2017年 09月 28日
『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』鑑賞
ハリウッド屈指のヒットメーカー、コーエン兄弟によるヒューマンコメディー。カンヌ映画祭でのグランプリをはじめ、数々の賞を受賞した作品で、どこかの映画解説本で「観るべき映画」リストみたいなものに連なっていた作品。この映画解説本のリストは手帳に書き写してあったのですが、ついつい新作にばっかり目がいってしまい、ようやく借りてきました。
このお話は実在のフォークシンガーの自伝が原作だということです。
冒頭、ライブハウスでの演奏を終えて出てきた主人公ルーウィンが、待ち伏せていた正体不明の男にいきなりボコボコにされるシーンが出てきたときは、一体どんなストーリーになるのか不安に駆られましたが、バイオレンスなシーンはここと最後だけ。あとは、挫折を繰り返しながらも懸命に自分の夢を追い求めて奮闘する主人公の姿が、淡々と描かれます。
冒頭にも書いた通り、一応この作品はコメディーにカテゴライズされるようですが、特に笑えるシーンはありません。コミカルなシーンと言えるのは、ルーウィンが転がり込んでいた友人宅の猫がちょっとした隙をついて外に逃げてしまい、それを慌てて追いかけるところくらい。あとは、泣き面に蜂という状況が次々とルーウィンに襲いかかってくるところがユーモラスといえばユーモラス。どちらかというと、笑えるというよりは惨めったらしさに自分の気持ちまでが落ち込みかけるようなシーンばっかりでしたけどね…。
で、様々なハプニング、苦難、困難を乗り越えたルーウィンが、最後には自作の歌を披露したライブハウスで拍手喝采を浴びて出てくると、冒頭のシーンに繋がるという仕掛けが施されています。この演出の意味が今ひとつ不鮮明で、私は少々混乱しました。いずれにせよ、主人公の未来は明るくなりそうだ、という暗示のままネームロールヘと突入します。
ユーモアという感覚に関する彼我の差を一番に感じた一作でしたね。日本だと、もっと泥臭いエピソードをこれでもかこれでもかと盛り込んで、最後は涙涙みたいな「スポ根モノ」じみた仕上がりにしてしまうであろうところを、不条理に仕上げたところがコーエンメソッドなのでしょう。
by lemgmnsc-bara
| 2017-09-28 10:37
| エンターテインメント