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『光媒の花』を読んだ

光媒の花 (集英社文庫)

道尾 秀介 / 集英社

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腰巻きの「山本周五郎賞受賞」の文字につられて買ってしまったのが標題の書。道尾秀介氏の作品を読むのは初めてです。

ある一つの話の主人公が、別の話では脇役として登場し、ストーリー同士も少しずつ関連がある連作小説集。最初二つのオハナシは殺人事件がモチーフになっていたので、「罪を犯した人間の苦悩」みたいなものがこの連作小説集を貫くテーマなのかと思って読み進めて行ったら、さにあらず。長年不仲だった母親と息子の雪解けを描いた作品あり、教師と子供の交流をほのぼのと描いた作品もありました。読み進めて行くうちに最初感じた緊張感がとけて行く、なかなか凝った構成になっていましたね。

人間だれしも人に言えない悩みの一つや二つは抱えているものだし、禁止区域での歩行喫煙や、車がまったくいない時の歩行者としての信号無視なんていう「法律違反」はちょいちょいと起こしていますね。さすがに殺人を犯したことを秘密にしている人はそうそういないとは思いますが、罪の軽重を別にすれば、誰にでも思いあたる「心理状態」ではあると思います。

そして身近な人に迫ってくる死の影への不安や、わだかまりが解けるまでの心理の葛藤なんてのも人生経験を積むうちには必ず経験することです。自分が経験したさまざまなココロの動きを思い起こさせてくれる作品集でした。文章ももちろん味わい深いのですが、文章によって喚起させられた取るに足らないような想い出の数々の方により心が動かされました。不思議な作品集でしたね。

道尾氏については、すぐに別の作品を読もうという興味までは感じませんでしたが、折をみて、代表的な作品は読んでみたいと思います。
by lemgmnsc-bara | 2012-12-15 06:05 | 読んだ本

映画、演劇、お笑い、あまり肩の凝らない小説等々…、基本的にエンターテインメント系に特化したブログにします。

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