2012年 01月 25日
『「おもしろい」映画と「つまらない」映画の見分け方』を読んだ
このブログに映画の鑑賞記を書くようになってからずいぶんと立ちますが、今ひとつ自分の鑑賞眼に自信が持てないまま書きなぐっています。
小学生の読書感想文じゃないんだから、ただ「おもしろかった」「つまらなかった」ではオハナシにならない。なにか自分独自の観点で判断することが必要だと思っていた、という下地があって、ある日、本屋の店頭で見つけたのが標題の本。
この本、実におもしろかった。感覚的に判断するのではなく、きちんと物語の構造を読み解いた上で、魅力のあるストーリーが展開されているか、人を惹き付ける仕掛け(キャストや音楽など)がなされているかを観察していこう、という主旨で書かれています。
魅力あるストーリーとはどんなストーリーか?まずつかみがあって、その後主人公に試練が訪れる。そしてその試練は到底解決不可能だと思わせておいて、どんでん返しで解決。そのストーリー展開の中で主人公が変化して行く、というのが「おもしろい」映画の方程式だそうです。
一昨日観た『プリンセス・トヨトミ』をこの方程式に当てはめてみましょう。まず人を惹き付ける仕掛けうちの大きな要因を占めるキャスト。主演が堤真二、共演に綾瀬はるか、岡田将生、中井貴一という役者を揃えたキャスティングは十分に魅力的です(私にとっては綾瀬はるかが出ているのが魅力の大部分を占めますがね^^)。
ストーリーはどうでしょう?まずここで、一つつまづきが…。主役がはっきりしないんです。もちろん物語の中心となるのは松平役の堤真二なのですが、ともすれば中井貴一の存在感の方が勝ってしまっているように思える場面が多々あります。一体誰の葛藤や試練にフォーカスしてよいのか観ている方にとって非常にわかりにくいつくりですね。
物語上の「解決不可能に思える試練」というのは、大阪国の決起です。これをどう克服するのか?これが決定的に弱い。何が何だか良くわからないうちに解決したことになっていて、観客はカタルシスではなく消化不良を覚えます。そして、主人公松平の変化も掲げたテーマに対していかにも小さい。中井貴一演じた大阪国総理大臣真田の「個人的」な変化の方がまだわかりやすいのですが、この変化は彼の息子で性同一障害をもつ大輔の姿で描いた方がよかったのではないでしょうかね。この辺も不満が残るところです。
もやもやと感じていた不満の内容が、この本のお陰ではっきりとわかりました。折に触れて読み返し、鑑賞記を書くときの参考にしたい本です。
by lemgmnsc-bara
| 2012-01-25 20:54
| 読んだ本