2018年 07月 02日
『教授のおかしな妄想殺人』鑑賞
ウディ・アレン監督のコメディサスペンス。
主人公は片田舎の小さな大学で、哲学を教えているエイブ。彼は哲学を教えながらも自分の人生に対しては絶望しており、無気力に酒に溺れる日々を送っています。片時もウイスキーが手放せず、近所に住む尻軽な女性化学者が露骨な誘いをかけてきて、いざベッドインしても男性機能が不全なまま。取り組んでいる著作も父として進まず、イライラを募らせては酒を飲んで、そんな自分を嫌悪してますます落ち込んでいく…。観ていて親近感を感じざるを得ませんでした(笑)。生活の全てに行き詰まりを感じているところなんか特に。
そんな中、ジルという女子学生から授業内容についての質問を受け、そのことがきっかけで、エイブは彼女とだんだん親しくなっていきます。ただしこの段階ではエイブは彼女との関係について「友人」という表現を用いており、恋愛感情を否定しています。私が中学生だった頃の、田舎の中学生の恋愛事情のようなこそばい、じれったい展開。
しかし、ある日二人で入ったレストランの隣で交わされていたとある家族の会話を盗み聞きしたことから、彼を取り巻く環境が一変します。この家族は、別居した夫婦の子供の親権を母親ではなく、父親に与えるという判決を下した判事に関する恨みつらみを目一杯吐き出していたのでした。判事が全て悪いという話を丸のまま信じ込んだエイブは、義憤にかられ、この判事を殺害することをいきなり決意してしまいます。そしてこの「使命」は彼を今までとは全く逆の意欲的で活動的な人物に変えてしまいます。自己啓発本の典型的な「説得パターン」、すなわち人は何か目的を持つことで人生を充実させることができる、ってなことの端的な表現ですね。その目的が「殺人」ってところがおかしな妄想なんですけどね。私も何か大きな人生の目的が欲しい!その目的達成のためには殺人はできないけど、自分自身の命を差し出すくらいの覚悟ができるような目的が!!まあ、これは自分で見つけるしかありませんがね…。
さて、エイブは綿密に計画を練り、着々と実行に向かいます。その過程で昂ったココロとカラダを鎮めるために先述した尻軽化学者ともジルとも深い関係になったりします。で、肝心の作戦は見事にハマり、エイブは自らに容疑のかからない状況を作り出した上で、判事を殺害することに成功します。しかし、天網恢恢疎にして漏らさずの言葉通り、犯人がエイブであることをジルにひょんなことから見破られてしまいます。ジルは、大罪を犯したエイブを許すことができず、自首を勧め、もし自首しなければ自分が訴え出ると宣言します。さて、追い詰められたエイブはどう行動するでしょう?ストーリー紹介はここまで。詳細は本編をご覧ください。一応サスペンスですからね。
人間の心理と行動の不条理さを笑おうというのがこの作品のメインテーマだと思いますが、何気なく見過ごしていたシーンや、聞き流していたセリフが後になって重要な伏線であったことに傷化される、という展開はなかなか考えられていたと思います。結末はウディ監督の作品らしく、シニカルさとやや悲し目のユーモアに彩られていた、とだけ述べておくことにします。
by lemgmnsc-bara
| 2018-07-02 12:28
| エンターテインメント