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『ぐっちーさん 日本経済ここだけの話』を読んだ

ぐっちーさん 日本経済ここだけの話

山口正洋/朝日新聞出版

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久しぶりに読んだビジネス書。雑誌AERAに好評連載中の経済コラムをまとめた一冊。

アベノミクスが功を奏して、景気は上向き、株価も上昇とマスコミの論調の鼻息は荒いものの、庶民の実感としては今ひとつピンときていませんね。

理由は簡単、消費税が上がった上に所得の伸びが感じられず、結果として負担が増大したようにだけ感じられるからです。企業には利潤がもたらされても、それが一般の社員に回って来るまでには時間がかかる。私のようなおよそ経営者に向かないような人物ですら、今後の経済動向の不安定さを考えたら、従業員の給料を上げる前に、何かあってもぐらつかないように資金として保留しておくことを考えますからね。賢明な企業経営者の皆様はもっと手堅い策を考えるか、あるいはここぞとばかり攻めに転じるか、何れにしても私のような凡庸な考えに落ち着きはしないでしょう(苦笑)。

さて、標題の書は投資を勧めるセールスマンが持ってくる「そんなに儲かるんなら自分のオカネを投資すれば?」という一般庶民の感情をまず、目一杯肯定してくれています。リスクなくしてリターンなしとは投資に限らず、すべての事象に共通するオハナシではありますが、こと投資に関してはリスクばかりで少しもリターンが期待出来ないような事柄ばかりに思えます。大体世の中、おいしい話を他人に話すようなお人好しがいるわけありません。そんなオハナシがあれば自分で独り占めにしようと考えるのが、この世知辛い世間の一般常識のはず。

だから投資なんか止めなさい、ではなんの内容もありません。こういう状況の中でも確実に儲けている人は存在する訳で、そうした儲けのカラクリをほんのちょいと説明してくれているのがこの本です。ただし、この本を読んだからといってすぐに儲かる秘訣が身につく訳ではありません。そこには自分なりの視点をもつことが必要だし、その視点を持つためにはいろんなことを勉強しなければなりません。そこまでは書いてくれてませんね。

この本を読んで、肝に銘じなければならないと思った事は、マスコミの言う事を鵜呑みにしないということと、経済学の前提の危うさですね。

以前から、マスコミの偏向報道については問題視されていましたが、基本的にマスコミは大きな力を持つ存在に敵対する事はしませんね。従ってマスコミの流す情報は常にその力の持ち主にだけ都合の良いものであるという疑いを持った上で接しなければなりません。円高是正に関しても、国債の増大に関しても山口氏はその矛盾点をズバリと衝いています。

経済学については、人間は自分の利益が最大になるよう行動するという大前提がその根本にあるという指摘に目からウロコが落ちる思い。そうではないからこそ、株式が乱高下したり、ヒット商品が生まれたり、流行廃りがあったりする訳です。個々の人間の行動をすべてデータにしてしまおうとする考え方がそもそも上から目線過ぎ。最近ではビッグデータなどというものが出現し、ますますマクロ的にばかり人間の行動を推し量ろうとする動きが加速してますね。

口調こそくだけてましたが、日本経済というよりは行動原理や哲学に関する内容であるような一冊でした。なかなか読み応えありましたね。



by lemgmnsc-bara | 2015-09-15 18:48 | 読んだ本

映画、演劇、お笑い、あまり肩の凝らない小説等々…、基本的にエンターテインメント系に特化したブログにします。

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