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いまさらながらの日本選手権観戦記

もう、すっかり遠い日の出来事になってしまいましたが、2/27(日)'10シーズンの真のチャンピオンを決める、日本選手権の決勝を観戦しました。

当日は14:00キックオフでしたが、13:00の時点でかなりの人出。ダフ屋もちらほら見かけるほどの盛況ぶりでした。チームの好悪は別にして、この試合を生で観戦せずして日本のラグビーシーンは語れない、という大一番ですから無理もないところです。私自身はコネのおかげで指定席を手に入れていたので急ぐ必要はなかったのですが、自由席の割引当日券を求めるチームのメンバーのため13:00を少し過ぎた時間に秩父宮着。

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しばらく人ごみのなかで入場者を眺めていたら、往年の名選手ノフォムリ氏や山本俊嗣氏を見かけました。奇しくも両氏ともジャパンが初めてスコットランドを破った際のメンバーでした。こういうのも生観戦の余禄ですな。観客席は、両チームの応援団でほぼ満員の状態。当日ほどコネのありがたさを感じた日はありません^^。

両者の対戦は今シーズン3度目。第1戦目のトップリーグ本割ではサントリーサンゴリアスが勝利。2戦目のトップリーグプレーオフ決勝では三洋電機ワイルドナイツが雪辱してトップリーグ優勝を果たしました。アグレッシブ・アタッキング・ラグビーを標榜し、圧倒的なフィットネスに裏打ちされた攻撃力を誇るサンゴリアスと、攻撃的とすらいえる強固な守備からの逆襲を身上とするワイルドナイツの戦いは最強の矛と最強の盾の激突と形容されてきました。3度目の対決を制し覇権を握るのは矛か盾か。観衆の緊張が最高潮に達した14:00ワイルドナイツキックオフで試合開始。

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試合前の大方の予想に反して試合開始直後はワイルドナイツが積極的に攻撃を仕掛けます。もちろんワイルドナイツは自分から仕掛けて行っても強いチームですし、サンゴリアスの守備力だって国内のチームでは最高レベルです。盾が攻めて矛が守る、という流れの中で最初に得点機をつかんだのはワイルドナイツ。距離のあるPGをキックの名手田邊選手が決めて0-3と先制します。

この後もしばらくはワイルドナイツが攻め、サンゴリアスが守る、という展開が続きましたが、自陣中盤まで攻め込まれたサンゴリアスが、密集の攻防でワイルドナイツボールをターンオーバー。そのまま持ち前の展開力でフェイズを重ね、あっという間にワイルドナイツゴール前まで攻め込むと、最後は密集サイドの内側を衝いた小野澤選手がするすると抜けて逆転のトライ。ゴールも決まって7-3となります。お株を奪われた形のワイルドナイツと意気あがるサンゴリアス。しかし、油断は禁物。ワイルドナイツには準決勝の東芝ブレーブルーパス戦で18点差をひっくり返したという実績があります。ワイルドナイツ相手には「セイフティーリード」という概念は持てないと考えておく方がよいのです。

トライの直後、またも長い距離のPGを決めて7-6。ぴったりとくっつきひたひたと追い上げるワイルドナイツ。しかし、当日のサンゴリアスは最強の矛にふさわしい攻撃を展開しました。すぐさまライアン・ニコラス選手がPGを返して10-6とリードを広げると、再びすばやいボールのリサイクルを連続し、FB有賀選手のビッグゲインから最後は長友選手がトライ。ゴールも決まって17-6。さらにその5分後にはSOトゥシ・ピシ選手が相手SOとインサイドCTBの間をすばらしい速度で駆け抜け、ゴールポストの真下にトライを決めます。ゴールも決まって24-6。'10シーズンのサンゴリアスで一番成長したのはこのピシ選手ではないでしょうか。昨年までは最初のポイントは、まずインサイドCTBのニコラス選手のクラッシュでしたが。今シーズンはピシ選手が仕掛けるシーンが数多く見られました。突破力のあるライアン選手にフォーカスしている内側をヒョイとピシ選手が抜けていく、あるいはライアン選手に一度パスしてそのまま横に走ってループし、相手マークをひきつけてから、さらに外の選手にパスしてビッグゲインを生み出す…。変幻自在とは'10シーズンのピシ選手のための言葉であるかのような活躍ぶりでした。

ワイルドナイツは精神的支柱でもあるSOトニー・ブラウン選手の負傷欠場が痛かったですね。トイメンがトニー・ブラウン選手だったらピシ選手も思い切った仕掛けは出来なかったかもしれません。「代役」の入江選手も一昨年のジャッカル王ですから、決して弱い選手ではないのですが、相手に与える精神的なプレッシャーという意味では残念ながらトニー・ブラウン選手には及びません。最強の盾も戦いを重ねるうちにひびが入ってしまったというところでしょうかね。

前半はこのまま24-6で終了。ブレーブルーパスとの試合同様18点差というところに少々引っかかりを感じながらも、サンゴリアスペースで試合が運んでいるという印象。

ラインアウトはほぼ互角。まだスマフォに慣れていなくて、シャッターのタイミングがつかめなかったので、決定的瞬間を逃してばかりでした。

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スクラムは前半は互角でしたが、後半はサンゴリアスが2度ほど強烈なプッシュをかけました。サンゴリアスの強烈プッシュも、ワイルドナイツの明らかな後退も今シーズンはなかなか見られなかったシーンです。この一戦にかけるサンゴリアスのフロント陣の意気込みを感じるシーンでしたね。

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強烈なプッシュをかけた畠山選手。同じポジションの最高峰の選手を観られるのも生観戦の醍醐味です。

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後半10分過ぎ、キックでサンゴリアスゴール前まで迫ったワイルドナイツはラインアウトからのモールを押し込み、最後は龍コリニアシ選手が抜けてゴールポスト真下にトライ。展開勝負が駄目なら、FWのゴリ押し攻撃っていうオプションだってあるんだぞ、という力づくのトライでした。ゴールも決まって24-13。そういえば、ブレーブルーパスも後半は0点に押さえられちゃったんだけな、といやな予感が胸をよぎります。

しかし、前半のサンゴリアスのアタッキングラグビーは予想以上にワイルドナイツを疲弊させるボディーブローとなっていたようです。5分後、ラインアウトから、リターンパスを受けたサンゴリアスHO青木選手がするすると抜け出して右隅にトライ。ゴールは失敗して29-13。いままでのワイルドナイツには考えられない、あっけないトライでした。FW陣の足が完全に止まっていましたね。

このトライの後、サンゴリアスは満を持してSHジョージ・グレーガン選手を投入。豪州代表として139キャップを持つラグビー界の至宝はこの試合で現役を退く意向を表明していました。世界のGGのラストゲーム。彼の意気込みは出場してすぐのプレーに現れていました。密集のブラインドサイドを自ら衝き大幅ゲイン。普段は自ら突破するようなプレーはあまり見せないんですが、最後は自分も楽しみたかったのでしょうね。このプレーは観客を大いに沸かせましたが、残念ながら得点には結びつきませんでした。

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逆にその後、ワイルドナイツは「お家芸」とも言うべき密集からのターンオーバーを見せ、そこからつないで、最後はノートンナイト選手がトライ。ゴールも決まって29-20と食らいついてきます。さすがは前年まで3年連続で日本選手権を制しているツワモノ集団です。先ほどのFWサイドで奪われたトライで心が折れたかと思いきや、隙あらば試合をひっくり返してやろうという闘志は最後まで衰えませんでした。

ジョージの最後の勇姿。

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相手ボールスクラムでボールを注視するジョージ。

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ついでに途中出場の尾崎選手。

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写真を撮りながら感慨に耽っていたら、日本代表候補の真壁選手の突破から長友選手がこの日2本目のトライ。ゴールは決まらず34-20。2トライ2ゴール差です。結果的にはこのトライがダメ押しとなりました。

最終スコアは37-20。サンゴリアス9年ぶりの美酒です。序盤3試合を終えた時点で1勝2敗と負けが先行した時はどうなるかと思った'10シーズンでしたが、シーズンの深まりとともにチームがどんどん進化していきました。1度敗れたブレーブルーパス、ワイルドナイツにリベンジを果たすなど、「修正力」まで身につけて、終わってみれば堂々の日本一。アグレッシブ・アタッキング・ラグビーを見事に結実させました。

この勝利は日本が世界と戦うための道筋を示す勝利だとも言えます。体格で劣る相手に対してはすばやい球回しとリサイクルで対抗する。そしてそのために必要なフィットネスを徹底的に強化し、80分走り負けないカラダを作り上げる。言うは易し行うは難しの典型ではありますが、ジャパンがチームとして成熟していくために必要な指針であろうと思われます。トニー・ブラウンの欠場が少々残念ではありましたが、見ごたえがあったし、様々な示唆に富んだ試合だったと思います。

おくればせながら、サンゴリアスおめでとう。
by lemgmnsc-bara | 2011-03-10 23:52 | ラグビー関連

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