『日本綺人物語』を読んだ

日本綺人物語 (廣済堂新書)

福田 和也/廣済堂出版

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三省堂バーゲン爆買い本の中の一冊。博学多識な福田和也氏が、昭和初期〜40年代くらいまで活躍した人物達に「多角的視点」でアプローチしています。

「多角的視点」とは具体的には、主人公の周りにいた人物のエピソードを取り上げることで、主人公の思想信条やそれに基づいた行動を浮き彫りにするというもの。今まで私の読んだ本の中にはなかった手法で、新鮮ではありました。

ただし、これは私の不勉強がなせる業ですが、主人公として取り上げられた人物がそもそもどんな影響を世に及ぼしたのか、という「正統派」の人物伝に触れていませんので、福田氏のアプローチにより取り上げられたエピソードがその人物の人口に膾炙したイメージと相反するのか、それとも補強になるのか判断がつきませんでした。これでは週刊誌やワイドショーのゴシップ記事を見ただけで、タレントの人となりを邪推している主体性のない人々と同じ過ちをおかすことになってしまう…。まずは、その人物がなぜ世に知られる人物になったのかを知らないといけませんね。

この本のもう一つの特色は「水滸伝方式」を取っているということです。「水滸伝方式」は私が勝手に名付けた手法ですが、とある人物のオハナシに脇役として登場した人物が、次の章では主人公になってオハナシを進め、その次の章ではまた別の登場人物が語り継ぐ、という手法です。林冲の話に登場した魯智深が流れて行く先で楊志に逢い、次は楊志の旅の様子が描かれる、みたいなストーリー展開となっていきますね。まあ、この本は続き物ではないので、ある章では主人公だった人物が別の人物の評伝にはゲストとして登場するという程度の関係性ですがね。

それにしても著者福田氏の知識の豊富さには恐れ入ります。いろんなエピソードを集めるだけでも大変ですが、それをきちんと味のある読み物に仕上げてあるところも凄い。さすがにひと月に100冊読んで300枚書くだけのことはあります。



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by lemgmnsc-bara | 2015-12-05 18:04 | 読んだ本 | Comments(0)