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『人生を歩け!』を読んだ

人生を歩け! (角川文庫)

町田 康 / 角川書店(角川グループパブリッシング)

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町田康氏といしいしんじ氏による対談集。両氏のそれぞれがかつて住んでいた街を訪れて、当時の想い出を語り合うという体裁をとっています。

昔住んでいた街…。やっぱり私の場合いちばん想い出深いのは仙台ということになるんでしょうかね。近所に行きつけの飲み屋などはなく、ひたすら安くて量の多い食い物屋を探し歩いていたあの頃。一人で十二指腸潰瘍の痛みに耐え、這うようにしてようやく行った近所の内科医院。洗濯をサボっていたお陰でいよいよ翌日着るものが無くなり、夜中の三時までかかってコインランドリーで乾燥させたり、散々夕食を食った後だというのに、しこたま食糧を買い込んだコンビニ。当時日の出の勢いだった酒の安売り「やまや」。そして青春の原点、国分町。確かに住んでいた街には懐かしさを超えるものが残っているような気がしますね。

町田氏が住んだ、成増、武蔵関、ときていしい氏の想い出の地浅草を巡り、最後はいしい氏の当時の住居がある三崎へ。そのそれぞれの場所でそれぞれの想い出を語るのですが、行ったこともない土地なのに何故かノスタルジーを感じます。恐らく、自分自身の中にある過去の居住地に対する郷愁のようなものが呼び覚まされるからでしょう。晴れがましい日よりも、落ち込んだときのコトなんかの方により共感できるのは、やはりその土地がそれだけ日常生活に染み付いていたということ。日常生活なんて、たいていしみったれたもんですからね。あ、私だけか(苦笑)。

「暗黒の三年間」を過ごした土地のことは思い出したくありません。そして東京にカムバックしてから最初に住んだ土地のことも遥かな昔って気がします。あまりに住宅地住宅地した土地だったんで、整頓されすぎていて想い出をしみ込ませる隙のようなものがなかったんでしょうね。今住んでいる土地はそれなりに想い出深い土地になりそうです。
by lemgmnsc-bara | 2012-10-29 20:24 | 読んだ本

映画、演劇、お笑い、あまり肩の凝らない小説等々…、基本的にエンターテインメント系に特化したブログにします。

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