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『御用牙』を読んだ

御用牙 【コミックセット】

STUDIO SHIP/小池書院

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最近、Kindleで全巻販売されていたので衝動DLしました。横紙やぶりの同心で「かみそり半蔵」の異名を持つ板見半蔵の活躍を描く時代劇コミックです。

この作品、就職直後に住んでいた社員寮の共用スペースに全巻揃っていたので暇をみては読んでいた覚えがあります。江戸の人々の暮らしを守るために「本来の業務」である悪人の捕縛・取り締まりだけではなく、交通問題からゴミ収集の問題まで解決するためにかけずりまわるかみそり半蔵。表では不浄役人と蔑まれる下級武士ですが、裏では3000人を統べる非人頭の善七を動かすことができたり、大奥や寺社などの治外法権の場所にも自由に出入りできる。幕閣にすら啖呵を切って庶民のための施策の実行を迫る。中村主水とは真逆の方向性をもつ「仕事人」ぶりです。

おまけに持ち前の巨根と鍛錬により女性を喜ばす技術にも長けている…、あやかりたい、蚊帳つりたい。男としての理想をすべて体現したスーパーマンですね。

この半蔵が縦横無尽に暴れまくり、時には非合法な手段を用いてでも悪や不正を糺す。典型的なダーティーヒーローの物語です。

物語のクライマックスは鳥居耀蔵との死闘。歴史上では倹約令の執行者として悪名高い鳥居甲斐守耀蔵ですが、耀甲斐(ようかい=妖怪)というあだ名を名付けたのが半蔵という設定になっています。庶民を苦しめる悪性を布く南町奉行の鳥居に立ち向かう半蔵ですが、総力戦に敗れ、一度は鳥居の軍門に下ることになります。またこの鳥居という人物がただの悪党ではないという設定。半蔵を肉体的にも精神的にも追いつめるだけ追いつめるのです。この辺のドロドロさは、実際の物語を味わってくださいとしか言い様がありません。

紆余曲折を経て、鳥居を倒した半蔵は別人格となって大坂の奉行所に「転勤」します。ここでは豪商を取り潰してその財産を財政再建に充てようとする幕府と真っ向から対立することになります。迫り来る幕府隠密と、それをしのごうとする半蔵とのせめぎ合いが後半のヤマ場。白刃をきらめかせての戦いだけではない、暗闘もリアルに描かれます。胸の締め付けられるようなシーンもあります。

そしてすべてをしのぎ切り、大坂の街の平和を守ることに専念できるようになった半蔵を襲った思いがけない結末…。この「無念さ」は必ずしもハッピーエンドをよしとしない日本人の感情には訴えるところ大です。

人気シリーズであったためか、「その後」を描く続編が結局描かれることになります。この辺は難しい判断ですね。もっと半蔵の活躍をみたいか、それとも余韻を残して終わるか?まあ、続編もそれなりの味はありますがね…。

今回のKindle化に際してはすこし構成をいじってあるようです。読んでいくうちに「あれ、こんなオハナシがあったはずだけど」とか「あれ、このオハナシってこのタイミングだったっけ」という感覚を幾度か味わったのですが、後々の巻に「番外編」として収録されていました。自分の記憶違いではなかったとわかってホッとしました。



by lemgmnsc-bara | 2015-03-14 06:55 | 読んだ本

映画、演劇、お笑い、あまり肩の凝らない小説等々…、基本的にエンターテインメント系に特化したブログにします。

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