『拝み屋怪談 禁忌を書く』を読んだ

拝み屋怪談 禁忌を書く (角川ホラー文庫)

郷内 心瞳/KADOKAWA/角川書店

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宮城県で、拝み屋として日々怪しいモノや怪しい人々と関わり続けている郷内心瞳氏によるエピソード集。

私の中で「拝み屋」と言えば、まずは『孔雀王』の主人公、孔雀がイメージされるのですが、実際の拝み屋さんたちには孔雀のような超絶的な法力があるわけではありません。ただ、普通の人よりは怪しさに関する感度が高く、かつそうした怪しいモノたちを追い払うテクニックをいくつか身につけている存在として定義されています。

私は宮城県に数年間住んでいたことがあるのですが、彼の地に拝み屋が実在していたとは知りませんでした。まあ、実際の効果効能はともかく、民間信仰という文化の一部として、こういう存在がいたとしてもおかしくはありません。これは日本全国どこに行っても同じことだと思います。大学の社会心理学の授業で、シャーマニズムを研究していた教授から、こうした拝み屋の現存する具体例として沖縄県のユタについてのオハナシを聴いたことはあります。教授曰く、「沖縄では例えば子供が病気に罹った場合に、医者に行くことと並行して、ユタにその病いの原因を探ってもらうことが一般的だ」とのこと。一つの事象の原因を、科学的な手法と、非科学的な手法の両方からアプローチする。日本の「原風景」である農村が消滅しない限りは、こうした一見矛盾した心象が消え去ることはないだろうと思われます。自然に限りなく近い環境下では、予測のつかない出来事に対しての理屈は「神」を始めとする超常的な存在でないとつけられないでしょうから…。

さて、先にも述べた通り、この本はエピソード集ですので、郷内氏が実際に関わった人物や事象が生々しく描かれています。中でも一番印象的だったのが、一人の女性のオハナシ。彼女はずっと「引きこもり」でしたが、ある時「神が自分の中に入って来た」と自覚するようになり、しかもその神がどんどん暴走していくのです。そこで郷内氏が下した解決法とは?

このオハナシ、私は自分自身のことを振り返って大いに反省させられました。モノゴトは結局自分がどう考え、どう行動するかで決まるのです。自分以外のモノのせいにしているうちは絶対に事態は好転に向かいません。こうした事に気づかせてもらうだけでも拝んでもらう価値はあるのかもしれません。少なくとも私はこの一冊から実際に拝んでもらうのと同等の救いを貰えたと考えています。




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by lemgmnsc-bara | 2016-12-10 18:54 | 読んだ本 | Comments(0)
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