『武士の家計簿』鑑賞

武士の家計簿(初回限定生産2枚組) [DVD]

松竹

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堺雅人、仲間由紀恵主演の人情時代劇。加賀藩に実在した猪山家に残された様々な書状や家計簿から書かれた本を原作としています。

猪山直之(堺)は加賀藩御算用者として父信行(中村雅俊)とともに仕え、藩の財政に係っています。剣ならぬ、そろばんを武器に日々の業務をこなしています。経理担当者としての腕は確かですが、剣術の腕はからっきし。しかし、家柄のよさを見込まれて同心西永与三八の娘お駒(仲間)を娶ることとなります。

ある日、直之はお救い米として藩の蔵から払い出された米と、実際に飢饉にあえぐ農民たちに下された米の実数が違うことに気付きそれを指摘します。この一件は首謀者で私腹を肥やしていた藩の重役によって握りつぶされそうになるのですが、農民たちの命を賭した訴えにより真相が判明。詰め腹を切らされそうになっていた直之は逆に異例の抜擢を受けて出世します。堺雅人の泣いているんだか笑っているんだかわからない独特の気弱な表情と、その表情に似合わない直之の直情さ。ぴったりの配役だったと思います。彼のほかには適役を思い浮かべられません。基本的には二枚目なんでしょうけど、表情だけで、かなりのことを語りかけられる稀有な役者だと思いますね。

さて、出世したはいいものの、高い地位に就けばそれなりに見栄をはらねばならず、出費がかさんでいく、という当時の風潮にノセられて、猪山家の家計は破綻寸前でした。直之は、高価な家財を売り払い、倹約に倹約を重ねて家計を再建しようとします。家財道具を売り払うことには父母からかなりの抵抗を受けますが、借金の返済が叶わずば、家がつぶれると強硬に「説得」して同意を取り付けます。ここでも堺独特の「困り顔」が威力を発揮します。今にも泣き出しそうな表情ながら、自分の意思は絶対に通す。既にして直之は現代人に近いような感覚を持ち合わせていたんですね。

倹約についてもしかり。息子直吉(後に解明して成之)の節目の儀式には、集まった親戚に鯛の実物を出さず、お駒の書いた絵を膳に並べるという奇策をとります。お駒の書いた絵を持って「鯛じゃ、鯛じゃ」とはしゃぐ直吉を背負う直之。このシーンがラストに利いてくるんですよ。ちょっとホロリとさせられちゃうようなラストにね…。

直之は直吉に家計の管理を任せることで、経理の技術を徹底的に叩き込みます。わずかな金額の食い違いですら許さない厳しい教育。それに反発した直吉は父を「そろばん侍」と罵り、「武器」であるそろばんを壊してしまうという暴挙に出ます。それでも直之は徹底した教育を緩めることはありませんでした。

やがてその経理の才を見込まれた成之は官軍の大村益次郎に見出されて、官軍の財政を担うこととなります。そこで成之は初めて父の教えの「威力」を知るのでした。

維新が一段落して帰郷した成之と対面する年老いた直之。この後のラストが泣かせどころ。厳格な父が最後に見せたわが子への愛情のかけら…。いくつになっても親は親、子は子という当たり前ながら大切な事実を改めて意識させてくれるしみじみとしたシーンでした。

全体的に、ちょっとした私小説を読んでいるような趣の作品でした。大きな山場のあまりない、淡々とした仕上がりだったが故に、却って直之の苦悩や強さが伝わってくるなかなかの佳作だったと思います。
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Commented by himaru73 at 2011-06-13 21:14
堺雅人しか適任者がいないってのがよく伝わってくるレポートです♪
”大きな山場のあまりない、淡々とした仕上がり…”
「武士の一分」や「たそがれ清兵衛」的な作品でしょうか!?
Commented by lemgmnsc-bara at 2011-06-13 22:40
ひまる。さんこんばんは。毎度コメントありがとうございます。
残念ながら『武士の一分』や『たそがれ清兵衛』は観たことがないので比較はできませんが、時代劇というよりは現代のヒューマンドラマに近い仕上がりだったように思います。現代のサラリーマンには結構身につまされることが多いのでは?と思いましたね。
by lemgmnsc-bara | 2011-06-13 19:23 | エンターテインメント | Comments(2)

なんだかんだで読んだ本のことばっかり書いてます。たまに映画、時々食い物とドライブとラグビー観戦。
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