『暗黒の巨人軍論』を読んだ

暗黒の巨人軍論 (角川新書)

野村 克也/KADOKAWA / 角川書店

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巨人を倒すことに生涯をささげてきたといってよい野村克也氏による現在の巨人軍の問題点を指摘した書。

野球というスポーツは、1球1球プレーが切れ、インターバルがあるという珍しいスポーツです。野村氏によれば、この「間」の活用方法こそが勝負を分ける重要なポイントであるとのこと。点差、イニング、アウトカウント、相手投手との相性、走者の有無などの属性により、その場面場面での最良の結果を見極め、その結果をもたらすよう努力するのと同時に、最悪の結果も考えて、そこから少しでも遠ざかるようなプレーをしようと試みる。たとえば、無死一塁二塁で点差が1点ビハインド自分が右打者で相手投手も右、なんてな場面を想像してみてください。最良の結果はホームランで3点取ることではありますが、ホームランが出る確率は非常に低いし、下手に打って出たら内野ゴロでダブルプレーを取られて一気に二死(すなわち最悪の結果)なんて事態にもなりかねない。そこで、チャンスを広げるために送りバントを選択するが、その際には、二塁ランナーが三塁で封殺されないよう、捕球から送球までに時間がかかる三塁側にボールを転がすことを心がける、などというのが「考えた」プレーです。こうした場面場面での最良選択プレーは長い歴史を経るうちに「セオリー」として定着しています。またこのセオリーがあるからこそ、その裏をかく策だって出てくるわけです。そこで、いろんな選択肢を考え、実行するために練習を重ねる、というのが強化における「セオリー」となります。

俗に「アンチは裏返ったファン心理だ」などという言葉がありますが、野村氏は実はかなりの巨人ファンです。有力な選手が続々と集まる巨人には鼻も引っ掛けられなかったという悔しさが打倒巨人への強いモチベーションとなったのですが、野村氏が打倒したかったのはV9を達成した当時の巨人であり、現在の巨人はまったく怖くないとも述べています。V9時代の巨人はONという打線の軸と強力な投手陣を擁した上に、なおかつ各人が自分の果たすべき役割を熟知し、その役割を果たすための練習をきちんとしていたそうです。中心選手であるONも圧倒的な練習量でチーム全体を引っ張った。試合でのプレーだけでなく、日常生活においても他の選手の手本となるよう心がけていたというわけです。こうしたチームが空前絶後のV9を達成したのは至極当然で、現在のチームもこの時代のチームを手本とすべきだとも説いています。

なぜ、こんなことを野村氏が一冊の本にして上梓したのか?それは現在の巨人軍に考えるということがまったく根付いていないからです。冒頭にいくつかのミスが挙げられていますが、なるほどプロとしては恥ずかしいレベルのプレーばかりです。野球というスポーツへの理解も足りないし、理解するための研鑽も積んでいない。反射神経と筋肉だけでただ目の前の事象にのみ対応しているだけ。だから体力が衰えると高いパフォーマンスがみせられなくなる。仕方がないから他球団で実績を挙げた選手をFAで引っこ抜く。かくして素質のある選手が育たずに、功成り名を遂げた選手ばかりを巨人が引っかき集める、という今の図式が出来上がり、しらけたファンがどんどん離れていくという事態を招いたというわけです。

まったくもってその通り。自前の選手を育てて優勝した広島や日ハムに倣うかと思いきや、またぞろ欲しい欲しい病発動で有力な選手を3人FAでかき集めるわ、未完の大器大田を放出するわ、外国人も欲しいだけ取るわで、まったく反省がありません。盟主がこれでは、日本野球はアメリカに追いつくどころか完全ファーム化への道一直線です。なんとかして欲しいもんですが、今の最高権力者がどうにかならない限りはどうしようもないんでしょうね。テレビのゴールデンタイムにプロ野球中継が復活する日は来るんでしょうか?望み薄ですね…。

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by lemgmnsc-bara | 2017-02-23 05:56 | 読んだ本 | Comments(0)