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『ギャンブル依存症』を読んだ

ギャンブル依存症 (角川新書)

田中 紀子/KADOKAWA/角川書店

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著者田中紀子氏は、父や伯父、そして夫までもがギャンブル依存症でかつ、自身もギャンブル依存症に罹ってしまったという過去をお持ちの人物。現在ではギャンブル依存症に関わる諸問題を解決するためのNPO法人を立ち上げ活動されているとの事です。

日本とは不思議な国で、表向きギャンブルは禁止されていますが、競馬、競輪、競艇、オートレースは地方自治体が主宰して収益を上げていますし、パチンコやパチスロはそれこそどんな田舎町にもあります。つい最近巨人の投手が4人ほど野球賭博に関わったとして無期限の資格停止や謹慎になったりしてますが、職場や行きつけの呑み屋で高校野球の優勝校を当てるというようなギャンブルも半ば公然と行われています。本来の法律の主旨に照らせば、こうした行為も、掛け麻雀などもすべて×ですが、金額の多寡によって「お目こぼし」される事が多いようですね。

今現在ですらパチンコパチスロにハマって自己破産、なんてな例が後を絶たないのにオリンピックを見据えてカジノまで導入しようという動きまであるというのだからあきれたもんですね。そんなことで身を持ち崩すのは弱い人間だからで、ほどほどにたしなむ程度が真の大人だ、という声が聞こえそうですが、世の中強い人間ばかりではないし、どこかの製紙会社の御曹司みたいにエリート中のエリートという経歴をもちながらもカジノで膨大なカネをスってしまった方だっていたではないですか。

田中氏はギャンブルにハマってしまう人はアルコール依存症や薬物依存症と同様に明確な病気であり、適切な治療を施さない限り自然に治癒する事はあり得ないと説いています。そして、街をあるけばパチンコ屋に当たるというような状況の日本においては諸外国に比べ、はるかに完治は難しいとも述べています。

人間のココロなんて弱いもの。絶対にやめる、と決意した次の瞬間にはパチンコ屋に飛び込んでいた、という経験は恥ずかしながら私にもあります。自分自身がココロの病いに罹患してしまった今、たとえ一瞬であろうと快楽を求めてしまうココロの動きが病気であるという事は非常に良くわかります。そして誘惑を断ち切ろうとしてもすぐそこに誘惑があればついつい手が出てしまうという気持ちもよくわかります。

最近ではギャンブル依存症の専門クリニックも出来てきているようですし、自助グループという、依存症患者や元依存症患者が集ってお互いに話をしあう、という集まりも多々あるようです。余談ですが、うつに関しても自助グループがあるそうで、私はそちらの方に強く興味を惹かれました。

日本人の死因で一番多いのは自殺。そしてその自殺の原因は多くの場合経済的な困窮であるそうです。自殺者は一人かも知れませんが、その人物の死去により、苦しんだり、より手ひどい経済的な問題を抱え込む等の影響をうける人々は数倍から数十倍はいると思います。消費税の多寡も確かに大きな問題ですが、この問題も決して無視出来ません。カジノ解禁などもってのほか。野放しになっている「合法的」ギャンブルに対しての対策を講じる方が先のはずです。



by lemgmnsc-bara | 2016-03-21 18:29 | 読んだ本

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