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『環境ビジネス5つの誤解』を読んだ

環境ビジネス5つの誤解 (日経プレミアシリーズ)

尾崎 弘之 / 日本経済新聞出版社



昨今、政治も経済も「環境」がキーワード。環境という「錦の御旗」を押し立てれば、大抵の反論は引っ込めざるを得ないという状況ですね。

しかし、本当に環境問題って重要な問題なのでしょうか?例えば、地球温暖化という問題が人類全体が抱える喫緊の課題として大きく取り上げられていますが、今年の冬の厳しい寒さや大雪は何故起こったのでしょうか?地球が温暖化しているというなら、冬はもっと暖かくていいはずですが、ここ数年、夏の暑さも厳しければ、冬の寒さも厳しいという状況が続いているような気がします。

もっと分らないのが二酸化炭素の排出権という奴です。文字通り、なぜ空気に値段がつくのでしょう?しかもこの排出権を当て込んだマネーゲームまで出来しています。ますます胡散臭いですね。なにか根本的なところで大きな考え違いをしているような気がしてなりません。お偉い学者の先生達や、様々な機関の調査結果を受けての現象だというのは理解しているつもりではあるんですがね…。

さて、標題の本は、題名通り、環境問題にまつわる5つのトピックスを取り上げ、そのそれぞれの問題点を明確にしています。

まず第一のトピックスは太陽光や風力などによる「クリーンエネルギー」について。二酸化炭素も排出しないし、放射能の危険性もない。自然現象をエネルギーに転嫁できたらこれほどいいことはない。確かに御説ごもっともなんですが、このエネルギーを効果的に使うためのインフラへの投資が莫大になることが予想されており、なかなか進行していきません。この分野では最先端を行っていたドイツも結局そのコストの負担に耐えきれずに、方針の転換を余儀なくされています(このことは第三のトピックスとして詳解されています)。こういう問題こそ国連みたいな組織がイニシアティブを執って各国の協力を取り付けるべきだと思うんですがね…。

第二は電気自動車の普及をめぐる話題。電気自動車は確かに温室効果ガスを排出しません。しかし、充電施設の絶対数が不足していることと、車体価格の高さがネックになって期待通りの浸透度には至っていません。本格的な普及のためにはそれこそ街の辻々にせいぜい5分程度で休息充電できるようなインフラの整備が必要ですね。そうでなければ、いつ止まってしまうかも知れない電気自動車を転がそうと考える人間はいません。ちょっと考えればすぐわかるオハナシです。それに、もっと根本的な問題として、電気自動車に充電するための電力を発電するのに化石燃料を使っていたら意味がないんじゃないか?って疑問も湧いてきます。

第三は無理矢理に第一のトピックスにくっつけてしまったので第四番目。バイオ燃料は本当に環境に優しいのか?これも考え方によっていくらでも変化しうるモノですね。大前提とされている、植物由来の燃料はその植物が吸収したと考えられる二酸化炭素と相殺されるという理論がまず怪しい。そう看做すことは本当に正しいのか?また、バイオ燃料に転化しやすい作物ばかりを優先的に作ることは環境破壊につながりはしないか?という問題もあります。これは2年や3年というスパンでは捉えきれない問題ですね。

第五は水ビジネスをリードしているのは日本だという説。日本は水資源が豊富な国というのが「常識」であり、その治水技術は世界をリードしているというものですが、インフラの充実度はともかくも、技術的なノウハウは決して世界一とは言えないそうです。

最終章で筆者は、今後の環境ビジネスへの関与の仕方として、インフラではなくノウハウや人材の提供を根本的なモデルとすべきだと主張しています。不幸にして、日本は公害で甚大な被害を被った過去がありますが、その過去を踏まえて、公害を起こすことなく環境に配慮した都市を作り上げるノウハウと人材を輸出するべきだと説いています。日本のハードの優位性が薄れている今、この考え方は環境という分野に限ったことではないと思います。でもまずは、この分野におけるソフト提供にチャレンジしてみるってのはアリだと思いますね。手をこまねいていてもオイシイところを攫われちゃうだけですから。
by lemgmnsc-bara | 2013-03-07 20:47 | 読んだ本

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