『稲盛和夫最後の戦いーJAL再生にかけた経営者人生』を読んだ

稲盛和夫 最後の闘い―JAL再生にかけた経営者人生

大西 康之/日本経済新聞出版社

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京セラの創業者として有名な稲盛和夫氏が、経営破綻したJALに乗込んで、いかに内部を改革し、V字回復を成し遂げたかを描いたルポルタージュ。

経営破綻をした際のJALというのはお役所以上にお役所的な会社だったようです。アタマのいい経営陣が素晴らしい経営計画を作りはするものの、その計画を遂行しようと努力する者はなく、「達成出来なかった時のいい訳は超一流」という体たらく。内にばかり目を向けていて、本来なら一番向き合わなければならない顧客からも「笑顔ではあるが心がこもっていない接客態度だ」と評される始末。おまけにいろいろな組合が乱立して社内もバラバラ。破綻するべくして破綻したとしか言いようのない状態でした。

もちろん、素晴らしい社員はたくさんいたのでしょうし、与えられた持ち場の中で精一杯の努力をしていたのではあろうと思います。また、必要だとは思えない地域にまで空港を建て、空港がある以上は国の後ろ盾があるJALが飛行機を飛ばすのが当たり前だろ、という論調で、人が乗ろうが乗るまいが、飛行機を無理矢理運航させた上に、経営をまともに監査しなかった国や政治家たちにも、その罪の一端はあります。でもやはり一番悪いのは「最後は国がケツをふいてくれるさ」と高を括っていたJALの経営陣ですね。

さて、稲盛氏は高学歴でアタマがよく、それ故プライドも高い経営幹部を向こうに回し、小学校の道徳の授業でやるような、「人としての道」とか「やってはいけないこと」などの話から始めていきます。

拍子抜けとともに、「そんなことは知っている」として反発していた幹部たちですが、繰り返し繰り返し人の道を説く稲盛氏への賛同者は次第に増えてゆきます。

「人の道」を知識として知っているだけではなく、実践していくことにより、顧客に提供すべき航空会社のサービスとは一体なんなのか?という原点に立ち戻った行動を社員全員がとるようになり、より良いサービスを提供するためにはどうしたら良いのかを考え、行動する組織に生まれ変わっていくのです。

上から押し付けた「思想」は結局他人事であり、自らの意思には反映されませんが、自分自身が行動してつかみ取った哲学は自らの行動に大きく影響します。すべての社員が会社の再建を「自分のこと」と捕らえ直す意識改革により、数万人にも及ぶ解雇という文字通り血の出るようなリストラや、徹底的なコスト削減以上に奏功し、JALはV字回復を成し遂げます。

人を感動させるのはかけたコスト以上のサービスを提供すること。そしてそのサービスを生み出すのは一人一人の気持ちです。ナニワ節だといわれてしまえばそれまでですが、そうしたキモチを作り上げることの出来た稲盛氏の手腕には脱帽です。


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by lemgmnsc-bara | 2017-04-29 20:45 | 読んだ本 | Comments(0)