襲を受け窮地に立たされた双頭山の戦いでは、指揮官である朱ドウが「死域」を越えた、鬼気迫る敵陣への突撃を繰り返し、梁山泊からの援軍が来るまで、砦を守りきります。ただ無謀に死ぬのではなく、砦と兵の損失を最小限に食い止める為に「冷静」に選択した決死の策。見事な最期でした。精一杯の努力をし、しかもきちんと「結果」を残し、持てる力のすべてを使い果たして死んで行く・・・。理想的な生き様であり、死に方です。私も死ぬときには自分の持てるものを全て使い切って死にたい(金を使い果てして、という意味ではありませんよ、念のため)。少々大げさですが、そこまで考えさせられちゃいました。

宋軍の軍艦製造工場を壊滅させた孔明も、自らが放った炎に飲まれて壮絶な最期を迎えます。こちらも、梁山泊で鍛え上げられた兵の被害を最小限に食い止める為に最大限努力した結果としての死です。つくづくと熱い男たちです。

北方版水滸伝の特色の一つに、大胆な「人事異動」が挙げられます。簡単に言ってしまえば「適材適所」の徹底。梁山泊軍も青蓮寺も常に人物の質を問い、その人物が最大限の力を発揮するであろう部署へ異動させます。特に梁山泊軍の方は、原作で描き方の曖昧だった登場人物に、きちんとしたキャラクターを持たせ、一人一人の内面にまでしっかりとアプローチしています。ただの血湧き肉踊る活劇ではない深みが感じられますね。相変わらずのリアルさです。

宋軍がいよいよ本気を出して来た今巻。結末まであと6巻ますます目の離せない展開になってきました。
by lemgmnsc-bara | 2007-10-29 07:03 | 読んだ本

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by 黄昏ラガーマン
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