『岳飛伝 一 三霊の章』を読んだ

岳飛伝 一 三霊の章 (集英社文庫)

北方謙三/集英社

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ようやく文庫化されたので買い求めた、北方水滸伝の完結編『岳飛伝』の第一巻。待ちわびてましたね。

とはいえ『楊令伝』の最終巻を読んでから2年も経っていたので、最初のうちは現在の人間関係をもう一度把握し直すというリハビリが必要でした。そもそものオリジナルメンバー108星で残っているのは呉用、史進、李俊くらいでしょうか。後はほとんどが二世。今巻の中心となってストーリーを引っ張るのは王英と一丈青の息子王貴。梁山泊を財政面から支える商品流通の、それも物流部門に文字通り新しい道をつけようと奮闘します。

で、現在の梁山泊はというと、実質的な指導者がいないような状態。なにか活動をしようと思うと、指導部からは物資的な支援があるのですが、各部隊の各々の行動は「志」の下に統一されていた前二作とは大違い。実務担当者としてのリーダーは呉用が務めていますが、リーダーとして引っ張るという役割までは付与されていません。皆が皆、今のままではどこかで大きな破綻が起きるのではないかと思いながら、今のところ大きな不都合は起きていないし、さしあたっての脅威もないのでなんとなくモノゴトが回っていってしまっている状況です。なんというか、今の日本の閉塞感にも似た状況ですね。少し面倒な問題は先送り先送りにして、現在の当事者が責任を問われないようなカタチになんとなくなってしまっている。梁山泊を襲った大洪水の復興が最優先という流れで、中長期的な視点に立って対処すべき問題がとりあえずないことにされている状態なんか、二つの震災の復興に追われている日本の状況にそっくり。で、先送りにした結果のマズい結末の一例が築地移転問題を始めとする都政の混迷です。何かしっくりしないものを感じながらモノゴトを進めていった結果、大きな矛盾が表出する。梁山泊もいつか大きな崩壊を迎えるのではないか?故に北方氏は、完結編の主人公を梁山泊の人間ではない岳飛にしたのではないか?色々な憶測を持ちながら読み進めざるを得ません。

なんてなことを頭の中で思いながら、TVを観ていたら、丁度アメリカのトランプ新大統領の就任式をやってました。で、突然ひらめいたんですが、梁山泊のリーダーをトランプ氏がやったらどうなるでしょうかね?それなりの基盤が整っている状況の下、内容の善悪は別にして、強い言葉で強力なリーダーシップを発揮して、様々な人間からなる集団を一つの方向に持っていこうとする…。こういう人物こそが、この本に描かれている時点の梁山泊には必要なのではないでしょうか。まあ、もしトランプ氏が頭領の座についたら、梁山泊はイスラム国並みのテロリスト集団と化しそうな気もしますがね(笑)。

さて、リハビリも済みましたので、北方水滸伝の掉尾を飾るこの作品じっくりと読み進めたいと思います。ちなみにkindle版での購読となりますので、文庫本の発売とは若干読む時期がズレると思います。



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by lemgmnsc-bara | 2017-01-22 06:50 | 読んだ本 | Comments(0)

なんだかんだで読んだ本のことばっかり書いてます。たまに映画、時々食い物とドライブとラグビー観戦。
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