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『教祖誕生』鑑賞

教祖誕生 [DVD]

ポニーキャニオン

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1993年の作。オウム真理教が地下鉄サリン事件を起こす少し前に発表された映画です。

当時はオウム真理教が台頭してきてましたが、その他にも大小様々なカルト教団が跳梁跋扈しており、さながらカルト教団ブームとでもいうべき「活況」を呈していました。私も大学生時代は、住んでいたアパートに再三にわたり某老舗カルト教団の信者が訪ねて来ました。一度でも捕まったら信仰を誓うまでビデオを見せられて洗脳されるとか、いろんなことが言われてましたっけ。

この作品はそうしたカルト教団に対する強烈な皮肉を利かせたパロディーです。そもそも、信仰の価値が何故お布施の多寡で決まるんでしょうか?何かといえばカネを要求する「教団」に疑問を持たないのが不思議です。私はその点にいつも引っかかっていたので、絶対に新興宗教には帰依しないと心に決めていました。

この作品でも、インチキな「奇跡」で人をだまし、堂々とカネを巻き上げて自分たちの遊興費に使う教団幹部の姿が皮肉たっぷりに描かれていましたし、「信仰の価格のつけ方」についてもあざとさを前面に押し出して描いていました。

また、ビートたけし演じる教団幹部の胡散臭いこと。香具師の口上そのもののアジテーションで人々を集め、インチキの奇跡を演出する。たけしがわざとらしく演じれば演じるほど逆にリアリティーが増すという逆説的な描き方は洒落ていましたね。

宗教的な気高さを持ちながら、結局は肉の罠に落ちてしまった青年駒村を演じた玉置浩二も好演。結局は肉欲から離れられない人間の性を描くとともに、自身の今の実生活をも髣髴とさせるキャラクター設定になっていました。

物語は一人旅を続けていた青年がいつの間にか教団に引き込まれ、最終的には飾り物の教祖として祀り上げられる姿を軸に進行して行きます。見事に信者を増やしていく教団。しかしそこには意外な結末が…。そして5年後というテロップが流れた後のシーンの印象深さ。世にカルト教団のタネは尽きまじってところでしょうか。

社会風刺劇としてなかなか面白い作品でした。いつかまたオウムのようなカルトが出現するかもしれないという漠然とした不安を笑いに包んだ結末は特に利いていたと思います。
by lemgmnsc-bara | 2011-04-16 22:44 | エンターテインメント

映画、演劇、お笑い、あまり肩の凝らない小説等々…、基本的にエンターテインメント系に特化したブログにします。

by 黄昏ラガーマン
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