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『電通とFIFA サッカーに群がる男たち』を読んだ

電通とFIFA サッカーに群がる男たち (光文社新書)

田崎 健太/光文社

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もう20年以上も前、鴻上尚史氏が主宰する「第三舞台」の『天使は瞳を閉じて』という演劇を観ていた際に「どこにでも顔を出し、何にでも手を出す電通太郎と申します」というセリフがあって大笑いしたことを覚えています。このシーンは恋愛などごく個人的な感情のレベルにまで影響を及ぼしている「情報化社会」というものを皮肉ったものであったと記憶しているのですが、まさにその頃は電通を頂点とする広告業界が一番活気づいていた頃でもありました。「流行」を創り出す存在として、様々な企みを世の中に仕掛けていましたね。

今ではすっかり日本人の生活の一部となったサッカーもその例外ではありません。1980年代までは日本ではサッカーは堂々たるマイナースポーツでした。サッカーのワールドカップは夏季オリンピックよりも観衆が多い、という事実は少なくとも日本では現実味が感じられないオハナシでしたし、日本代表がワールドカップに出ようが出まいが、大して関心ないね、ってのがその頃の日本のマジョリティーであったと思います。

しかしJリーグの発足を機に一気にサッカー人気が沸騰しました。メディアでの取り上げ方も、競技人口もそれまでの王者だった野球をしのぐ勢いをみせるようになり、ワールドカップも大きな関心を集める存在となりました。

こういう状況がいかにして出来し、そしてその陰に電通がいかに絡んでいたのかを丁寧に検証したのが標題の書。併せて、FIFAという組織の内情も詳しく解説し、昨年末に世界を騒がせた「金権体質」についても触れています。詳しくは本文を読んでいただきたいと思いますが、一連の騒動は起こるべくして起こったのだ、ということがよくわかる展開になっています。

潜在的なマーケットをいかにして発見し、それをいかにして商売にして、いかに儲けるか。なるほど電通という組織の持つ嗅覚は大したものです。もちろんこの嗅覚は組織というよりは個人に帰する類いのものなのですが、そうした嗅覚を持ち合わせる人物を社員として抱え、探し出してきた案件を大きなムーブメントにしてしまう組織力も電通ならでは。ある意味反社会的勢力に属する皆様なんかよりはるかにエゲツない体質をお持ちです。

とにもかくにもサッカーというスポーツが一気に過熱し、今や日本国内でもメジャーなスポーツの座を確保したことは事実。サッカーという大きなマーケットを創出した電通は大した会社です。おそらく日々数々のマーケットを採掘しつづけているのでしょう。



by lemgmnsc-bara | 2016-03-15 04:57 | 読んだ本

映画、演劇、お笑い、あまり肩の凝らない小説等々…、基本的にエンターテインメント系に特化したブログにします。

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