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『人種とスポーツ - 黒人は本当に「速く」「強い」のか』を読んだ

人種とスポーツ - 黒人は本当に「速く」「強い」のか (中公新書)

川島 浩平 / 中央公論新社

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様々な興奮と感動を生んだロンドンオリンピック。男子陸上短距離のウサイン・ボルト選手を始めとするジャマイカ勢、マラソンにおけるアフリカ勢、バスケットのアメリカドリームチームなど、黒人選手の「速さ」や「強さ」が目立った競技はたくさんありました。のみならず、ボクシングのヘビー級やアメフトなどは黒人の独壇場が続いています。人種の壁が撤廃されたラグビー最強国の一つ南アフリカのナショナルチームでも、ハバナという黒人選手が2007年のW杯でMVPを獲得するなど存在感が増して来ています。これらの事実を見ている限り、黒人選手の身体能力は他の人種に比べて優れていることは自明のようですね。

著者川島氏は「黒人最強説」は近年の「学説」であると述べています。南北戦争で奴隷解放がなされるまで、むしろ黒人は白人よりも体力的にも知力的にも劣る存在であるとして貶められていました。彼らの人権が保証され、白人と対等に近い立場で、競技したりトレーニングしたりする環境が整った結果、黒人の中からも素晴らしいアスリートが誕生した、というのが実情だと述べています。

氏は自論の有効性を証明する一つの例として、水泳を挙げています。確かに水泳界では黒人選手はまったくといってよいほど目立っていません。これは設備の設置・維持のコストが高い水泳という競技に参加するには、ある程度の経済的基盤がないと難しいということで、故に貧困層の少なくない黒人はなかなか競技人口のすそ野が広がって行かないという事情によるものです。本当に黒人が身体能力の高さだけで競技しているのなら、ウサイン・ボルトをプールに放り込めば、たちまち世界記録ラッシュになるはずですが、そうはいきません。人種に関係なく、素質を持ち、整った環境の中でその競技に向いたトレーニングを積んだ人間が栄冠をつかむのです。女子レスリングなんか、身体的能力には劣るとされている黄色人種の日本が3階級も制覇しましたよね。それがこのことの証左です。

まあ、しかし、黒人が目立つ場面がメディアで繰り返し報道されるというのも事実ですし、実際に優れたアスリートが多数存在するのも事実です。でもすべての黒人が身体的能力に優れている訳ではない、というのは納得できたという気がします。
by lemgmnsc-bara | 2012-09-22 07:28 | 読んだ本

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