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『世界で勝たなければ意味がない―日本ラグビー再燃のシナリオ』を読んだ

世界で勝たなければ意味がない―日本ラグビー再燃のシナリオ (NHK出版新書 392)

岩渕 健輔 / NHK出版

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元日本代表にして、一昨年のワールドカップ以後日本代表のGMに就任し、活動している岩渕健輔氏が、日本代表の現状と目標を率直に語った一冊。

2019年に日本でラグビーワールドカップが開催されると決定して以降、常に我々ラグビーファンの心につきまとう大きな不安は「果たして日本代表はベスト8に残れるのか?」というものです。開催国として、最低でも予選リーグくらいは突破しないと世界に大恥をさらすことになります。いままで開催国が予選リーグを通過できなかったことはないんですから。世界で三番目にオーディエンスの多い大きな世界大会でしかも自国開催なのに予選も突破できない弱小国なのか?そんな弱い競技なんか観る価値はないし、当然応援もしない、というのが、一般の方々の自然な感情でしょう。競技者のすそ野も急激に狭まって、どんどん先細りになっていってしまうでしょう。まさに日本ラグビーの存亡の危機なのです。

そこで起用されたのが、ヘッドコーチのエディー・ジョーンズ氏であり、ゼネラルマネージャーの岩渕氏というわけです。岩渕氏は自身も日本代表に選ばれたことのある優れたプレーヤーでもあり、イングランドのサラセンズという名門チームなどでプレーしたこともある人物。選手サイドの考え方も理解出来る上に、世界の潮流もトップチームの運営方法などにも明るい希有な人物です。まさに切り札と言ってよいでしょう。

私は「みなとスポーツフォーラム」というイベントで彼の講演を拝聴したことがあります。非常に分りやすい語り口で過去からの問題点と、現状を分析していましたね。場が開放的に過ぎたのでしょうか、やや今後の具体的対策については説明が不足していたようにも感じましたが…。

この本でも同じようなことを感じました。過去の失敗を踏まえ、その原因を分析することで、その要因を一つ一つ潰していく、という考え方まではわかったのですが、たとえば日本代表と外国のチームが対戦する時に必ず語られる「体格の差」を埋めるために一体何をやるのか、についてもっと具体的に説明して欲しかったという気がします。その具体的な方法を公表することが、日本オリジナルのラグビースタイルを草の根レベルから構築するのに最も必要なことなのではないでしょうか?

昨年行われた欧州遠征では、ルーマニア、グルジアといった同じレベルの国を相手にアウェイで勝つという成果をみました。強化の歩みは決して早いとは言えませんが、それでも着実に前進していることは事実のようです。しかし、強豪国はもっと進化するでしょうし、なにより国を挙げての「代理戦争」として気合いの入り方が違ってきます。日本という国全体に日本代表への追い風となるようなムーヴメントを起こすことが出来るのか?岩渕、エディーのコンビをトップにいただく日本代表のスタッフたちに大いに期待したいところです。
by lemgmnsc-bara | 2013-02-02 07:02 | 読んだ本

映画、演劇、お笑い、あまり肩の凝らない小説等々…、基本的にエンターテインメント系に特化したブログにします。

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