人気ブログランキング | 話題のタグを見る

『だまし食材天国』を読んだ

だまし食材天国 (日経ビジネス人文庫)

武井 義雄 / 日本経済新聞出版社

スコア:



アトランタ在住の元医師武井義雄氏による、食材の真贋に関するルポルタージュ。

古くは「サケ缶」の材料が「カラフトマス」だったことから、近年の飛騨牛の偽装にいたるまで、食材にまつわる、このテのオハナシは枚挙にいとまがありませんね。「どうせ素人には分りゃしねーよ」とほくそ笑む悪徳業者の顔までがちらついて胸クソの悪いことったらありません。しかし、自分の舌では判断がつかないからボッタクラレていても気がつかない…。怒りを通り越して絶望を感じる事態です。

著者はまず、日本の法律がザル法であることを指摘しています。一番の大きな誤りは「一番長く栽培または飼育された土地をその産地としてよい」というものでしょう。中国で稚魚から育てられたウナギでも最終的に浜名湖に持ってきて少しでも長く育てれば堂々と「浜名湖産」を名乗れる。不自然極まりないですね。近年も同じ手法で中国で取れたアサリを日本の海に一旦「放牧」して日本産を名乗っていた例がありました。

牛肉の高級ブランドとされる「和牛」もしかり。知らないうちにアメリカ産の「和牛」を食わされている可能性は大いにあり、です。もっとも松坂牛や神戸牛といった「正統」なブランド牛も佐賀県当たりから仕入れた仔牛を肥育させたものが一般的なんですが…。

消費者としては、せめて法律で担保された産地を信じたいところですが、最後の頼みの綱さえ失われているというのが実情。こういう根本的な問題こそ解消に努力して欲しいものですよ、政権与党の国会議員の皆さん。

この本には他に、松茸や牡蠣などの品種や特徴がコンパクトにまとめられて書かれていました。残念ながら、実物の写真などが載っていなかったので、すぐに活かすには難しい情報でしたが…。

こういう本を読む度に、「本物」の味とは何かを学ばなければいけないと真剣に思うのですが、かかるコストの膨大さを考えるとついつい二の足を踏んでしまいます。小難しい理屈はいいから、きちんとした食物が口に入る国にして欲しいものです。
by lemgmnsc-bara | 2013-01-31 20:09 | 読んだ本

映画、演劇、お笑い、あまり肩の凝らない小説等々…、基本的にエンターテインメント系に特化したブログにします。

by 黄昏ラガーマン
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31