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『チエちゃんと私』を読んだ

チエちゃんと私 (文春文庫)

よしもと ばなな/文藝春秋

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久しぶりに読んだ小説らしい小説。よしもとワールド(どこかのテーマパークみたいだな)全開の作品でした。

主人公はアラフォーの独身女性。親戚が経営するセレクトショップのバイヤーという立場ですが、イタリアに買い付けにいくことと店の手伝いをすることが主な職務。趣味と実益が一致している上、「出世」のためにがつがつ働く必要もないといううらやましい境遇。こういう職環境は一つの理想像ですね。時間やノルマに追われることなく、自分のセンスで勝負し続け、結果として見識が高まっていき、より高度なスキルとして蓄積されていく…。仕事というものの一つの理想像です。

そんな主人公のもとに転がり込んでくるのが従妹の「チエちゃん」。彼女はシングルマザーの母親を亡くし、その遺産を相続したので当面の生活には困らないのですが、少々「不思議ちゃん」が入っているので一人で生活していくのは少々難しそうだという性格設定がなされています。

この二人はお互いがお互いを求め合うが、別に束縛をしている訳ではないという緩やかながら強固な関係を築いています。片方が欠けた生活にはとてつもない寂寞感を感じるものの、主人公に彼氏がいたりしてもそれはそれとして受け入れる。姉妹のような母娘のような友人のような曖昧な関係。一言で言ってしまえば「家族」なんだということなんでしょうね。

よしもとワールドでは、普段は自明のこととして感じられている家族のつながりというものが、実は日常のこまごまとした事象の積み重ねによって構築された地層のようなものだということがさまざまな言葉を尽くして語られます。激震が襲って来てもびくともしないものもあれば、ほんの些細なことで修復不可能なほど壊されてしまうものもある。

よしもとワールドに触れる度、「家族」という人間関係の玄妙さや不可思議さに対する想いを新たにさせられます。とりあえず、最高権力者様との関係をもっと深めていかなきゃならんな、ということも。文中の「チエちゃんと私」ほどの密着ぶりではないものの、それでもベターハーフであることに間違いはありませんから(笑)




by lemgmnsc-bara | 2015-02-22 05:53 | 読んだ本

映画、演劇、お笑い、あまり肩の凝らない小説等々…、基本的にエンターテインメント系に特化したブログにします。

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