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『シンヂ、僕はどこに行ったらええんや』を読んだ

シンヂ、僕はどこに行ったらええんや

喜国 雅彦 / 双葉社

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ちょっとエッチな作風で知られるギャグ漫画家、喜国雅彦氏が、東日本大震災の被災地東松島にボランティアに赴いたことを綴ったブログの書籍化。なんの技術も、災害救援のノウハウももたない一般ピープルとしての喜国氏とその妻国樹由香氏が東松島の地で悪戦苦闘する様子を赤裸々に綴ってあります。

題名にあるシンヂとは喜国氏の友人。一丁コトある時にはなにをおいても現地に駆けつけるという行動力の持ち主。口より先にカラダが動く人物の典型です。喜国氏は最初はシンヂ氏に引っ張られる形で怖々ボランティアに参加しますが、回数を重ねるうちに、自ら選びとった行動として救援活動を行うようになります。

東北に浅からぬ因縁のある身である私も今回の震災は他人事とは思えませんでしたが、なんやかやと自分に言い訳して、実際に救援活動に携わることはしませんでした。ささやかながらオカネは寄付しましたけどね。しかし、本当の意味で被災者たちを癒すのは、共に汗して復興のために働く人々の姿であり、気持ちです。いかにメールやケイタイといったコミュニケーションツールが発達しても、フェイストゥフェイスの共同作業に勝るものはありませんね。

当家の最高権力者様は友人の関係で、石巻の近所の漁村に赴き、わかめ収穫の手伝いをしたそうです。手伝いとは言ってもそこは素人のこと、却って足手まといになったに違いないのですが、でも漁師さんたちは非常に喜んでくれたそうです。復興支援の一環としてその村で獲れたわかめをすこしばかり購入したのですが、購入量の何倍もの量をいただいちゃったそうです。またこのわかめが非常に美味。普段食ってるわかめは一体なんなんだって言いたくなるような味でした。

こんな豊かな恵みを与えてくれる自然が、あの時は恐ろしい牙を剥いたのです。そしてその傷跡はまだまだ色濃く残っています。喜国氏は素人として精一杯の努力をし、そのありのままの姿を描写しています。きっと我々が行っても同じような思いをしたでしょうし、自然の脅威の前の人間の無力さも感じたことでしょう。素直に共感できました。

震災から一年半を経た今でも、まだ震災前の日常を取り戻せない人々は多々いますが、そうした事実は早くも「風化」しつつあるように思います。政争に明け暮れる行政の面々にもその責任の一端はありますが、一番怖いのは我々一般大衆のココロがマヒしてしまうことです。まだまだ震災は続いているんだという思いを新たにさせてくれた一冊でした。
by lemgmnsc-bara | 2012-10-10 20:08 | 読んだ本

映画、演劇、お笑い、あまり肩の凝らない小説等々…、基本的にエンターテインメント系に特化したブログにします。

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