2013年 05月 20日
『うほほいシネクラブ』を読んだ
フランス思想を中心に映画や武道などについても評論を行っている内田樹氏が、あくまでも「肩の力を抜いた」という体で映画について語った一冊。
難解な古典に偏ることなく、現代ハリウッド作のアクション映画などにも触れているので、紹介されている作品の中には結構観たものもありました。その内容と評論について考え合わせてみると、明らかに内田氏は「肩の力を抜いた」ふりをしているのだということがよく分ります。持ってくるコンテキストがとにかく豊富なんです。まあ、文中で「映画とそれ以外のものとの関連性について語る」、と述べていますから、コンテキストを豊富に持っていなければどうしようもなくなっちゃいますけどね。先日紹介した町山智浩氏の著作同様、この一冊も「表層批評」ではないということですね。
特に印象的だったのは、この映画のこのシーンはあの映画のあのシーンをパクっていると堂々と言い切ってしまうこと。「世の中に純粋なオリジナルなどごくわずかしか存在しない」というのは一つの真理ですから、アイデアを拝借して自分なりに表現し直すってのはありなんでしょう。クエンティン・タランティーノなんかは、むしろ積極的に好きな映画をつぎはぎしたりしてますからね。オリジナルよりコピーの方が劣ると考えることがそもそもおかしいと、かの大瀧詠一師匠もおっしゃっています。いいんです、その映画を観ているその時間が「快適」であれば…。
閑話休題。内田氏はまた、各々の映画に関して、好き嫌いをはっきり述べてもいます。まあ、これも評論としてはありでしょう。モノの良し悪しを論じる際に個人的な好みはどうしても出てしまいます。好悪の基準をはっきりとさせて評価の軸をぶれさせなければ良いと思いますね。出来は悪いけど、この女優が出てるから、作品としての評価はあっちの佳作よりこっちを上とする。ここまで極端だとブーイング食らうでしょうけどね。
ここ最近二冊の映画評論を読んで、なにしろまずは『ダーティーハリー』を観なきゃいかんな。と思っています。
by lemgmnsc-bara
| 2013-05-20 19:29
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