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『創価学会』を読んだ

創価学会 (新潮新書)

島田 裕巳/新潮社

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いまや連立与党の片翼として、政府の意思決定に深く関与しているのが公明党。その支持母体となっているのが、いろんな意味で有名な創価学会。衆議院で圧倒的多数を占める自民党ですが、各選挙区における創価学会の選挙協力なしには成立し得ない議席数だそうです。日本で一番政治力のある宗教団体と言ってもよい同会についてその発生から、現在に至るまでの歴史を概観しているのが宗教学者島田裕巳氏による標題の書。

島田氏がこの書で語るところによれば、創価学会の基本的な教義は現世利益の実現です。信者は自らが深く信仰することもさることながら、新しい信者をより多く獲得することでより多くの現世利益がもたらされるという教えを受けるそうです。故に一時はその布教方針について批判が集まったこともありました。よく言われていたのは、重病の患者の枕元に押し掛けて、入信を迫り、最後まで入信しなかった故人に対し「入信しなかったから罰が当たったのだ」と言い放ったという「伝説」。聖教新聞の購読を勧めることと連動した大学生への勧誘も多々あったようです。

私は幸か不幸か彼の教団の「折伏」に遭遇したことはありません。私の学生時代に布教活動に熱心だったのは統一教会(月に一回か二回くらいは自室に勧誘が来た)かオウム真理教(こちらも私は遭遇したことはありません)で、聖教新聞の勧誘も仏罰を唱えて入信を強要する人物にもお目にはかかったことがありません。しかしながら、実際には先に述べたように、政治的影響力を強く持つ集団として、かなりの数の信者が存在するようですね。各地に存在する学会の教会所はみな立派な建物で、しかも地価の高そうなところに堂々と鎮座しています。

島田氏は創価学会が勢力を伸ばした背景には日本の高度成長とそれに伴う都市部への人口集中があると分析しています。高度成長は農村から労働力となる若者を都会へと呼び寄せる作用がありました。そして人口が集中した都会に大量に発生したのが、地縁や血縁のない孤独な大衆。日々の労働で疲れ、その疲れを癒す受け皿を持たない大衆の不満は社会体制への不満となります。そしてその不満の受け皿となったのが、創価学会と社会主義・共産主義だったというわけです。後者の運動の中心は難しい理論を唱えるインテリで、時にはテロ行為を行うなど、ささやかな幸せを求める一般庶民の「志向」からは少々乖離していたのに対し、創価学会が唱える現世利益は、見事にその「需要」を満たした、というのが島田氏の解説。なるほど、わかりやすい。アメリカのトランプ氏が目先の利益への関心を強く持つ、農民を中心とした中間層の意向をうまくくみ上げ勝利した昨年の大統領選と同じような構造ですね。

さて、この集団は一体どこに向かうのか?そしてその方向性により日本はどのように引っ張られるのか?なかなか興味深いところではあります。公明党が信条とするところの「平和の党」というスタンスだけは持ち続け、自民党の暴走を食い止める存在であって欲しいとも思います。



by lemgmnsc-bara | 2017-03-26 17:09 | 読んだ本

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