2017年 10月 15日
『ハルのゆく道』を読んだ
今や日本代表、サンウルブズ両チームに欠かせない存在となったのが、この本の主人公立川理道選手。ラグビーライターの第一人者村上晃一氏による、立川選手の半生記が標題の書。
私が立川選手の存在を初めて知ったのは、彼が天理大学に在学している時でした。関西の大学ラグビー界では古豪として知られてはいたものの、「栄光の日々は遠い過去」という状態だった天理大学のラグビー部が突如として再浮上し、同志社や京産大などの強豪を次々と倒すまでの存在となり、正月の大学選手権にまで進出するという状況になったため、天理大学のラグビー部を意識せざるを得なくなったためです。
当時の天理はハベア、バイフという二人の外国人留学生を両CTBに置くという布陣を敷いていました。FWの二列目、三列目でプレーさせることが常識だったパワフルな外国人を二人ともCTBに起用するという斬新さもさることながら、その二人をランナーとして活かし切っていたのがSOをポジションとする立川選手でした。自分自身も骨太のガッチリとした体格ながら、闇雲に突っ込むのではなく、まずはCTBを活かすためのフラットかつ素早いパスを送る。これによってトップスピードに近いタイミングでパスを受け取った両外国人のパワーが炸裂する。で、CTBに意識を向けると、内側のスペースを外国人に負けず劣らずの力強さで立川選手が突いてくる。自分も含めてチームにとって最良となるプレーは何なのかの判断が常に的確であるという印象を持ちました。
もちろん彼と両外国人だけで勝ち抜けるほど関西大学ラグビー界は甘くはありませんが、それにしても立川選手のプレーが輝いて見えたというのも事実。大学在学中からジャパンに呼ばれたのも当然のことと誰しもが納得しました。で、彼の起用は2015年のあの感激に見事につながってくるのです。
立川理道という人物はどんなルーツからどんな環境を経て、今のような存在となったのか?村上氏の筆は余すことなくその過程を描き切っています。そして、立川選手の「ゆりかご」となった天理ラグビーの歴史についても、詳細に解説してくれているというお値打ち品でもあります(笑)。天理教は二代目の最高指導者の時代から、その精神を教義に取り入れ、教義の実現方法としてのラグビーに深い理解があるということがよくわかる内容となっています。ラグビースクール、中学、高校、そして大学まで指導の軸が一本ピシリと通っていながら、決して選手たちを厳しく束縛することなく強化していく。楽しい上に結果がついてくる指導法だというわけです。余談ながら、私の母校である高校が最後に花園に出た際に戦って負けたしてが天理高校であってことを思い出しました。
2015年の感激から早2年。サンウルブズでも日本代表でも、トップリーグのクボタスピアーズでも立川選手は厳しい状況下での戦いを強いられています。しかし、その試練は2019年に大輪の花を咲かせるための肥料であると信じましょう。
by lemgmnsc-bara
| 2017-10-15 11:10
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