2016年 04月 24日
『ドローン・コマンド尖閣激突!』を読んだ
通勤時に読むための本を忘れてしまった時に、駅の売店でパッと手に取ったのが標題の書。別に私は右翼でもネトウヨでもありませんが、尖閣諸島を巡る、日中間のごたごたに関しては苦々しい思いをかねてより持っておりましたので、その辺の感覚をくすぐられたのだと思います。
尖閣諸島に限らず、南シナ海に関して、最近の中国はかなり露骨に「進出」してきていますね。アメリカの強硬な抗議により、若干その勢いは鈍ったものの、すっぱり諦めるなどという事はまず考えられないでしょう。中国共産党および中国政府は表向きしばらくは動きを控えるでしょうが、「民間」の人間が勝手にいろんなことをやってしまい、その動きを追認するなどという手段を使ってくることは十分に考えられます。
日本は尖閣諸島に直接実力行使があるまでは動きがとれないですね。そういう時に頼りにするのは米軍ですが、たかだか小さな島二つ三つで中国との本格的な対立になるような事態は避けたいでしょう。となると、尖閣には中国の民間人が居座り、日本は毎日その人々に向かって、遠くの海上から退去を呼びかけるだけ、などという事態が出来しないとも限りません。日本としても中国のしっぽを踏むようなマネはしたくないはずですし。全面的に戦争、などという事態になったらそれこそ日本全土が焦土と化すかもしれません。
この小説の舞台は2017年。つまりごく近い未来を描いた物語です。こうした「シュミレーション小説」では現実の情報の正確さと、仮説のリアルさが勝負のキモとなるのですが、この作品に関しては、かなり高いレベルで両方とも実現されていました。アメリカの主要な登場人物だけがやや取ってつけたようなご都合主義的設定になっていますが、よくよく訳者のあとがきを読んでみたら、この主人公たちは一連のシリーズ物の出演者なのだとのこと。この主人公たちが存在する仮想社会の中に、現状の日米中の関係を当てはめると、まあ許容範囲のリアリティーは保ち得ていると思います。
小説の結末は実際の本に触れていただくとして、実際に中国が尖閣諸島を占領した時にアメリカは動いてくれるのか?とか、自衛隊は「実戦」に通用するのか?とか非常に不安になりました。性能はともかく、中国は核保有国でもありますしね。アメリカが中国軍を撃破してくれたはいいが、日本の国土にはあちこち核兵器が使われて、日本国民は壊滅状態、などという事態だってあり得ます。物語としての出来は今ひとつというところでしたが、ココロに潜む漠然とした不安感を改めて認識させてくれた一冊ではありました。
by lemgmnsc-bara
| 2016-04-24 17:36
| 読んだ本