2013年 06月 30日
『日本防衛論 グローバル・リスクと国民の選択 』を読んだ
Kindleでタイトルだけ見て衝動ダウンロードした一冊。「日本防衛論」というからには、尖閣諸島、竹島、北方領土の領有権問題と、それに伴うリスク、さらには北朝鮮の核開発問題などが取り上げられると単純に考えていましたが、さにあらず。本書のテーマは副題の「グローバル・リスクと国民の選択」の方にありました。
浅学にして知りませんでしたが、著者によると「世界経済フォーラム」という組織が毎年世界が直面しているリスクというのを発表しているそうです。その中で深刻な被害を生み出す上位5項目として挙げられているのが「システミックな金融危機」「水資源の不足」「食糧不足」「財政不均衡」「エネルギーと食糧価格の極端な変動」で、その各々のリスクについて解説を加えた上で、日本はこの先どうして行くべきか、について著者の考え方を示しているというのがこの本の構成でした。
村上龍氏の著作などでも繰り返し述べられている通り、日本という国は、官僚も民衆も「想定外」などという事態は起こらないだろうという根拠のない楽観論に基づいて行動する傾向が強いようです。一昨年の「東日本大震災」などは想定外の出来事の最たるものですが、これによって過去からの問題点先送り、いざコトが起こったあとの対応のまずさなどが白日の下にさらされてしまいました。
官僚の皆さんというのは、答えが決まっている問題の解答を導き出すのはお得意な方が多いようですが、現実には答えの決まった問題など存在しません。さらに言えば何か新しいコトをやろうとしても法律や先例などでがんじがらめになっているということも見逃せませんね。縦割り行政の矛盾やら、硬直化した制度至上主義などは以前から指摘されていましたが、結局は先送りに先送りを重ねて問題は解消されないままです。官僚一人の任期はせいぜい40年ほどですが、国家の寿命はもっと長いですからね。どこかでだれかがなんとかしないといけないのですが、政治家達はパワーゲームに終始しているしなぁ…。
著者の考えを紹介するまでもなく、そもそも日本の現状そのものが絶望的なんですよね。そこに前述したリスクがふりかかってきたらどうなるのか…。暗澹たる気持ちにならざるを得ません。
著者は最終章で日本のとるべき指針を四つ提示していますが、なかでも一番大事なのは、最後の「問題解決に向けての長期計画をしっかり策定し、確実に遂行する」ということだと思います。事業仕分けだの、アベノミクスだのの短期的な政策に終始するのではなく、今後100年くらいの日本を見据えた長期計画をたて、根本的な問題の解決につなげていっていただきたいものです。そういう観点から国政選挙を考えると、無関心ではいられなくなりますね。でも今の政治家はみんな粒が小さいんだよなぁ…。
by lemgmnsc-bara
| 2013-06-30 07:21
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