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『風立ちぬ』鑑賞

風立ちぬ [DVD]

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CMにも使われたエンディングテーマ、荒井由実の『ひこうき雲』が印象深い宮崎アニメ。

浅学にして知らなかったのですが、この映画の主人公にして零戦の設計者である
堀越二郎氏は、わが故郷群馬の、それも私の親父と同郷の藤岡出身だったのですね。東京帝国大学を首席で卒業し、世界に名だたる戦闘機零戦を設計した人物が、いまや何の変哲もない一地方都市藤岡の出身だったとは…。まずこのことに軽い衝撃を覚えました。

物語は堀越氏の半生をモデルに、堀辰雄の代表作『風立ちぬ』のエッセンスを盛り込んだストーリー展開となっています。

頭脳明晰かつ正義感の強い堀越氏は帰京する汽車に乗り合わせている最中に関東大震災に被災します。そこで女中に付き添われた名家の少女菜穂子と出会います。この菜穂子は後に堀越氏の妻となりますが、当時一番の死病であった結核に罹患し、嫁いでほんの数ヶ月を過ごしただけで永遠の別れとなってしまいます。この物語の中では一番悲しいエピソードです。堀越氏の妻となりたいが故に、療養所を抜け出して、長時間汽車に揺られて堀越氏の下宿先まで尋ねてくる姿には、アニメとはいえグッとくるものがあります。国家のための飛行機作りに没頭する堀越氏を気遣い、ある日そっと去り行く姿にも…。

そして、堀越氏は数々の失敗にもめげずに、ついに零戦を完成させるのですが、結局日本は敗戦国となり、零戦に乗った数多くの若者が命を落としたことを思いながらエンディングを迎えるという非常に重いエンディングを迎えます。必死に努力した。そして成果もきちんとカタチになった。しかし、最大の目標であった戦争に勝つという事は果たせなかった。しかも自分の作った飛行機によって、尊い命が多数失われた。私なら重圧に苛まれて、いたたまれなくなると思います。堀越氏はいずれ愛する菜穂子のいる天国(堀越氏が天国に行けるかどうかは議論の別れるところだと思いますが、少なくとも菜穂子のいる場所は地獄としては描かれていません)に向かうことになる。それが唯一の救い。

多少ひねくれた見方をしました。ストーリーそのものは非常に良く作られているように感じます。菜穂子との切ない別れも、兵器という「人殺しの道具」を作ったことに対する罪悪感みたいなものも、描き方こそあっさりとしていますが、とてつもなく重たい問題です。絵面はほのぼのと美しい。血なまぐささや悲惨さを一切感じさせません。本当は皆が楽しめる旅客機を作りたいという堀越氏の願望を、夢という形で、作中に頻出させるところも重々しさを感じさせない描き方です。どこか一点だけでも堀越氏の悲しみを強調する描写があれば、物語としてより締まった作りになったような気がするのですが、まあこれは私の好みの問題かもしれません。

最後に流れる『ひこうき雲』は曲調といい、歌詞といい映画の世界に見事にマッチングしてましたが、マッチし過ぎていて、ややクドいって感じもしました。
by lemgmnsc-bara | 2014-10-23 17:13 | エンターテインメント

映画、演劇、お笑い、あまり肩の凝らない小説等々…、基本的にエンターテインメント系に特化したブログにします。

by 黄昏ラガーマン
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