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『嘘みたいな本当の話』を読んだ

嘘みたいな本当の話 (文春文庫)

内田 樹,高橋 源一郎/文藝春秋

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事実は小説より奇なり、とは洋の東西を問わない真理のようです。アメリカではポール・オースターという作家がラジオで聴取者から、「嘘のような本当の話」を募り、それを朗読するという番組が大ウケしたそうです。この「オハナシの収集企画」の名前が「ナショナル・ストーリー・プロジェクト」。日本版のナショナル・ストーリー・プロジェクトを作り上げようと、内田樹氏と高橋源一郎氏が選者となって一般の方々からオハナシを募り、精選したものが標題の書。そのものずばりのストレートなネーミングですね。

あるきっかけで知り合った、今まで全く知らない人が、自分の近しい人と知り合いだったり親戚だったりして「世間は狭いねぇ〜」などというオハナシはそれこそその辺にいくらでも転がっていますね。こんな「ありふれた偶然」だけではなく、どう聞いても嘘っぽいのに事実だ、ってオハナシもたくさんあるってことがこの本を読むとよくわかります。日本だけで1億3千万もの人々がそれぞれの人生を生きている訳ですから、それこそ人間の叡智を超えた出来事なんぞ起こって当たり前。ただ、なかなか信じられないだけです。自分の身に起こってみるまでは…。残念ながら私にはまだ「世間は狭いねぇ〜」レベルの経験しかありませんがね。

さて、この本、個々のオハナシもそれぞれ味わい深いのですが、巻末の内田氏と柴田元幸氏(ポール・オースターの作品を数多く翻訳されていますね)との対談が一番面白かった。

同じようにオハナシを集めようとしても、日本人の場合は無意識のうちに「定型」に則ろうとする傾向があるそうです。そしてカタチは決まっていても、オハナシの断片断片を非常に細やかに丁寧に描くのだそうです。対してアメリカの場合は個々人の個性が全面に出て来ていて、同じような内容のオハナシでもまったく違ったテイストに感じられることが多いとのこと。ごく荒っぽく言ってしまえば義務教育で徹底的に「型」を習わされる日本と、様々なバックグラウンドを持った「人種のるつぼ」アメリカの違いが出ているとでも言えましょうかね。こういう風にすぐに彼我の違いに分けて考えてしまう私も非常に日本人的ですがね。

なかなか興味深い一冊でした。この試みはまだ続いているのでしょうか?続編期待しています。


by lemgmnsc-bara | 2016-02-11 19:59 | 読んだ本

映画、演劇、お笑い、あまり肩の凝らない小説等々…、基本的にエンターテインメント系に特化したブログにします。

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