2012年 08月 23日
『勇躍の刻-柳生兵庫助(8) 』を読んだ
津本陽氏の柳生兵庫介シリーズも8冊目。今巻は円熟味が増した兵庫介の姿を描きます。
世は徳川の治世により安定し、ようやく剣の道のみに専念できるようになった兵庫介は、尾張家に奉公することが決まり、尾張家の家中の武士や自分の弟子を鍛え、教え導いていきます。のみならず、自分自身の鍛錬にも注力し、並の弟子なら立ち会っただけで、動きが取れなくなってしまうほどの術理と位を身につけます。
尾張家の藩主義直は、剣に関しては天稟の才に恵まれた人物として描かれています。そして兵庫介より免許皆伝を認められ、正式に兵庫介の後継者として指名されます。これは兵庫介の息子が成人するまでの断定的な処置ではあったのですが、結果的に江戸時代の剣術をリードする尾張柳生を打ち立てたことになったのでした。
今巻ではまた、柳生十兵衛を厳しい中にも愛情を持って指導する姿も描かれます。なるほど、兵庫介のいままでの活躍と名人ぶりを考え合わせると、「政治家」としての色が濃い但馬守に鍛えられたというよりはすんなりと話の通りが良くなるような気がします。
文中で兵庫介は「一日稽古を休むと次の日は二日分やらないと技が衰えてしまうような気がする」という主旨の台詞を吐いて、日々の鍛錬に打ち込むのですが、フィクションとはいえ、この姿勢は見習いたいと思いました。
このシリーズはまだ続くようです。兵庫介が今後どんな奥義に達し、そしてどんな枯れ方を見せていくのか?恐らく大きな戦いは描かれないでしょうが、人間としての器の大きさをどれだけ示してくれるのか楽しみではあります。
by lemgmnsc-bara
| 2012-08-23 20:17
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