『危険ドラッグ 半グレの闇稼業』を読んだ

危険ドラッグ 半グレの闇稼業 (角川新書)

溝口 敦 / KADOKAWA/角川書店

スコア:




ヤクザのルポルタージュで「勇名」(?)をはせている溝口敦氏による、危険ドラッグに関するルポルタージュ。

危険ドラッグを使用した人間による交通事故などの惨事が発生し、その危険性がクローズアップされ、麻薬と同等の「社会問題」と認識されてからすでに久しい時が流れました。法による規制強化や警察の取り締まりが奏功して危険ドラッグを扱う店は絶滅寸前。それに伴って、危険ドラッグを使用して錯乱状態になったり死亡したりする人間は減っているような気がします。単にマスコミで報道されていないだけかもしれませんがね。今後は「本家」の麻薬同様、アンダーグラウンドに潜ってより先鋭化、深刻化しないような工夫と対策が必要となってくるでしょう。

標題の一冊は、危険ドラッグの発生から、現在に至るまでの歴史を追うとともに、流通ルートや流通に携わる人物たちなどに詳細にアプローチしています。

古今東西を問わず、人間にはこうした「快楽物質」を求める心根が根強く存在しており、一定の「需要」は必ず存在します。従来はその需要を一手に引き受けていたのが麻薬(酒やタバコにも一部は流れていますね)なのですが、近年幅を利かせてきたのが危険ドラッグ。そして、その製造から流通に携わるのが「半グレ」と呼ばれる人々。

「半グレ」とは堅気ではないものの、ヤクザの組織に入っているわけではない人々のこと。「社会に出た不良」っていうイメージでしょうか。やや黒寄りのニッチなグレーゾーンに跳梁跋扈する胡散臭い連中のことです。彼らの目的はとにかくカネ。重大な犯罪になりさえしなければ、多少やばくても手を出し、カネが出来たらとっとと逃げるというのが基本的な行動パターン。最終的には合法的な投資で儲けるための元手を稼ぐため、という目的で非合法なことに手を染めるケースも多いようです。

彼らは下積みが長く、上部組織への上納金を取られる「ヤクザ」組織には入らず、アナーキーに稼ぎまくります。中国マフィアが日本に進出してきた際に「日本のヤクザには一定の掟や慣習があって、たとえば抗争がおこったとしても、お互いがうまく矛を収める方法がいくつかあるが、中国マフィアにはそれが通用しないために、抗争が過激化する一方だ」というような論調の報道を見聞きした覚えがありますが、半グレも中国マフィアに似たようなところがあります。従来のヤクザと同じような「落としどころ」は存在せず、限界まで突っ走る。ただし、組織でない彼らは暴力に訴えることはしないし、先にも書いた通り、一生を半グレのままで過ごす予定もない。さっと現れてはすっと消えては行くものの、有象無象が無限に湧いてくるってな感じでしょうか。

彼らはあくまでも「需要」を満たす存在。つまりそん需要が存在する社会そのものがおかしいのではないか?という問題が提起されていたように思います。彼らを駆逐するためにはグレーゾーンをどんどん減らしていくしかないのですが、ある領域のグレーゾーンが減少すると別の分野にまた新しいグレーゾーンが出現する。まさに社会の歪みの象徴が半グレなのでしょう。
[PR]
by lemgmnsc-bara | 2015-06-13 09:13 | 読んだ本 | Comments(0)
<< 『エディー・ジョーンズの監督学... 『サウスポー論』を読んだ >>