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『狐火の家』を読んだ

狐火の家 (角川文庫)

貴志 祐介 / 角川書店(角川グループパブリッシング)

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防犯の専門家(実は窃盗犯?)榎本径と弁護士の青砥純子を主人公にした密室ミステリーの短編集。前作『硝子のハンマー』という長編でしっかりキャラクターが固定された二人を主人公に、様々な密室の謎を解き明かす短編が4つ収められています。

一見難解な密室殺人事件ですが、その背後にはトリックのみならず、様々な人間の思惑が関係しています。その辺の人情の機微みたいなものが、謎解きの過程で段々明かされていくところが実に巧み。ただ、条件を並べ立てて謎つぶしをしていくのではなく、犯人が犯行に至った心理の推移を詳しく説明することで謎解きパズルの最後のピースがはまる、という手法は見事です。四つの短編ともに結末のみならず、謎解きの過程も十分に楽しませてもらいました。

この本では、榎本は将棋とチェスに詳しいという意外な一面を披露しています。様々な可能性を考えて、それを一つ一つつぶしていき、最善と思われる一手を選び出す…。なるほどミステリーを解決する過程は将棋の手を読むことによく似ていますね。「相手」の意外な一手で、結末が自分の思い描いていたモノと大きく違ってしまうところもよく似ています。

それにしても榎本と純子はなかなかの名コンビになりつつあるようです。冷静で理屈っぽい榎本と、弁護士の割には突飛な発想で、時に榎本のみならず読者をもあきれさせてしまう「天然」の純子。因みに彼女も蜘蛛が死ぬほど嫌いだという、今後に大きく影響しそうな設定を付与されていました。

このシリーズはすでにもう一冊刊行されているようです。文庫で見かけたら即買いしたいと思います。
by lemgmnsc-bara | 2012-04-10 18:52 | 読んだ本

映画、演劇、お笑い、あまり肩の凝らない小説等々…、基本的にエンターテインメント系に特化したブログにします。

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