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『歓声から遠く離れて: 悲運のアスリートたち』を読んだ

歓声から遠く離れて: 悲運のアスリートたち (新潮文庫)

中村 計 / 新潮社

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スポーツライター中村計氏による、5人のアスリートに関するルポルタージュ集。題名にある通り、才能に恵まれ、一度はその輝きで世界中から注目を浴びたものの、意地悪くいえば尻すぼみに終わってしまった人ばかりを集めています。厳密にいうと、最後に紹介されている栗秋正寿氏の「種目」である登山は競技ではないし、栗秋氏自体がまだチャレンジを続けているので、ちょっと他の四人とは位相が違うような気がしますが…。

紹介されているのは、前述の栗秋氏の他、マラソンの小鴨由水氏、ゴルフの佐藤信人氏、陸上三段跳びの杉林孝法氏、水泳平泳ぎの高橋繁浩氏。残念ながら、私にとっては興味のないスポーツばかりだったので、そもそもこの方々がどのような記録を残し、どのように挫折したのかについてまったく知りませんでした。わずかにマラソンの小鴨氏が彗星のごとく現れてきたことが記憶の片隅にひっかかっていたくらいです。

世界と戦うような一流のアスリートはそれこそ、ほんのちょっとした事でブレイクすることもあれば、逆にまったく実績を挙げられない状態になってしまうということもあります。指導者との人間関係であったり、小さな故障であったり、無神経なギャラリーの行為だったり…。些細なほころびがどんどん大きくなり、やがて競技生活を破綻させるほどの大きな傷になっていく。人生の縮図そのものですね。

著者中村氏は様々な人物にアタックしますが、挫折の記憶を喜んで語ってくれるような方は少なかったそうです。やっぱり「あの人は今?」みたいな企画には誰しも出たくはありませんね(笑)。一瞬でも栄光に彩られた瞬間を知っている人なら尚更です。

私がこの本に載せる人物を選ぶとしたら、清原和博氏です。2000本安打を達成し、大舞台には滅法強かった清原氏を「悲運のアスリート」と呼ぶ事に違和感を感じる方もいるかもしれませんが、高校一年の夏の強烈なきらめき、そしてプロ入り一年目にプロ野球界に与えた衝撃の大きさをついに超える事が出来なかったという印象が強く残っています。末は三冠王まで狙える才能と評されながら、ついに打撃三部門のタイトルには一度も手が届きませんでした。もっともっと偉大な記録を残せたはず…、という思いは本人が一番強く持っている事でしょうけどね。
by lemgmnsc-bara | 2013-06-04 20:42 | 読んだ本

映画、演劇、お笑い、あまり肩の凝らない小説等々…、基本的にエンターテインメント系に特化したブログにします。

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