2012年 04月 24日
『あの女(オンナ)』を読んだ
文庫本では珍しく、まさに現在の旬のネタ(に関わりがある女)を取り扱った一冊。
著者の岩井志麻子氏の実体験に基づき、彼女のマネージャーとして彼女取り憑いたトンデモ女を描いています。この女は、大物歌手が自分の彼氏だったとか、過去に有名な俳優のマネージャーをしていたことがあるとか、すぐにバレるような数々の虚言を吐き散らかし、そのくせマネージャーとしての仕事はほとんどしないという体たらくで、岩井氏をはじめとする、周りの人間に迷惑をかけたり、あきれさせたりします。
しかし岩井氏はなぜかこの女のことを憎むことが出来ず、不可思議な愛情でもって遇し、マネージャーとして雇用し続けるのです。そのうちにこの女は岩井氏の夫が女性を強姦して殺したため、その霊にたたられているなどと言い出し、ついに解雇されるのですが、でも岩井氏は彼女にまだ未練を感じているという不可解さ。岩井氏は自分自身が何故この女にこうまで肩入れしてしまうのかは自分でも説明がつかないとしています。
後半は、この女が意外な形で世間から注目される顛末が描かれます。すなわちオセロの中島知子を「洗脳」したとする自称占い師がこの女ではないかという噂がまことしやかに飛び交い、あまつさえ、その噂が「真実」として一人歩きしてしまうのです。
この女の魔力がマスコミまでをも取り込んでしまったというところでしょうか?怖い女もいたものです。先日真梨幸子氏の著作で、狂人と正常人を一緒にしておくと、いつの間にか狂気が伝染し、正常人までが精神に異常を来す、という記述を読みましたが、まさにこの女はまわりの人間全てを狂気に巻き込んでしまう、強力な負のパワーを持ち合わせている存在ですね。一番怖いのはどんな時でも人間です。
by lemgmnsc-bara
| 2012-04-24 22:30
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