『KGBの世界都市ガイド』を読んだ

KGBの世界都市ガイド

小川 政邦 / 晶文社

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ずいぶん前に読んだ高橋源一郎氏の書評本で取り上げられていたのが標題の書。即座に買い求めたんですが、ずっと書棚で眠ったままでした。今回の震災で書棚から転げ落ちたところを発見され、ようやく日の目を見た一冊です。

タイトルがそのまんま内容を示しています。旧ソ連の諜報組織KGBが世界各都市に送り込んだエージェントたちが、自分の活動の一端を描きながら、巧みに都市を描写し、結果としてその都市の魅力を伝える文章になっているのです。

考えてみると、諜報員ってのは、ガイドとして最適の人間かもしれません。いつ追われる身になってもいいように、主要幹線や交通機関はもとより、裏道や土地の人間しか利用しないようなマイナーな交通手段にも通暁していなければならない。情報を引き出そうとする人物と逢うためには、様々な店を知っていなければならない。人目をあまり惹かないながら、いつも適度に混んでいて、値段もKGBの懐にやさしい店。いわゆる「隠れ家的」な店に理想の条件だと思いませんか?こういう情報の他、その国の人情風俗についてもその国の人間以上に精通し、細かい習慣も把握しなければなりません。こういう情報を全部公開してくれたら、外国人旅行者にとっては最高のガイドになることでしょう。残念ながら、彼らは旅行者を喜ばせるためでなく、国家を喜ばせるために働いていたので、このような情報はソ連が崩壊するまで外に出ることはありませんでしたが…。

諜報員はもちろんバカでは務まりません。非常に教養の高い人物ばかりなので、文章も非常に魅力的です。高橋氏が自著のなかで引用していたパリの駐在員の文章の冒頭部分など、本当に格調高くパリという都市の姿を描き出しています。この本はイロイロな言語に翻訳されて世界的なベストセラーになったということですが、よくわかります。読んでいて面白いんですよ、単純に。ここに書いてあるのは情報収集の場面が主で、血なまぐさいシーンはほとんどありませんでした。実際は決してこんな生易しい活動だけではなく、荒事も薄汚く感じられるような活動も多々あったんだと思いますけどね。他国のエージェントたちとの丁々発止もあっただろうと思いますし…。

高橋氏が誉めている理由がよく解る、なかなかの好著でした。
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Commented by pitipitibeach at 2011-04-18 23:11
興味があります!まだ売っているのかな?
Commented by lemgmnsc-bara at 2011-04-19 21:37
pitipitibeachさんこんばんは。お久しぶりですね。
池袋のジュンク堂であっさり見つけた覚えがありますが、もう3年くらい前のハナシです。Amazonあたりで探してみてください^^
by lemgmnsc-bara | 2011-04-17 07:36 | 読んだ本 | Comments(2)