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『地球はグラスのふちを回る』を読んだ

地球はグラスのふちを回る (新潮文庫)

開高 健 / 新潮社

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先日整理した、積ん読山の下の方から出てきたのが標題の書。つい先頃『耳の話』という自伝小説を紹介しましたが、それがあまりにも面白かったので、ついつい開高健氏の本に手が伸びちゃいました。

内容はエッセイ集。題名に「グラスのふちを回る」とあるように酒にまつわる話から始まって、食い物の話、釣りの話、海外の都市の話等、これぞ随筆、という一冊。

何しろ読んでいて面白い。博覧強記の開高氏の知識が惜しげもなく披露されており、そのトピックスそのものにも感心するのですが、文章表現の巧みさにも瞠目させられます。流れるように頭の中に入ってきて、ちゃんと頭のなかに映像が再現されるんです。美しさも汚らしさも。食べ物の味も酒の香りも、本当に自分が味わっているかのように感じられました。他者の経験を追体験することが読書の醍醐味の一つとはよく言われることですが、本当にその通り。ここまで精緻に魅力的にモノゴトを表現できた開高氏はやっぱり一流の作家だったんだということが改めてわかりました。

なお、この本を読んで一つ長年の疑問が解消しました。「料理人の腕はスープを味わってみればわかる」という表現は開高氏の文章を読んで記憶していたものだったんです。『ベルギーへいったら女よりショコラだ』というエッセイにその文章はありました。デザートに出てきたアイスクリームにかかっていたカカオのソースに関する記述だったんです。そして当然のことながらそのショコラを味わってみたくもなりましたね。

氏は寿屋(現サントリー)の宣伝部員として多数の名コピーを世に送り出してきましたから、短い文章で的確かつ味わい深い文章を書くことに長けています。日々の研鑽ってのは大事だってことをつくづくと思い知らされました。
by lemgmnsc-bara | 2012-03-05 19:50 | 読んだ本

映画、演劇、お笑い、あまり肩の凝らない小説等々…、基本的にエンターテインメント系に特化したブログにします。

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