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『毒蝮流!ことばで介護』を読んだ

毒蝮流! ことばで介護 (講談社+α新書)

毒蝮 三太夫/講談社

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もう40年も続くTBSラジオ朝の名物番組と言えば「ミュージックプレゼント」。コーナーMCの毒蝮三太夫氏による年寄りいじりを中心とした面白いプログラムです。

この番組は商店や町工場などの場所に毒蝮氏が自ら出向き、そのご近所の人々を集めて、トークを繰り広げるというのが主な内容。ただし毒蝮氏はその名の通り「このババア」「くたばり損ない」「うるせえな、このくそガキ」などという毒を吐きまくります。不思議なことに集まった人々で怒る人は皆無。それどころか「くたばりぞこない!」と声をかけられたお年寄りたちは実にうれしそうな笑い声をたてています。この雰囲気が大好きで、営業職時代は車の中で毎日聴いていました。

普通の人が口にしたらそれこそ血をみるような事態になりかねないような言葉ですが、なぜ毒蝮氏は嫌われないどころか、どこに行ってもお年寄りのアイドルであり続けられるのか?

その理由を毒蝮氏自身が語っています。
「じじい、ばばあと怒鳴った後はにっこり微笑んできちんとその人の名前を呼んであげる。そして今の日本はあなた方の苦労を礎として築かれたものだという尊敬の気持ちを持つ」というのがそれ。そしてこの心持ちと習慣は介護の現場にも必要だと話がつながっていきます。

「おじいちゃん」「おばあちゃん」ではなく「留吉さん」とか「ハナさん」というように固有名詞を呼んできちんとその人に向き合っているということを示す。そして、その人が積み上げて来た苦労の歴史をリスペクトする。人間関係の基本中の基本ですが、ないがしろにされている場面が多いようですね。つい最近マスコミで大きく取り上げられた介護マンションでの虐待なんかとは対極にある考え方です。

40年続いているということは当然その分毒蝮氏も歳を取っている訳で、そう遠くない将来、毒蝮氏自身が本当にくたばってしまう時がきてしまうのは確実なのですが、残念ながら、この「ババアトーク」には後継者はいません。毒舌だけなら誰でも吐けますが、高齢者に対する敬意というのは教えて身に付くものではありません。誰がやっても怒りを買っておしまいってな結果になってしまいそうです。



by lemgmnsc-bara | 2015-02-19 20:19 | 読んだ本

映画、演劇、お笑い、あまり肩の凝らない小説等々…、基本的にエンターテインメント系に特化したブログにします。

by 黄昏ラガーマン
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