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『井沢式「日本史入門」講座〈4〉「怨霊鎮魂の日本史」の巻』を読んだ

井沢式「日本史入門」講座〈4〉「怨霊鎮魂の日本史」の巻 (徳間文庫)

井沢 元彦 / 徳間書店

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独自の歴史観を基にした『逆説の日本史』で常に歴史研究に対して新風を吹き込んでいる井沢元彦氏が、『逆説の日本史』で主張したいことをもう一段階噛み砕いて解説しているのがこの『井沢式「日本史入門」講座』シリーズ。

今巻は「井沢史観」の一つの大きな柱である「怨霊信仰」について解説しています。

例えば今、いきなり幽霊に出くわして、危害を加えられそうになったら、あなたはどんな行動を取りますか?恐らく、多くの人が「念仏を唱える」と答えることでしょう。しかし、井沢氏はこういう考え方は日本独自のものだと喝破しています。仏教の根本思想は輪廻転生であり、人間という存在はたまたま現世での仮の姿であり、この世で死ねば別の世界で別の存在として生き返るというのがその主張するところです。つまり、仏教の考え方によれば「怨霊」などというモノは存在しないのです。

ではなぜ、「怨霊」が出現した場合に念仏を唱えるのでしょう?それは日本に根付く「怨霊信仰」というものに仏教が取り込まれた結果だという解説はストンと腑に落ちました。

そして、『逆説の日本史』の読者にとってはおなじみの六歌仙鎮魂説や源氏物語鎮魂説なども詳しく解説されています。文学の分野においては、現実の世の権力者が悪役に仕立てられ、その権力者によって虐げられた人物や一族がヒーローに祭り上げられる。これこそが怨霊に祟られないための最先端のテクノロジーだったというわけです。実利はしっかり取る代わりに名誉を与えてなだめてしまおうということです。なるほど、と思わせてくれる解説です。

久しぶりに井沢氏の歴史物をじっくりと読みましたが、相変わらずの面白さでした。次巻も楽しみです。
by lemgmnsc-bara | 2013-05-23 20:59 | 読んだ本

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